第47話 顛末
あれからしばらくして、ソリターが執念で黒いモヤを探し出した。
少ししかなくても残留魔力を追跡することができる魔道具の開発をリドカインと魔道具師達に依頼して、出来上がったそれで、居場所を突き止めた。
黒いモヤは闇魔法使いのオプソという男が発していた魔法で、オプソは色々な邪悪な心を持つ闇魔法の使い手に取り憑き、その魔力を吸い取り強靭になっていたようだ。大昔はフェンタニル王国の魔導師だったのだが、闇魔法を使い、クーデターをおこそうとしたことで国外追放になった。そのことでフェンタニル王国を恨んでいたという。何人もの闇魔法使いに取り憑き、魔力を高め、フェンタニルを乗っ取り、他国と戦を起こし世界征服を企んでいたらしい。
しかし、戸籍上では、オプソはもう100歳を超えており、生きているのか死んでいるのかもわからず、黒いモヤに包まれた本体も存在しているのかどうかわからなかったらしい。
ジュリナ嬢が考案し、リドカインが作った、強力ソウジキという魔道具でモヤごと本体も吸い込んだ。オプソは悪霊だったのかもしれない。時が戻る前のフェンタニルの国王はオプソが取り憑いた闇魔法の使い手だったのだろうか? 今となってはよくわからない。
オプソは強力ソウジキに閉じ込められたまま、俺とジオトリフに氷魔法で凍らされ、ミオナールとジェミニーナに浄化され、地中の奥深く眠っている。
「絶対、人間じゃねぇよ。あれはもう、もののけになってたんだ。チラッと見えたのはナメクジみたいだったぞ。あのナメクジ野郎、闇魔法を溜め込んでやがったんだ。戦うのは人間がいい。もののけはもうゴメンだ」
ソリターはめちゃくちゃ嫌な顔をしている。余程もののけとナメクジが嫌いなのだろう。
「しばらく休むぜ。俺が休んでいる間はレルトに仕事を押し付ければいいからな」
そう言うと消えてしまった。
「あいつ、また山の温泉だな。まぁ、いまのところ大きな事件もないし、何かあったらレルト頼むわ」
ジオトリフはケラケラと笑っている。
あの時のフェンタニル王国の国王の正体がもののけだったとは驚きだが、負のエネルギーの強い人間が強い闇魔法を使うともののけに変貌するのかもしれない。やはり、闇魔法と光魔法はある程度管理しなくてはならない気がする。
俺は18歳になった。
そう、あの女が貴族学校に編入してくる年だ。あの女が本当に現れるか、密かに俺達、記憶持ちの賭けの対象になっている。
あの頃と同じように貴族学校に通っているのは、テオドール殿下とアノーロだけだ。
結局ふたりとも記憶は戻らなかった。あの時の話も女神から神託があったが、皆で防いだと信じているようだ。
2人とも精神拘束魔法避けの予防接種をし、その上で魅了避けの魔道具を身につけている。セレニカの男は皆、法律で注射と魔導具が義務付けられている。これは王妃の鶴の一声で決まった。王妃は魔導師団長とともに、魔導師の育成に力をいれている。魔力の強い子の魔法の力を伸ばす為にリルゾール王国に協力してもらい魔法学校を設立した。生活魔法だけてなく、もっと色々な魔法を使える国をめざしているそうだ。
リドカインはリルゾール王国の魔法省の研究所の職員となり、魔道具の研究開発に忙しい毎日を過ごしている。いつかセレニカに魔道具の研究所をつくるのが夢らしい。今は自信に満ち溢れていて、充実しているようだ。あの頃の気弱なリドカインはもういない。
あの時、スターシスに刺され、重症を負ったコンスタンは回復魔法で回復した。今はフェロミア姫と婚約し、フェンタニルに住んでいる。女神の采配かどうかわからないがフェンタニルの暗部の頭領である公爵家に養子に入り、後を継ぐらしい。まぁ、あいつはソリターの愛弟子だから問題ないだろう。フェンタニル王国内部から第2の黒いモヤが現れるのを阻止するそうだ。
