13世紀初頭、神聖ローマ帝国の辺境の村に、若き司祭レオとして転生した主人公が、現代知識と卓越した弁論術を武器に貧困や悪政に苦しむ人たちを救っていく中世転生ファンタジーです。
高い教養と巧みな弁論術で難題を解決していくレオの活躍が見どころです。
レオが赴任したのは、貧困に喘ぐ地方の教区。人々は日々の生活に精一杯で、衛生や教育の概念すらほとんど浸透していない。そんな状況下で、レオは聖書の教えと現代的な知識を融合させ、村の暮らしを改善しようと奔走する。しかし、古い慣習や迷信に縛られた村人たちは、レオの言葉を素直に聞いてはくれない。
相手と議論で対立しても、誠意を持って根気よく説得を続ける姿勢が胸を打つんです。一方的に理屈を押し付けるのではなく、謙虚な人柄と、相手の感情へ訴えかける温かさがあるんですよ。
疫病から村を救い、修道院の経営を立て直し、貴族間の紛争を平和的に解決するなど、その功績はやがて中央にも届き、レオはローマ教皇の側近として取り立てられるまでに。
しかし、ローマに渦巻く利権争いと腐敗は想像以上に根深く、レオの改革は暗礁に乗り上げる。果たしてレオはこの壁を乗り越え、ローマにかつての栄光を取り戻すことができるのか。若き宗教家の知性と情熱が火花を散らし、暗黒の時代に光を灯す世直しファンタジーです。
(「物価の救世主」4選/文=愛咲優詩)