昨日を失くした世界で、君を想う

ある朝、政府から一通の通達が届いた。

「昨日についての言及を禁じます」

人々は戸惑いながらも、やがてその命令に従うようになる。

誰もが「昨日」を語らない。
新聞もニュースもSNSも、
まるで過去そのものがなかったかのように沈黙する。

けれど、一人の青年だけは抗う。
なぜなら、彼は「昨日」――愛する人と別れたから。
消えてゆく記録、封じられる言葉。
それでも彼の心の奥底には、確かに「昨日」が息づいていた。

日々の中でこぼれ落ちる記憶。
社会の沈黙のなかで、ひそやかに続けられる小さな抵抗。
語ることの重さ、記憶することの強さ。
それは未来への希望をつなぐ、ひとつの祈りにも似ていた。

忘れてはならない。
語れなくとも、想いは消えない。
そんな世界の片隅で、「君」を想う物語。

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