第2話


 翌日、好奇心の強い私は、たまたま、会社が休みなことを理由に、その事件が起きた現場に、実際に行ってみることにした。


 車で、片道二時間半、せっかくの休日をこんな、何もないつまらない、公園に使うとは、自分も暇な物だ。公園は夢で見た時よりも、綺麗になっていた、元から管理はされている土地、あの事件があって、地元の人間は気味が悪く近づかないから、綺麗な状態を保っているのだろう。そんな不気味なほど綺麗で、静かな、公園で俺は、目的の公衆トイレに入って行った。


 そこには、何の変哲も無い、清掃され、全く使われた形跡がない、トイレしかなかった。

 帰ろうとしたその時、コツコツとこちらに近づいてくる、足音が聞こえてきた、夢がフラッシュバックし、動悸が早まった、トイレの小窓から、逃げ出そうとした、だが遅く。背中に触れられた感触が走る、幸いあの時のような灼熱感も痛みもない。


「なに、やってるんですか?あなた」


 その女の声を聞いて冷静になると、私は女性用トイレの小窓から、逃げ出そうとしている変な奴だ、そうだ殺人鬼が、こんな所に戻ってくるわけないのだ。私は急いで、元の場所に戻った。


 よく見ると、女は手に花束を抱えている。


「もしかして、あの心霊番組みて、面白半分できた人ですか?迷惑なんですよねそういうの」


 そういう女は、明らかにこちらに、不信感と敵意を抱いてる声色をしている、早く弁解しなくては。


「すいません、もしかして、あの事件の遺族の方ですか?別に面白半分できた訳じゃ」


「はい、そうですよ、ムカつくんですよね、人の姉が死んだ場所で、こんなことする奴、で肝試しでもなければ、なぜここに?明らか怪しいし、もしかして、犯人とか、犯人は現場に戻ってくるっていうし」


「違います、私はただ気になって」


「気になって?なにが?」


 俺は夢で事件の内容を見たこと、それがほとんど一致していることをこと細かくその女に話した、こんなことを言ったって、頭のおかしい奴だと思われて余計に疑われるだけ、かもしれないが。

 

 私がひと段落説明すると、女は目を見開いて、まくし立てるように言い放った。


「なぜ、あなたが遺族にしか公開されてない、その情報まで知ってるの!?」


「だから、夢で見たって言ってるじゃないですか、なんでこんな夢を見るのか、私が知りたいくらいですよ」


「わかった、それが本当なら私に協力して」


「協力って何を?それに協力して、私に何のメリットが?」


 そういうと女はいやらしい、笑みを浮かべてこう言った。


「協力ってのは、あなたのその力を使って、私の姉を殺した、真犯人を見つけるのを手伝って欲しいの。

 手伝いたくないなら、それでいいわよ、ただ、あなたを怪しい人物として警察に突き出すけど、このトイレでの逃げようとする行動や、事件について警察と遺族しか知らない情報を持ってる、それだけで、あなたは十分に怪しいわ。どう、協力する気になった?」


 私は面倒ごとに巻き込まれたと思いつつも、その好奇心から、事件の真相を知りたいとも思った。


「わかりました、協力しましょう」


「よかった、よろしくね、私の名前は夏目 杏(なつめ あん)あなたの名前は?」


 そう、名乗った彼女の見た目は、ダウナー系二十代前半くらいの見た目をした、背が高めの美人だ、モデル体型ではなく、どこかガタイの良さを感じさせる、何かスポーツでもやっていたのだろうか?そんなことを思いながら、私は自分の名前を名乗った。


「私の名前は烏丸 冷(からすま れい)です、よろしくお願いします」


 この時、私が彼女を協力しなければ、あんな事件は起きなかったのに、今でも私は後悔している。

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夢の中の殺人鬼 頭カカエル @toukakaeru

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