売れない小説家の俺。UFOで一億年旅してる間に、作品が世界一になってた件

ジュン・ガリアーノ

帰る? 帰らない?

 俺の名前はジュン。

 サラリーマンで小説も書いてる。

 仕事はまあまあ。

 だけど、小説の反応はサッパリ。

 まあ、俺はいわゆる、

 『社畜サラリーマン──売れない小説家』だ。

 なので、未だ社畜として働いている。


 そんなある夜、俺の上空にUFOが突然現れた。


 ピーっという黄色い光でさらわれ、気付いたらUFO内部に。


「な、な、な、な、なんだここは?!」


「UFOだよ」


 出てきたのは典型的な灰色の宇宙人。

 目と頭がデカいあれね。


「ちょっと待って。なんでいきなり?」


「いや、乗りたいかなって」


「はあっ? いや、確かに乗ってみたいってのはあったけど、いきなりとかさあ」


 けど、宇宙人は関係なく言ってくる。


「100億光年先とか、どう?」


 この瞬間、俺の脳にズがガンッ! と、稲妻のような衝撃が走った。

 まあ、比喩的にね。


 今はしがないサラリーマンだけど、宇宙とか超興味あんのよ。


「ブラックホールの中とかも余裕よ」


 もうダメ。完敗。


「行きます! 連れてってくださいっ!」


「オッケー♪」


 宇宙人は超フランクに指でオッケーマークを作ると、バビュンとUFOを飛ばした。


 そっからは凄かったよ。

 

 マジで色んなとこに行った。

 しかも一瞬で。


「スゲェ! スゲェ!」


 って俺が叫んでる間に、ビュンビュン行くんよ。


 で、小一時間ぐらい経った頃かな。

 俺は明日仕事だったのを思い出した。


「あっ、すいません。そろそろ帰んなきゃ」


「オッケー」


 すると宇宙人はUFOをバビュンと操作して、一瞬で地球まで戻ったんよ。

 まあ、正確に言えば、宇宙空間の地球上空みたいな場所に。


 窓から地球が見える。

 見える。だけど、ちょっと違和感が……


「あれ? な、なんか凄くない? あんな発展してたっけ?」


 もちろん、地球をここから見るのは初めてだったけど、なんか、その素人目でも分かるぐらい、メッチャキラキラしてんのよ。


「あんなんだっけ?」


 俺が尋ねた瞬間、宇宙人はサラッと言ってきた。


「まあ、一億年も経てばあんなもんでしょ」

「い、一億年っ?!」

「うん。そだよ」

「そだよ、ってアンタ、はあっ?! ど、どーゆーこと?!」


 なんか宇宙人曰く、メッチャ早く移動したから、時間もメッチャ早く進んだらしい。

 ここでの一時間は、外では一億年なんだと。


 確かになんとかシュタインの何とか理論があるのは知ってたけど、いや、聞いてないし。

 こんなん。


「じゃあ、ちょっと待って。俺、会社を無断で休んだってこと?!」


「そうだね」


「あわわわわわっ! ちょっと待って。有給じゃなくて1日休むと15000円引かれるから、一億年休んだとすると……」


 俺は震えながらスマホでカタカタ計算し始めた。


「さ、さ、さんびゃくななじゅっ兆円!」


「合ってるよ」


「はうはうはうはうはうっ(過呼吸)、いや、合ってるとかじゃなくて、こんな額、払えないし! はうはうはうはうはうっ(過呼吸)」


 過呼吸が止まらない俺に宇宙人は言ってくる。


「大丈夫だよ。もう会社無いから」


「えっ?! えええっ?! か、か、会社が無いっ?!」


「一億年だからね。人類もいないよ」


 その言葉に、俺の過呼吸がさらに急加速する。


「はうはうはうはうはうっはうはうはうはうはうっ(過呼吸)、じ、じ、人類がっ?!」


「とっくに滅んだよ。今いるのは別の生物」


 とんでもねぇことになっちまった!

