第4話 メリリ

パシャ、パシャ

カメラのフィルムを切る音が響く。

「いやぁー、お嬢様大学の子がこんな事しちゃうんだね。」

カメラを覗くのはアニメオフ会で友達になったコスプレイヤーの年上の男。

「そんな格好で笑かすなよ。」

ぴちぴちのタイツ生地のセーラー服デザインの水着を身にまとい、股間は伸びる生地がもっこりしていて衣装のミニスカートはコスプレイヤーの男のそれを隠せていない。

「この水着良いでしょ。セーラー服戦士。生地めっちゃ伸びるし、イベントでは下にスパッツ履くけど。メリリチャンのページは今撮ってるので良い?」

「いーよいーよ。メリリべつにレイヤーじゃなくて普段にこーゆーの着るのが好きなだけだもん。」

「じゃ、俺撮ってくれる?」


男性レイヤーとスタジオに来ている。

レイヤーとはコスプレをする人の事を意味する。

そして、即売会にて自身がコスプレをしている写真を販売するのだ。

「しっかしまぁ、童貞君いつもエロいよね。.....パンモロじゃん。メリリでもそんなの持ってないよ。イケメンでおもしろいとか最強じゃん。はい撮るよ~。」

パシャ、パシャと音が響く。

「ありがとー。メリリチャンそいえば今好きな人いてるんでしょ?インディーズだっけ」

ぱあっと表情が明るくなり、高揚感を抑えられない、とでも言わんばかりにメリリ、鈴雀凛々は“好きな人”の話をする。

「そうなの~!メリリの王子様なの~、童貞君のおかげで~、レインゲッチュしました~!毎日レインしてる。」

「俺何かのバンドとかよりもアニメの曲好きだからなぁ。シキ様?だっけ。」

「24歳でチンコが好きなモテモテ童貞君にはシキ様、どう見える?ほら、ねぇ、シキ様。」

「んー?メリリチャンだって知ってるだろ、イケメンのチンコとイケメンのチンコが写ってたら売れるんだよ。いいかい?俺らは、ヘンタイ相手にしてんだから。これ、見る?」

テーブルのパソコンの横に置いていたDVD-ROMを手に取り渡す。

DVDのケースには『童貞くん。(新)』と書かれているシールが貼ってある。

「ヤメロ!つーか、私もみたいに言うなっ」

「おかしいな。メリリチャンだってイケメンのチンコが好きなハズなのに。」

童貞君とは、アニメのオフ会で出会った。

なんやかんやで気が合い、今に至る。

童貞君は、文字通り童貞だそうだ。

アニメが好きだと言っていたが、コスプレをしてみればバズった彼は今では彼自身が男性と下半身を見せるキワドイ、いやもうモロ見せのDVDを同人誌の如く販売している。

趣味はコスプレ。

童貞君は凛々に一切手を出してこない。

どうやら彼はBOYS LOVEというものらしい。

一方凛々はと言うと恋愛対象は、好きになれば誰でも。好きになったらそれは好きなのだ。

それにしても。

「それにしても、メリリチャンホントに“シキ様”と接近するなんてね。がらんがらんのハコにクチコミで観客集めて?あっという間に場内満席なんでしょ?実力じゃん、ンなバンド。何かメジャー行きそうな気がするけどオレ。」

パシャパシャとシャッター音を響かせ、カメラのレンズに写る童貞君は慣れたポーズを披露する。

パシャ、パシャ、

「ねぇ、やっぱメジャー行きそうな気がするよね、メリリの王子様。」

「ん~?」

パシャ。

「なんでそんな事気にするの?メジャー行ったって良いじゃん、いとしのシキ様がテレビで歌ったりするだけでしょ。嫌なの?」


メリリの王子様。

きっと{⋆.゚*♡+。メリリのシキ様⋆*♡+.゚⋆}はどんな女にも心を許してしまう。

そんな事、誰よりも一番シキを好きなメリリは絶対許せない。


無防備に私をファンの立ち位置よりもずっと、触れる距離に置いてしまっているのだから。

だったらメジャーに行く前に、

{。:.゚+。メリリの事ばかりを考えてしまう+。:.゚}

ようにしなきゃ。











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