レシートの積み重ねという何気ない日常の断片から、じわじわと不穏さが立ち上がってくる構成が珍しく買った品物を読み進める。
最初はありふれた買い物の記録なのに、家計簿をつける感覚でレシートを確認していると
「これはただの生活の買い物ではない」
と気づかされ、背筋が冷えていきます。
無機質な数字や商品名の羅列が、そのまま物語を語ってしまう手法はとても斬新で、読み手自身が推理に巻き込まれる感覚があります。
最後に提示される報道記事によって一気に視界が開け、これまでの細部がすべて意味を持ち始める瞬間は圧巻。
派手な描写を排し、あくまで淡々と積み重ねていくスタイルだからこそ恐怖が際立つ作品です。静けさの中に潜む狂気を描いた傑作といえるでしょう。
ジロギンさんのモキュメンタリー作品にはこれまでも驚かされてきましたが、今作は特に衝撃的でしたね。
我々読者は、スミダエツコという人物がフレッシュマート24というところで買い物をした際に出たレシートを読まされることになるんですけど、彼女が買ったものが不穏で不穏で……
いったいこの人はなにをするつもりなんだろう、まさか……といろいろ想像してしまいます。
次の日のレシート、その次の日のレシート……と読んでいくうちに、彼女の状況が変化しているのがわかって、この先、スミダエツコさんはどうなってしまうのか、とハラハラドキドキしながら読み進められました。
謎が残っている部分もあるけど、そこも想像の余地があっていいと思います。
非常に斬新な作品でした。おすすめです。
何かの拍子にひとのレシートを見てしまい、そのひとの生活を覗き見してしまったような気分になって、罪悪感と好奇心を覚えた方は多いと思います。
本作でも、7枚のレシートから、ある人物の生活(???)がありありと浮かび上がってきます。
1枚目のレシートから明らかに不穏なものが混じっているのですが、日が進むにつれ、さらにその不穏さが意外な方向に……。
斬新なアイデアが光る、恐怖とブラックユーモアたっぷりの、上質なホラーコメディです。
それにしても、何と品揃え豊富なコンビニなのでしょう! ホームセンターならともかく……いえ、たとえホームセンターでも、○○や○○○○○○や○○○は売っていませんよ!?
こういう書き方の小説があるのか、と惚れ惚れとしました。
スミダエツコなる人物の「買い物の記録」が提示されていきます。
商品の組み合わせを見てみると、どうもノコギリやら防腐スプレーやら「何かを解体するための品」みたいなものが目立ちます。
おやおや、なんの用途に使うのかな?
ふと「何かの場面」が想像されて、読者はブラックな笑いを誘われます。
その先も続くエツコの買い物。
「おや、最初のだけでは足りなかったかな」、「おお、ついに次の段階に進んだか」と、レシートの内容からエツコの「進行状況」が想起されていきます。
そんな中でワンポイント一緒に買われているサンドイッチやおにぎりなどの食べ物。この辺りがまたちょっと素朴さもあり、じわじわと笑いを誘ってきます。
レシートから垣間見える、エツコの「その後」。「な、なんと、そういう方向に!?」という思わぬホラー展開へと。
読後、とてつもない満足感がありました。レシートだけで語られていく「ホラー」という。これまで誰も読んだことのなかった新感覚。
その上ではっきりと「絵」が浮かんでくる。それがなんといっても素晴らしい。
常にレジを担当している店員のオカムラさん。毎回どんな気持ちで会計してたんだろうとか考えると、また更にじわじわと来ます。
喝采を持って、この作品が世に誕生したことを祝福したくなりました。