第5話


 結局、郭嘉かくかはその日、話を聞きながらそこで眠ってしまった。

 自分が寝ても、夏侯惇かこうとん曹操そうそうと話し続けてくれていたのが分かった。



 ――夢を見た。



 真紅の軍服を纏った一人の軍師が、船の舳先に独り立って、遠くを見据えているのだ。


 燃え上がる船団の炎の中でも、その鮮やかな姿を見失うことは無い。



(初めて会えたね。

 周公瑾しゅうこうきん

 噂は聞いていたけれど、

 確かに綺麗な男だ) 



 貴方が綺麗なのは最後まで戦い続けたからだ。


 久しぶりに会った曹操も夏侯惇も、やはり綺麗な男だった。

 最後まで戦い続ける男は、きっと綺麗に見えるものなのだ。



 夢を見たまま、郭嘉は語りかける。



(私もそうするよ。

 貴方をしのんで泣いたりは決してしない。

 誓うよ)



 夏侯惇のおかげで、この世では相まみえることの無かった周公瑾の夢を見れた。


 郭嘉かくかは、心の底から幸せを感じた。



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