 人類がいないってことは、まさか……


「お、俺の書いてた小説は?」


「もちろん消えた。痕跡もない」


 もう過呼吸なのかなんなのか、分からない状態にみで追い込まれてる。

 意識もおかしい。


 ただ、そんな中でも俺は気にせずにはいられなかった。


「ちょちょちょっと待て、俺の小説は最後どうなったんだ? バズったのか?」


「う〜ん、見てみる? タイムテレビで」


「あ、ああ、見れるのか!」


 どうせバズってるハズはないだろうが、一応気になる。確認はしておきたい。

 ちなみに、一億年前というか、体感的には一時間前まで、俺の小説は5pvだった。



「あっ、へぇー」


 宇宙人が、なんやら楽しそうに見てるのが気になる。


「ど、どうだったんだ?」


「バズったみたいだね」


「なんだとっ?!」


 予想外の答えに俺の心臓までバババババックンいってる。

 過呼吸と合わさってまるでロックだ。


 もしメッチャバズってたとしたら、俺はそれを味合わずに終わったことになる。

 そんなのは耐えられない。


「で、でも、そこまでバズじゃないよな?!」


「ドラゴン◯ールの10000倍だね」


「はうはうはうはうはうっ(過呼吸)、はうはうはうはうはうっ(過呼吸)、はうはうはうはうはうっ(過呼吸)!!!」


「日本人だけじゃなく、全世界の人たちから人気あったみたい。作者は行方不明のまま」


「そそそそそんなっ!! もし、じゃああのまま地球にいたら」


「大富豪だね。みんなから尊敬されて、憧れのまと」


 ……なあ、こんなことがあっていいのか?

 あまりにもひどいというか、わけわからんだろ。


 こんなん、ゴッホセンパイだってビックリしちゃうハズだ。


「な、な、なんとか元に、元の時代に戻れる方法はないのか?」


「あるよ」


「たのむっ! たのむから戻してくれっ!」


 泣きじゃくりながら過呼吸のまま両手を合わせて頼み込むと、宇宙人は言ってきた。


「その変わり記憶は消すよ」


「えっ?」


「そりゃそうでしょ。未来を知ってるなんてズルだし、面白くないでしょ」


「そ、そりゃそうだけど……」


 俺の脳裏に一抹の不安が残る中、宇宙人はさらに告げてくる。


「後、さっきの未来は、あくまでキミがいなかった場合の未来だから。未来は不確定要素で変わるから、小説がバズるか分からないよ」


「えっ、なら……」


「バズらず苦しいままかもしれない。それでもいい? それか宇宙旅しながら、新しい世界に行く? どっちでもいいよ」


 一瞬悩んだ。


 バズるかがわからないなら、新しい世界に行ってもいいかと。

 書いても書いても認められず、辛いままなのもイヤだし。


───だけど……!


 俺は宇宙人に告げる。


「戻してくれ! やっぱ、ちゃんとやりきりたいんだよ! バズるか分からなくても、俺はちゃんと自分の人生やりきりたいんだ!」


 そう叫んだ瞬間、宇宙人はニッコリと笑った。

 ような気がする。


「オッケー♪ じゃあ、ちゃんと最後まで旅してきて。キミの人生を──!」



────

 ────

  ────



 ハッと目を覚ますと、俺は自分のベッドの上にいた。

 なんか、すんげぇことを体験したような気がするけど、ボーっとする。


「なんの夢だったかなぁ……」


 思い出せない。

 まあ、夢なんてそんなもんだろ。


 寝ぼけまなこで時計を見ると、一気に目が覚めた。


「ヤバっ! こんな時間じゃねぇか!」


 大慌てで準備をして、そのまま電車に乗る。

 で、いつもの通り、自分の小説ページを開く。


───ど〜せ、また5pv。いや、0かな……


 そんなことを思って開くと、やっぱりpvはさして変わらない。

 だけどなんと、感想が一件きていたんだ。


 嬉しくて、メッチャ心が弾む。


 感想主はグレイさん。


───宇宙人みたいな名前だな w


 そんなことを思って読んだ感想欄には、こう書いてあった。



 

 流行りのタイプの小説ではないと思うけど、主人公の女の子”澪ちゃん”が、逆境に負けず、仲間と一緒に夢に向かっていく姿に感動しました!

 文体は独特だから、最初少し、ん? と、思いましたけど、内容が分かると凄く面白いです!

 今、自分も毎日大変で色々あるし、やりたくないこともしなきゃいけないけど、この主人公の澪ちゃんみたいに頑張っていこうと思います!

 まだこの作品あんまり評価はされてないですけど、ボクはこの作品が大好きです!

 だから、作者さんも最後まで頑張って書いてください!

 応援してます!




 俺は泣いた。

 電車の中なのにボロボロ泣いた。

 涙が止まらなかったから。



 そして俺は今日も書く。

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