珠美


はぁ はぁ



手に持ったカミソリから血が流れている。


とんでもないことをしてしまった。

でも…私は悪くない。全部、あなたが悪い。


奥さんが妊娠したって?

だから別れたいって?


…勝手すぎる


それだけじゃない …いいえ。それだけなら、こんなことまでしなかった。



『連載を打ち切る』だなんて!!


三角関係だの、倫理的葛藤だの、愛憎の狭間だの、もう古い?ダラダラ続く不倫モノなんて時代遅れですって?


もっと短くて、わかりやすくて、刺激的じゃないと受けない?

それならこの事件はピッタリでしょ!きっとインプレッションも沢山稼げるわよ!




… …


私がどれだけあの作品を大事にしてたか、しってたくせに。

私たちの関係をモチーフに書いてたの、わかってたくせに。


絶対に許せなかった。

私とあなたの思い出、なかったことにはさせない。



… …



これからどうしよう。すぐにニュースになるだろうし…


どこか遠くに逃げようかしら…

荷物をまとめないといけないわ




 …?


マンションの近くが騒がしい。


え…?


人が何人も倒れている。



「ちょっと!大丈夫ですか!? あっ、血が!!」


「え、逃げろ? 一体何が…」


「うしろ… うしろ?」



振り向くと、包丁を振りかざした男が立っていた。

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試作:現代的恐怖 Kei @Keitlyn

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