概要
お前が思うほど、神仏は脆くはない。
苔に覆われた地蔵と少年の話。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!神仏は人とは別の理屈によって存在する。人の懸ける思いと関わりはない。
苔生した石仏らしき像を清めようとする子どもが旅の僧侶と出会う。
僧侶の言葉から幾ばくかの教えを受けた子ども。
その後に体験する大いなる出来事を描いた物語です。
作中で、石仏に入っていたのは恐らく地蔵菩薩ではありません。
もっと根源的な生命の現象。
蘚苔類や地衣類といった比較的単純な生命を生む原始の神の一部であったと思われます
人の崇敬も敬心も関わらない。
ただあるもの。
その一端にふれる、人の心の震え。
本作を読むものも、そんな神妙な世界を覗き見ることでしょう。
鮮烈なイメージに溢れた物語です。
ぜひ御一読ください。 - ★★★ Excellent!!!苔むした地蔵を気に掛ける少年。そんな彼を見守る、一つのやわらかな目線
とても、あたたかな物語でした。出てくる人々も神仏も、皆やさしく力強い。
旅の僧侶が一人の少年と会う。少年は、ひどく苔むしてしまった地蔵を見兼ね、日々その苔を落とそうと奮闘している。
幼くして両親を亡くした少年は、祖父が親代わりとなっている。旅の者が来ると祖父のいる家へと案内し、一宿一飯を提供。その代りに祖父が作っている笠を売るなど、ある種のしたたかさも持ち合わせている。
貧しいながらも必死に生きる少年。そして地蔵を綺麗にしてやろうという優しい心も持っている。
旅の僧侶が少年を見る目線は優しく、同じく「別の何者か」も彼に対してあたたかな目を向けているだろうことが静かに伝わって…続きを読む