かきごおり カクヨム短歌賞1首部門#5

滝口アルファ

かきごおり 短歌12首

炎帝がごるんごるんと揺れ動くごるんごるんと悲しみが来る



染み込んだ岩の中からあふれ出る蝉の声です君が好きです



ドラキュラの血しか吸わないドラキュラの血しか吸わない瑠璃色のヒル



かきごおり 貴方のいない世界にも慣れてきている自分が怖い



梅雨明けて入道雲のかがやきの健診女医のふくらはぎ見ゆ



鬼百合よ王子を愛す道化師が王子のフィアンセを撃ちました



傷つけて傷つけられて許し合う勇気が欠けていた夏の雪



転生をするならけやき、鳥たちの隠れ家となる大きな欅



妖精のしもべをやめて逃げてゆくのかもしれない卓上の紙魚



海外へ駆け落ちをした王女様、風の便りに子を産んだとか



「どうすれば愛されますか?」AIに婚活中の堕天使が聞く



夏空は悲しく晴れているけれど虹の卵を秘め持つだろう



炎帝えんてい

夏をつかさどる神。


瑠璃色るりいろ

紫みを帯びた濃い青。


健診は

健康診断の略。


鬼百合おにゆり

暗紫色の斑点を持つ

だいだい色の夏の花。


紙魚しみ

銀白色の鱗に覆われた

1センチほどの害虫。


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