第4話 助け船
奴隷商館の従業員や所属している奴隷達のおかげで、何とか一か月を過ごすことができた。本当に有難い。ただ、ここまで何とかやり繰りをしてきたが、奴隷商の経営はもう限界が近づいてきていた。
「――アル、アル」
「えっ」
「どうしたのボーっとして。疲れているなら休んだ方がいいよ」
「大丈夫だよ。みんな頑張っているし」
「あのね。アルが倒れたら、それこそ大変になっちゃうよ」
「ああ」
「コノヤロー! ベッドへ強制連行だ! 一緒に寝るぞ!」
「うわっ! ちょっとローズ!」
火災で焼けた跡地の仮設商館の前で、ローズとそんなやり取りをしていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「アルマちゃん!」
声のした方を見ると、マーサさんがいた。それに男爵も。僕は驚いて声を上げる。
「お久しぶりです! 元気でしたか?」
「見ての通り元気よ。それよりも――」
マーサさんは以前とは違う様相の商館を見つめた。
「大変だったわね。みんな無事だったの?」
「全員無事と言いたいところですが、一階にいた奴隷に犠牲者が」
「そう――、商売の方は大丈夫なの?」
「資金繰りが厳しいです。父が駆けまわって資金を集めに行っています」
「なるほど――、ねぇ」
マーサさんは振り返り男爵を見た。男爵は柔和な笑顔のまま何か言いたげだった。
「うちの旦那から提案があるんだけど、アルマちゃん聞いてくれる?」
マーサさんがそう言った後、男爵は近づいてきて僕に言う。
「資金繰りが厳しいなら、儂が援助をしてやろう」
「ホントですか!」
「うむ。マーサの大切な場所だからのう。金は使ってナンボじゃ」
「ありがとうございます!」
「ほっほっほっ」
マーサさんの絡みで、有難いことに男爵がうちの商会を全面的に支援してくれることになった。僕は父親が許してくれるなら、支援の見返りとして男爵の領地に農奴を送ることも提案しようと思う。これで何とかなる。本当に良かった。
「若! 朝、言ってたお客さんが来てますぜ!」
「ガイ! 今行くから、対応しておいて! ――じゃあ、男爵、マーサさん後で詳しい話をしましょう」
「アル」
「ん? ローズ何?」
「働きすぎ」
「そうだっけ?」
「はぁ。話が終わったら問答無用でベッドへ連れて行くからね」
「ははは」
「まったく、
「ありがとうね、ローズ」
「ほっほっほっ、若旦那は良い嫁を見つけたな」
「男爵、そう見えますか?」
「見えるぞ」
僕はローズを見ると、彼女は僕から目を逸らした。彼女の頬が少し紅くなっているのは気のせいではないかもしれない。
奴隷商人は巨乳盾姫に狙われる フィステリアタナカ @info_dhalsim
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