第6話
向かう方向へと星が流れる。
一直線に馬を駆らせながら、
不思議な気持ちだった。
曹魏の軍を追っている。
たった一人で。
何もかも自由なのに、このまま
大切なものを失っても尚、生きていかなければならないこと。
理不尽なこと。
だけどその必然があるからこそ、不意に心が何かに触れた時、生きるしかないと覚悟が定まり、自分の中に強さが宿る。
それが何かは分からないし、人によっても違う。
陸議の場合は、あの穏やかな母子の遣り取りに、
彼らと親しいかどうかは、さして関わりないのだ。
(多分過去が今もここに繋がっていて、
過去に強く想ったことが、
苦しいときに、
心が闇に染まった時、星のように瞬く。
勿論いつもそのことで自分を支えられるとは限らないことも、確かだが)
今の自分の姿を
お前が呉を捨てるとはと、驚くのだろうか。
憎しみ、裏切り者を打ち倒せと命じるのか。
(それとも)
お前がそれを選んだのであればと頷くのかもしれない。
敵となる定めだったのだろうと、静かに頷き、
次に戦場で会った時は戦うのみだと。
【
陸議自身が静かな心でそう思ったように。
答えは出ない。
語りかける相手がいないなら、呼びかけに答えはない。
あの流れる星のように、
自分自身の心だけで、
信じ抜くこと。
(ただそれだけしか出来ないこともある)
今は動き出した自分を、信じ抜くことしか出来ない。
【終】
花天月地【第39話 夜螢】 七海ポルカ @reeeeeen13
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