第46話 黒いモヤ
転移魔法で屋敷の中に入った。外もだが、中も黒モヤが充満している。
「レルト、見えるか?」
「あぁ、なんとか見える」
「これつけろ」
ジオトリフがどこからか出してきて俺に手渡してくれた。視界と目の保護を兼ねて、ゴーグル型の魔道具をつける。はっきり見えてきた。
黒モヤは粒子が集まってできているようだ。
皆が屋敷中に散らばり人間らしき者を探すが見当たらない。すでに逃げられたか?
「この屋敷には奴の魔法の痕跡が残っている。まだ中にいるはずだ」
ソリターの声が骨伝導で伝わってきた。
そう、影は基本声を出さない。骨伝導で耳、いや、脳に伝わってくる。念話のような感じでもある。
俺は黒モヤを得意の氷魔法で凍らせながら前に進む。もちろん、リドカインの魔道具も大活躍だ。何人かの魔導師があれを稼働させながら本体を探す。魔道具がモヤを吸い込んでいく。各部屋の扉を開けていくが、どの部屋も黒モヤだけで誰もいない。
「いたか?」
「いや、いない」
「どこだ? どこにいるんだ?」
焦りが見え始めた時、魔導師の後ろに黒モヤが動いた。
「危ない! うしろだ!」
咄嗟に攻撃魔法を繰り出した。モヤが離れ身体が見えた。なんだ、たくさんいるんじゃないか。ヤバい、あちらからも攻撃してきた。
「みんな、しっかりしろ。奴らの魔術は俺達には効かない。俺達には加護がある。怯むな!前に出ろ!」
ジオトリフの声に隊員達も「おー!」と声をあげる。皆バラバラに散らばった。
「こいつらは小物だ! 親玉を探せ!」
ソリターの声が響く。皆、雑魚達を倒しながら1番上の階の1番奥の部屋の前に集まった。
「ここか? ここにいるようだな」
ソリターが近づき、扉を開けると同時に中から炎が噴き出てきた。
「ソリター!」
ジオトリフと俺が氷魔法で炎を凍らせる。魔導師は急いでソリターを扉から離し、回復魔法を掛けた。
「ソリター! 大丈夫だぞ! しっかりしろ!」
ソリターは大火傷を負っているようだ。瀕死の重症なのに、男を羽交締めにしている。何人かの顔も火傷を負いながら、逃がさないとばかりに、男の手足にしがみついている。
「レルト! こいつだ! とどめを! とどめを刺せ! ジオは遠い! お前がお前が刺すんだ!」
俺は男に向かって氷魔法を繰り出した。ありったけの力を込めて奴を凍らすために休まず出し続ける。
骨伝導で頭に言葉が入ってきた。
「レル様、ミオ様と一緒に増強魔法で背中を押すわ。踏ん張って!」
ジェミニーナの声が聞こえる。
「うおぉぉぉぉ~~~~!!」
奴に向けて氷魔法と、リドカインの魔道具を発射する。奴は凍り、魔法の鎖でぐるぐる巻きになった。
バタバタと暴れているが、暴れれば暴れるたび鎖はしまっていく。ジオトリフが空間に置いてあるマジックBOXを開き、奴をそこに叩き込む。そして、転移魔法でリルゾールへ飛ばした。
奴と入れ替わりで屋敷に入ったジェミニーナとミオナールが屋敷の隅々まで浄化魔法を掛けていく。雑魚達のうめき声や助けを求める声があちらこちらから聞こえる。奴らは浄化で消えていった。
俺はまだ屋敷の中にいた。やっとおわったと安堵して、屋敷に入ってきたジェミニーナの傍にいる。ぼんやりと黒モヤが入ったマジックBOXが消えたあたりを見ていたら、突然ドカン! と大きな音がした。そして、大爆発が起こった。空間から炎と黒モヤと火の粉が吹き出した。
「お前ら如きに捕まるほど、我は弱くは無い。また会おうぞ」
高らかに笑う声がした。
追えなかった。油断していた。ソリターは回復魔法で火傷は治っているが、万全では無い。
逃げられてしまった。
「仕方ねぇ。まさか、転移をかけたマジックBOXを爆破させて逃げるなんて誰にも想像できねーよ。転移の途中だったからリルゾールに潜入しているならいいんだけどな。それこそ飛んで火に入るなんとやらだ。さぁ、リルゾールに戻ろう。ミオ、この屋敷消してくれるか?」
「任せて。更地にしちゃうわ」
ミオナールがパチンと指を鳴らすと建物は跡形もなく消えた。跡地はミオナールとジェミニーナが浄化する。あれほど黒いモヤだらけだったこの地に爽やかな風が吹いている。
あいつはどこにいるのか? また別人に取り憑き、何処かの国をあの時のフェンタニルのようにするつもりか? 一刻も早くあいつを探し出し、封印してしまわなければならない。
「魔力は魔道具でかなり吸い取られているから弱っていると思うわ。しばらくは動けないはずよ」
ジェミニーナの言葉に頷く。
「さぁ、私達も帰りましょう」
「そうだな。仕切り直しだ」
ジェミニーナと手を繋ぎ、転移魔法を発動した。
***
明日は11時の更新になります。
よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます