夢の出口

Kei

夢の出口

毎日、同じようなことを繰り返している。

気が付いたら会社にいる。顔のない人間が大勢いる職場。実際は数人しか知らない。それもしょっちゅう入れ替わる。しかし全く気にならない。アヤフヤな会話をして、仕事らしきことをして、帰る時間になったら帰る。

そうして自分の部屋に戻ったら、現実から覚めて夢に飛び込む。


自由な世界。なにも強制されることなく、制限もされない。

学校のプールに浮かび、マンホールを開け放ち、

住宅の窓を手当たり次第に割ってまわる。

自分自身からも解放される。


囚われた人たちとすれ違う。一日の半分、決まったことを繰り返している。

俺も同じように?今は違う。彼らと逆行して進む。



フワフワと街を離れ、郊外の森を徘徊する。

藪をかきわけていくと、大きな水たまりに出た。

子供の頃、ここで魚を釣ったような…

時間も空間も越えて、思わぬところに帰ってきた。


俺は飛び込んだ。




翌日、街外れの池で男の水死体があがった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢の出口 Kei @Keitlyn

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説