雨の日は憂鬱なもの? 本当は、そこにしかない楽しいこともあるのかも?

 「これ、いいな!」、「この話、好きだな!」
 自然とそんな感想が浮かんでくる。そういう素敵な小説です。

 ユウキは窓から外の様子を見る。雨が降っていて憂鬱。明日は児童会長として、サツマイモの苗つけのイベントで挨拶をする予定もある。
 雨がやまないのが不安。そんな風に感じていた。

 そこで、彼の前に不思議な存在が現れる。

 雨降小僧という名の存在は、ユウキと一緒に遊ぼうと、雨の降る外へと呼び出す。
 どんどん雨を降らし、屋根の上でウォータースライダーみたいなものを作り出し、楽しい時間を過ごそうとする。

 この段階で、一つ気づかされるものがあります。 
 
 子供にとっては、じゃんじゃん降る雨というのは、実は心が湧きたつものなんじゃないか。プールみたいに遊ぶことだって出来るし、雨に打たれれば気持ち良いこともあるかもしれない。

 そんな子供の感性をいつしか忘れてしまっていた。雨降小僧の姿を見て、そんな事実に気付かされます。

 「無邪気な存在」というものを通し、「雨」や「天気」というものについて見つめ返したくなりました。ラストも爽やかなもので、良いものを読んだ、と強く感じさせられる作品でした。

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