美丈夫よりモフモフがいい!

 異類婚姻譚というジャンルをご存知でしょうか?
 人間とそれ以外が婚姻するお話の体系で、神や妖怪、動物などが対象で、日本においては「雪女」が有名です。
 大抵の場合、「鶴の恩返し」のように人間に姿を変えてくれるわけなのですが……。

 もし自分の身にそういった事が起こるとして、『人間にならないで欲しい』と思う人は意外と少なくないのではないでしょうか?
 相手が犬だったなら、完全な人型になるより「犬耳や尻尾のある半獣状態がいい」とか「むしろ犬のままがいい」とか思ったりはしませんか?

 本作の主人公「桃花(タオファ)」は、まさにそういった思考の女性です。

 男性の相手に疲れ切った彼女には、どんな美男子、美丈夫より、モフモフを求めているのです!
 子猫だと思って拾ったのが、かの有名な「白虎」だというのに、人語を解して人に変身もできるというのに、大して驚きもなく、求めるのはモフモフのみ……!

 そして白虎もその望みに応じてくれるばかりか、可愛い鳴き声を上げたりします。神獣なのに、きっと渋い声出してるのに。想像上のCVは中田譲治さんなのに。

 主人公「桃花(タオファ)」の扱う錬丹術ともども、常軌を逸した力を持つ主従となるわけなのですが、その力の大きさには無頓着。最近人気の無自覚最強主人公の要素も持っているように思います。
 脇役やモブに至るまで、どのキャラもどこか面白く、それが全体の空気を形作っており、全体として安心して楽しんでいられる作品となっております。

 長さも5万文字程度の中編で、作品の空気と相まって気楽に読めるのも良い点かと思います。

 モフモフで、さくっと楽しめる作品をお求めならば是非、ご一読くださいませ!

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