異類婚姻譚というジャンルをご存知でしょうか?
人間とそれ以外が婚姻するお話の体系で、神や妖怪、動物などが対象で、日本においては「雪女」が有名です。
大抵の場合、「鶴の恩返し」のように人間に姿を変えてくれるわけなのですが……。
もし自分の身にそういった事が起こるとして、『人間にならないで欲しい』と思う人は意外と少なくないのではないでしょうか?
相手が犬だったなら、完全な人型になるより「犬耳や尻尾のある半獣状態がいい」とか「むしろ犬のままがいい」とか思ったりはしませんか?
本作の主人公「桃花(タオファ)」は、まさにそういった思考の女性です。
男性の相手に疲れ切った彼女には、どんな美男子、美丈夫より、モフモフを求めているのです!
子猫だと思って拾ったのが、かの有名な「白虎」だというのに、人語を解して人に変身もできるというのに、大して驚きもなく、求めるのはモフモフのみ……!
そして白虎もその望みに応じてくれるばかりか、可愛い鳴き声を上げたりします。神獣なのに、きっと渋い声出してるのに。想像上のCVは中田譲治さんなのに。
主人公「桃花(タオファ)」の扱う錬丹術ともども、常軌を逸した力を持つ主従となるわけなのですが、その力の大きさには無頓着。最近人気の無自覚最強主人公の要素も持っているように思います。
脇役やモブに至るまで、どのキャラもどこか面白く、それが全体の空気を形作っており、全体として安心して楽しんでいられる作品となっております。
長さも5万文字程度の中編で、作品の空気と相まって気楽に読めるのも良い点かと思います。
モフモフで、さくっと楽しめる作品をお求めならば是非、ご一読くださいませ!
架空の中華ファンタジー世界、その中で生まれた独自の「錬丹術」の使い手にして希代の才女・桃花。そして神獣「白」との運命的な出会いから物語は始まります。
さて、本作の魅力を語らせて頂きましょう。
皆様の多くがご存知であろう「薬屋のひとりごと」から現在の人気ジャンルになった中華ファンタジー。古くは日本ファンタジーノベル大賞の第1回大賞受賞作品である酒見賢一のデビュー作『後宮小説』、アニメ化でのタイトルは『雲のように風のように』から源流を感じる架空の中華ファンタジーです。
史実とは異なる中華風の世界観の魅力。西洋風である異世界ファンタジーとも、現代ファンタジーとも、和風ファンタジーとも違う、中華ファンタジー。その根底には「歴史観のある世界線の魅力」があると思います。
西洋でも和風でも歴史はあるのですが、どこか「オリエンタル」な感じがする中華ファンタジー。その意識は、日本人の歴史と交わりの有る、身近な異世界を過去に現実でも感じていた事に起因するのではないかと思います。
さて本作ですが、そんな中華ファンタジーの世界に、初美陽一様ならではの切り込み方をされており、非常に魅力的でオリジナリティ溢れる物語が形成されております。
まずは登場人物、そのモブキャラに至るまでいちいち濃ゆいです(笑)。全部スピンオフが書けるレベルで楽しいです。さらにストーリー展開の巧みさは言うに及ばず、飽きさせる事無くぐいぐいエンディングまで引っ張って行きます。その上で、特筆すべきこちらの物語の魅力は「バランス」です。
この「バランス」というのは非常に曖昧ですが、いわゆる書き手と読み手の「押し引き」の部分が絶妙なんです。ここは非常に表層的でないので伝えにくいのですが、細部に渡り、展開やセリフ、構成に至るまで、初美陽一様らしい「うまさ」が実に生かされていると思います。ここが一般的な書き手と「うまい」書き手の違いなんだなぁとしみじみ思いました。
少し大袈裟ですが、紫式部の「源氏物語」、そのストーリー性と似通って私には感じられてしまいます。起承転結というものは存在しますが、どこか随筆の特性を帯びて読者に語る、そんなお話の原点を垣間見てしまうのです。
お勧め致します。
ややこしい書き方をしてしまいましたが、勿論単純に「面白さの力が存分にある物語」です。間違いなくラストまでお楽しみ頂けるかと思います。ここにあるエンターテインメント性、存分にお楽しみ下さいませ。
皆様、宜しくお願い致します( ;∀;)
もふもふ。それは圧倒的なる正義である。本作はその事実をとにかく教えてくれることになります。
錬丹術師として、奇跡のような効果を持つ薬などを開発する少女タオファ。
そんなタオファのもとに、パイと名乗る不思議な生き物が姿を現す。その姿は、「もふもふ」。おっきな猫さん、またはおっきな虎さんとも呼べるようなもの。
……か、かわいい!