そうそうフェロミア姫は、あの時あいつの婚約者だったリオナ嬢が転生した姿らしい。コンスタンが刺された時にその記憶が戻ったそうだ。嫌な奴だったコンスタンはリオナ嬢にだけは優しくしていたようで、魅了の魔法にかかっている時も、きっと何か理由があって、自分に辛く当たっているだけだと信じていたという。婚約破棄された後、国を出たリオナ嬢はセファクロルの教会でコンスタンが迎えに来るのをずっと待っていたが、コンスタンが亡くなったと聞いて後を追ったらしい。気の毒に思った女神がフェロミア姫として転生させたのだろうか。
ふたりはとても仲睦まじい。
時が戻る前は性格が悪くて嫌な奴だったコンスタンも強力な浄化のおかげで良いやつに生まれ変わった。あの時の贖罪はフェンタニル王国が軍事大国にならないように見張り、セレニカ王国を外から護ることだそうだ。
スターシスは教会預かりとなり、死ぬまで全世界の平和のために祈り続けるらしい。光魔法で国の為に尽くすのだろう。
ルナベルはテオドール殿下と婚約を無事解消し、今はリルゾール王国の王太子の婚約者だ。年が明けたら結婚し、王太子妃になる予定だ。リルゾール王国の王太子はルナベルに一目惚れし、求婚したそうだ。王太子はかなり狭量なようなので、ルナベルが幸せがどうかはわからないが、愛されているので、捨てられて国外追放になることはもうないだろう。
テオドール殿下は魔導師団の団長の令嬢のジュリナ嬢と婚約した。ジュリナ嬢はこの世界とは全く違う次元から女神がこの世界に転生させた令嬢で、俺達が知らない知識をたくさん持っている。それをセレニカ王国に役立てるらしく、王太子妃教育を受けつつ、彼女の知識で王宮改革もすすんでいる。リドカインもジュリナ嬢がもといた世界の道具には興味津々でコラボ魔道具も沢山作られている。
俺は貴族学校には行かず、ジオトリフとミオナール夫妻の養子になった。表向きは公爵令息、魔法騎士、裏ではリルゾール王国の暗部の一員として女神にこき使われている。
ジェミニーナは女神の愛し子として、多方面で活躍している。
「俺は一生、ニナの騎士だ。絶対ニナを護るからな」
「私もレル様を護るわ。この世界ではあんな女をレル様に近づけないわよ。セレニカ王国は無くならない。どんどん繁栄していくの。一緒にそれを見ていきましょうね」
ニナは楽しそうに笑う。今、この世界は平和だ。フェンタニルの脅威も無くなった。でも、またいつどこかで何が起きるかわからない。その芽を見つけ、叩き潰すのが俺達の役目だ。
そして、寿命が尽きるその瞬間までニナの傍でニナを護るのが俺の幸せだ。
女神、俺に時を戻させてくれてありがとう。今、俺は本当に幸せだ。
ところで、ゾレアは何処でどうしているのだろう? 貴族学校には現れたのだろうか?
了
***
これにて終了です。カドカワBOOKS10周年記念長編コンテストに参加する為に1ヶ月弱でしたが、楽しく書かせてもらいました。
これ以上書くととめどなく長くなりそうなのでこのあたりで完結とさせていただきました。
ゾレアはどうしたのでしょうね? 番外編としてゾレア視点を書くか、書かないか悩み中です。
まだ続きがありそうな感じの完結でこのあとのイグザレルトとジェミニーナのことは皆様で想像してもらえると嬉しいです。
これからもぼちぼち書いていきたいと思っています。
最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
魅了の魔法にかけられて全てを失った俺は、最強の魔法剣士になり時を巻き戻す 金峯蓮華 @lehua327
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