昨日を奪われた世界の、小さな抵抗

ある日突然、「昨日」というたった一語が社会から消される──。。
その一行だけで「え、どうなるの?」と読者を強く引き寄せる、アイデア勝負圧勝のディストピアSFです。

政府の通達により、人々は一斉に“昨日を語ること”をやめ、ニュースもSNSも会話もすべてが“今日だけ”で構成されていく世界。

主人公のトオルは、どうしても「昨日」を忘れられない理由を抱えており、読者は彼とともに“語れない昨日”をめぐる葛藤に寄り添うことになります。

何が失われていき、何が残るのか。
その答えが、作中のある一文に置かれていると自分は感じました。

読み手それぞれの“昨日”に小さな問いを投げかけてくれる作品です。

その他のおすすめレビュー

晴久さんの他のおすすめレビュー697