自分よりも大きい、もふもふした生き物。それはもう間違いなく「もふもふダイブ」という人類の夢が実現できる存在。
こんなの嬉しくないわけがない!
そしてタオファもそんなパイを大好きになる。
だが、パイには大きな秘密があって……。
パイには、ファンタジー好きなら一度は名を聞いたことのある「真の名前」も存在し、それゆえに大きな力も備わっている。
そして、神獣として人間に化けることもできる。
イケメンに化けられる神獣。それは小野不由美「十二国記」辺りから連綿と続く、女子の憧れ存在。けれどけれど、特に色恋には興味のないタオファは、イケメンフォームよりももふもふフォームの方が大好きという反応を見せてしまう。
そんなタオファたちのやり取りが、とにかく楽しいのです。
タオファに好意を寄せてひそかに近づいてくる男もいれば、襲い来る危機もある。だが、最強の錬丹術死と伝説の神獣の前には怖いものなどない。
パワフル、そしてファンシーに進んでいく中華風もふもふファンタジー。読めば楽しい気持ちになれること間違いなしです!
最初に言っておきます。
本作に「普通のヒト」は存在しません(誉め言葉)。
主人公やヒロイン(獣?)はもちろんの事、主要キャラからモブや脇役やられ役まで総じてどこか頭のネジが2~3本抜けていて、その言動や行動ひとつひとつに笑いやツッコミを入れたくなる事うけあいでしょう(笑)。
そう、作者の初美陽一先生の真骨頂である「どのキャラも読者を楽しませるために存在している」事に特化しているんですよ。
出た瞬間からオチが分かるやられ役(んでオチはそのナナメ上を行く)、ヘイトよりむしろ同情すら湧いて来るお間抜けな悪役、そして突っ込まずにはいられない奇行を繰り広げる主要キャラ達。
そんな「物語に動かされているはずのキャラ達」が、なんとまぁ実に生き生きとしてるんです。
お話の記号として動かされているキャラなんぞに魅力は感じませんが、この物語はその記号が奇行で溢れかえっている為、チョイ役でも強烈に「生きている」感じがしっかりと伝わってきます。
ライトノベルというのは、軽い気持ちで読めるお話であるべきだと思います。
それは他の誰かのテンプレをなぞる事で世界に馴染みやすくすることではなく、まさに本作のように爽快かつ笑いを誘って楽しく気軽に読み進めていける作品にこそ相応しいジャンルだと思うのです。
偏見的な意見ながら、本作は本物のラノベ、そして最高級のラノベと言って差し支えないでしょう。
是非、ご一読をお願いします。
2025/8/10記述
現時点で最新話の第14話までを読んだ感想です。
とにかくキャラのはっちゃけ具合がスゴイッ!
第1話から「めろんめろんのとろんとろんのどぅるんどぅるん」なんて言葉が出てくる辺り、作者さまの頭から発酵臭がしてきます。w
出てくるキャラがみんな個性豊か……でいいのかな? とにかく、話を面白くするためだけに創られたようなキャラばかりですっ。
かと思えば五行とか四凶とか、古代中国ネタまでブっ込んできます。
しかしご安心召され。そういったネタを知らなくても十分楽しめます。というか、知ってても知らなくても変わりはありません。
同じく、中華知識がなくても問題ありません。
本作はとにかく「コメディ一色」です。たまにシリアスが混ざっても長続きしません。w
コメディ好きの皆さん、頭を空っぽにして楽しみましょう!
若くして国一番の錬丹術師となった〝桃花(タオファ)〟のもとにやって来るのは、下心満載の気持ち悪い男ばかり。
心身共に疲れていた桃花は、子猫を拾ったことをきっかけに都を離れてのんびり暮らすことにしました。
しかし、子猫はあっという間に巨大化し、ただの猫ではなかったことが判明。
なんと超絶美形に人化もできる神獣だったのです!
イケメンよりモフモフがいいという桃花のキャラが、とてもチャーミング。
気持ち悪い男たちを撃退する場面や、神獣や個性豊かな村人たちとの会話など、笑えるシーンが盛りだくさんの楽しいお話です。
まだ始まったばかりなので、ぜひ読んでみてください!