深淵を覗く、放課後のスパイたち
- ★★★ Excellent!!!
どこにでもある地方都市、ごく普通の私立高校。
その日常が、ある日を境に音を立てて崩れ去っていく様は、まさに圧巻の一言です。
この物語の舞台である「私立あかつき学園」は、川にかかる一本の橋でしか外と繋がっていない、いわば「箱庭」のような場所。
この閉鎖的な設定が、物語が進むにつれてじわじわと緊張感を生み出していきます。
平和な学園生活のすぐ足元には、国際的な陰謀が渦巻く、巨大な秘密研究所が広がっていました。
日常が非日常に侵食されていく恐怖。
信じていた世界が反転する絶望感。
主人公の碧唯ひなたは、小柄な少女ながら、強い正義感と行動力で仲間を引っ張ります。
彼女が持つ「共感力」は、他人の痛みを自分のことのように感じ、寄り添おうとする優しさの結晶。
ひなたの隣に立つ親友、土師京子。
物静かな彼女が背負う過去はとても壮絶です。
ひなた、京子、そして二人を支える寺本亮。
ごく普通の高校生である彼らが、友情だけを武器に巨大な悪へ立ち向かう姿に、胸が熱くなります。
敵役にも複雑な背景があります。
ファウンデーションに翻弄されるテニス部キャプテン、明智冴姫の葛藤。
彼女の選んだ道は物語の中でも特に悲しく、そして美しい場面として心に刻まれます。
一つのひき逃げ事故から始まった謎が、やがて学園全体を巻き込む巨大な陰謀へと繋がっていく。
極限状況の中で試される絆、そして自分の運命に抗おうとする若者たちの力強い人間ドラマ。
彼らが飛び込んだ深淵のその先を、ぜひ見届けてください。