このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(475文字)
ごるんごるんと転がる感情のかけらたちが、短歌という小さな器に美しく収められていて、読むほどに沁みてくる作品でした。痛みも、風景も、時には不思議な笑みも。夏という季節の中に、人の心の揺れが幾重にも重ねられていて、読むたびに違う顔を見せてくれます。その一首一首は、まるで雨のあとに訪れる、静かな光の余韻のよう。欅が枝を伸ばすように、そっと差し出された言葉たちは、読む人の中にやさしく根を張って、やがて虹の卵が孵るまでの時間を共にしてくれます。素敵な十二首を、ありがとうございました。
幻想と現実、哀しみと美しさが交錯する独自の世界を美しく描いてくださっています。擬音や繰り返しがとても印象的で、言葉のリズムに心が引き込まれます。例えば、「ごるんごるん」や「ドラキュラの血しか吸わない」など、一般的に考えると少し異様に感じるかもしれないような表現が、一見不条理でありながら、感情の深部を鮮やかに照らし、光が差すような印象です。切なさや孤独、愛情の残像が、静かに胸を打つ幸せな余韻が残る首達です。