ここに存在する魅力を皆様に最大限に味わって欲しいです( ;∀;)

架空の中華ファンタジー世界、その中で生まれた独自の「錬丹術」の使い手にして希代の才女・桃花。そして神獣「白」との運命的な出会いから物語は始まります。

さて、本作の魅力を語らせて頂きましょう。
皆様の多くがご存知であろう「薬屋のひとりごと」から現在の人気ジャンルになった中華ファンタジー。古くは日本ファンタジーノベル大賞の第1回大賞受賞作品である酒見賢一のデビュー作『後宮小説』、アニメ化でのタイトルは『雲のように風のように』から源流を感じる架空の中華ファンタジーです。

史実とは異なる中華風の世界観の魅力。西洋風である異世界ファンタジーとも、現代ファンタジーとも、和風ファンタジーとも違う、中華ファンタジー。その根底には「歴史観のある世界線の魅力」があると思います。

西洋でも和風でも歴史はあるのですが、どこか「オリエンタル」な感じがする中華ファンタジー。その意識は、日本人の歴史と交わりの有る、身近な異世界を過去に現実でも感じていた事に起因するのではないかと思います。

さて本作ですが、そんな中華ファンタジーの世界に、初美陽一様ならではの切り込み方をされており、非常に魅力的でオリジナリティ溢れる物語が形成されております。

まずは登場人物、そのモブキャラに至るまでいちいち濃ゆいです(笑)。全部スピンオフが書けるレベルで楽しいです。さらにストーリー展開の巧みさは言うに及ばず、飽きさせる事無くぐいぐいエンディングまで引っ張って行きます。その上で、特筆すべきこちらの物語の魅力は「バランス」です。

この「バランス」というのは非常に曖昧ですが、いわゆる書き手と読み手の「押し引き」の部分が絶妙なんです。ここは非常に表層的でないので伝えにくいのですが、細部に渡り、展開やセリフ、構成に至るまで、初美陽一様らしい「うまさ」が実に生かされていると思います。ここが一般的な書き手と「うまい」書き手の違いなんだなぁとしみじみ思いました。

少し大袈裟ですが、紫式部の「源氏物語」、そのストーリー性と似通って私には感じられてしまいます。起承転結というものは存在しますが、どこか随筆の特性を帯びて読者に語る、そんなお話の原点を垣間見てしまうのです。

お勧め致します。

ややこしい書き方をしてしまいましたが、勿論単純に「面白さの力が存分にある物語」です。間違いなくラストまでお楽しみ頂けるかと思います。ここにあるエンターテインメント性、存分にお楽しみ下さいませ。

皆様、宜しくお願い致します( ;∀;)

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