考えても、仕方無いこと──彩

七月二十四日 雨宮家

 

「普通に生活できて、『Eclipsed Reverie』も処分した……そろそろ、カウンセリングも終了でいいかな?」

 

 そうかもしれない。

 

 ただ、私には、蓮城小夜が気がかりで仕方ない。

 

 俯く私に、桜井先生は見透かしたように諭す。

 

「蓮城さん、でしょ」

 

 図星だった。

 

「彩」

 

 初めて、名前で呼ばれた。氷の中に、何か暖かいものを感じた。

 

「人間には、出来ることと出来ないことがあるわ。大人は"無限の可能性"なんて軽々しく口にするけど、本来人間は有限モータルな存在よ」

 

「でも」

 

「その蓮城さんの人生、彩に背負えるの? 宗教二世で、危険な知識を"生きるために"学んできた子供の問題を、普通の高校生がどうこうできるの?」

 

 ぐうの音も出ない。

 

「私は……」

 

 言葉が、頭の中で整理できない。

 

 ただ、エアコンの音、外から届く夏の音だけが、私達を包囲していた。

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雨、終曲。 玄道 @gen-do09

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