農業スキルしか身につけられず、勇者パーティから追放された青年アルス。手切れ金として辺境の荒れ地を渡されたアルスは、そこで畑を耕しながら農家として再出発することに──。農業チートを駆使して、世界の社会問題を解決していく一風変わったスローライフファンタジーです。
自然に感謝しながら、困っている人々に食料を分け与えるアルスの誠実さが清々しいんです。
彼が持つスキル『畑耕し』は、植物の成長を加速させるチートスキル。野菜ならわずか一日で収穫でき、果樹も数日で実をつける。さらにイメージ次第で病気や寒さに強い奇跡の作物に育てることも可能。そんなチートスキルを活かし、貧しい人々の救世主となっていく展開が爽快なんです。
周囲から称賛と尊敬を集めながらも、アルスの暮らしぶりはとても質素で慎ましい。狭い小屋で寝起きし、贅沢をせず、怠けることなく、毎朝早くから鍬を握り、大地と向き合う。汗を流し仲間と共に収穫の喜びを分かち合い、心地よい疲れとともに一日を終える。アルスの生き方は、困っている人を救いたいという使命感と、大地への感謝に満ちている。チートスキルを持っていても決して驕らない、高潔な姿が素晴らしいんですよ。
どこの誰でも、どこの国でも、国家の垣根を超えて分け隔てなく施しを与えるアルスの行動が、やがて世界を一つに導いていく。人と人との結びつき、そして人と大地の繋がりの大切さを改めて思い出させてくれる作品です。
(「物価の救世主」4選/文=愛咲優詩)