読んだあと、思わず「なるほど」と唸ってしまったホラー作品にございました。
深夜の帰り道、主人公は人だかりをみつけます。
何か……「転がっているもの」を一様に見ているようです。
疲れてはいるのですが、気になってしまい主人公も「見てみる」ことに……。
それはご遺体でした。ひき逃げ事件でして、
それも、悲惨な状態のご遺体でした。
しかし変です。誰も、「見ているだけ」で、救急車を呼ぶも警察を呼ぶもすることがありません。
はてさて……この状況は、一体なんなのだ……?
という物語にございます。
世にも奇妙な物語に出てきそうな、背筋がゾッとする物語にございました。
お勧めいたします!
是非、ご一読を。
慣れた帰り道。
だが、状況はいつもとは違っていた。
随分と遅い帰宅時間。
今にも降り出しそうな空気。
疲れと湿度のせいかの体調不良。
そして、道端に出来ている軽い人だかりに囲まれた、地面に力なく横たわる女性。
どこか違和感を覚えて、つい足を止めてしまう主人公。
違和感の正体は、人だかりを作っている人たちが女性を取り囲んでいるだけだということ。
関わり合いになりたくはなかったが、気になって人だかりの一人に声をかける主人公。
それが、自分に何をもたらすことになるのかも知らずに。
最近話題のAED問題で、誰も動かないとかそういうのか。
なんて思いもしましたが、全然違う怖さのものでした。
これぞ、ホラーの真骨頂。
主人公に降りかかる理不尽な厄災を、その目で見てくださいませ。
視界不良。とある出来事に必ずついて回る言葉を挙げます。
深夜の帰り道。疲れていますから周囲への注意も散漫。そのはずが。
ぼやけているのは視界。思考と感情は澄み切っています。周囲がおかしいならば理由があります。澄んだ思考でたどり着くのは、ここまで。
目の前がぼんやりとしか見えないところを、裏事情を見抜けるはずがありません。あぁ、視界不良。人とは哀しい存在です。
小説において読者は神。全てを見抜けます。そのはずが。
読者でありながら、作中人物と同様に視界不良の人間心理を追体験する、それが本作の真骨頂。何が起きたのかは明確ではありません。分かるのではなく感じます。見えないとは、どれほど怖いか。
ネタバレは本意ではありません。皆様には視界不良のまま本文にお進み願います。
真相は自分の目でご覧になるのが最良ですから。
いつも通る道で人が倒れていました。
どうやら轢き逃げらしいのですが……
本作は、交通事故後に遭遇した主人公に降りかかる奇妙な現象を描いた作品です。
路上で無残な轢死体となった見知らぬ被害者。
しかし違和感があるのは、それを囲む人々です。
なぜこの人たちは────
本作は、主人公の帰る道すがらの情景描写だけが、やけに克明に描かれるのです。
しかしその反面、登場する人物は主人公を含めて誰も彼もが淡い影のように描かれています。
茫漠とした人々に囲まれて、気がつくと────そこはもう自分の常識の及ばない場所へと変じている。
捉え処のない滲んだ悪夢の時間は、読む者にも不条理な恐怖を運んできます。
どうか、みなさまも交通安全には、くれぐれもお気をつけください。
まして事故の多い通りでは、なおさらです。
なにが起きるか、わかりませんから……
なんとも言えない不気味さに満ちた作品です。
主人公はある夜、帰り道を一人で歩く。
その途中の道で、一人の女性が倒れているのを見つける。周囲には野次馬たち。どうやら轢き逃げか何かに遭ったらしい。
……だが、何か様子がおかしい。
なぜか救急車を呼ぼうともしない野次馬たち。スマートフォンで撮影などをすることもせず、「非常時」に特有の「空気」が抜け落ちている。
これは、何が起こっている? この野次馬たちはなんなのか?
この倒れている女性の正体は。野次馬たちの正体は。
そして、主人公の置かれている状況は。
じわじわと、侵食されていくような不安感が全編を通して漂います。明らかに「何かがおかしい」空間に迷い込んでいる状況。
たまに出てくる不穏な言葉。「次の人」という単語など、それが「誰」を指していて、何を意味しているのか。
自然と頭の中で組み立てられて行くパズルが、ゾワリとした感覚を呼び起こします。
正体の明示されない不穏な何かが、心の中に影を落とす。そんな「悪夢」の一場面を見ているような、静かな恐怖をもたらしてくれる作品です。