カクヨム短歌賞【ナツガタリ'25】参加作品つじかわかじつ

カクヨム短歌賞【ナツガタリ'25】参加作品つじかわかじつ

蝶を見た　ステンドグラス　かのような　名前は知らない　でも忘れない

ふくらはぎ　こむら返りの　深夜2時　がんばれツムラの　68番

板チョコが　綺麗に割れず　目で会話　大きいほうは　だいたい、私の。

「生きる」以外　選択肢がなく　生かされて　深く苔踏み　足跡残す

交差点　ゲリラ豪雨の　水たまり　青信号が　溶けて散らばる

街の灯が　消えない世界の　暗闇に　なりきれない夜　暇そうな月

複雑で　ほかのどこにも　属さない　群青という　色の生き方

気持ち悪い　耐えきれないほど　つらいのに　どうして涙は　透明なんだよ

おととしも　去年も今年も　「あいかわらず」　それってたぶん　素晴らしいこと

さっきまで　憶えてた「アレ」　探しつつ　コレではない菓子　カゴに入れつつ

死に方を　選べるならば　あの細い　月に刺されて　私は死にたい

水出しの　フルーツティーに　オレンジを　浮かべて鼻歌　大瀧詠一

旅先で　あなたが私を　撮った写真　喜怒哀楽の　喜楽が写る

手水鉢　揺れる水面に　薄紅の　乙女椿が　映す彩（いろ）哉（かな）

通り雨　過ぎて架かった　二重虹（ふたえにじ）　きっと天使の　雨やどりの跡

陽を浴びて　いまにも鉢から　飛び出して　走っていきそな　うちのガジュマル

焼きたての　タルト・タタンに　アールグレイ　五感に沁みる　秋の幸せ

明日には　まぶたを閉じる　細い月　ゆっくり眠れ　明後日会おう

人はなぜ　幸せそうな人が　本当に　幸せなのか　疑うのだろう

世界中で　僕が一番　好きなのは　照れ笑いする　君の横顔

入道雲　郵便屋さん　バイクの音　書くことなかった　絵日記のような日

水たまり　またげたつもりが　踏んづけて　凹むなそこには　虹が出ている

いまここが　どしゃぶりならば　あるいてこう　世界のどっかは　晴れてるもんだ

「好き」という　そのこと以外　恋愛に　あなたは何を　求めだしたの

遠まわりとは思っていません。　はなっからそういう道だったんです。知らんけど。