世界の水の話をしよう・北アメリカ編(西部)

 月も変わりまして今年も水無月(六月)の季節になりました。

 いわゆる梅雨の季節に入ったわけですが、梅雨といえば雨ですね。

 本来であれば春から初夏に向かう五月は「皐月晴れ」と言われるように天気がいい日が多いです。お天道様が高く昇り、さんさんと照らす日光が木々や草花、そして野菜や私達の主食であるお米の生育をぐんぐん進めるはずなのですが、今年の五月は天気が安定しませんでした。


 例年通りであれば五月に太陽の光をいっぱい浴びた稲が、六月の長雨で一気に成長するはずなのですが、今年はどうなりますでしょうか。


 冷夏になる……なんて話も出回ってます。

 今年のお米どうなるんでしょうか。なんだか最近は気に病むことが多いように思います。平和が一番——なんですけどね。


 冒頭から重い話になってしまいました。

 それでは世界の水の話の続きを語っていくとしましょう。

 今回の地域はこちら。


🌎 北アメリカ

主な水源

ロッキー山脈(アメリカ西部、カナダ)

五大湖(スペリオル湖、ミシガン湖など、米国とカナダの間)

ミシシッピ川水系(米国中央部)

コロラド川(米国南西部〜メキシコ)


水を巡る問題

コロラド川の過剰使用による流量減少

アメリカ西部の干ばつと水不足

水利権を巡る州間・国際間の対立(米国vsメキシコなど)



 今回は太平洋の向こう側、アメリカ大陸の水源について知識を深めていくとしましょう。まず、アメリカ大陸ですが北と南に別れているのは周知の通りです。

 北アメリカの水事情について少し調べるだけでも、膨大な情報量に襲われたので要点をかいつまんで二回にわけたいと思います 


 いわゆる北米と呼ばれる地域にある国といえばアメリカ合衆国とカナダ。

 南米はサッカーで有名なブラジル、細長い国土が特徴的なチリなど、こちらも様々な国が並び立つ地域です。

 日本でも問題になってる外来生物ジャンボタニシ(和名:スクリミンゴ貝)の生息地は南米ですね。


 さて、視点を北米に戻して水源を見ていきます。

 アメリカの主要な水源は雪山と湖の美しい景勝地で知られるロッキー山脈、かってのアメリカの工業地帯ラストベルトで有名な五大湖、中央部を流れるミシシッピ川、そして南西部からメキシコに向かって流れているコロラド川などが主な水源です。


 ロッキー山脈は北アメリカ大陸西部を北西から南西部に走る山脈です。

 北は北緯60度に近いカナダ・ブリティッシュコロンビア州最北部から、南は東京23区とほぼ同緯度に位置するアメリカ合衆国ニューメキシコ州の州都サンタフェの近くまで、その長さは4,800kmを超える山岳地帯に当たります。

 

 比較対象として日本の最長の長さを誇る山脈は奥羽山脈です。

 青森県の夏泊半島付近から、ほぼ南西方向に岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県と縦断し、栃木県那須岳連峰まで約500 kmにわたって連なる脊梁山脈。東北五県にまたがる規模ではあるのですが、やはり大陸のその規模には負けますね(山の大きさを比べてもしょうがないことではりますが)


 そんなロッキー山脈から流れる水はアメリカ合衆国の1/4の水源を占めています。

 ロッキー山脈から流れだす河川は太平洋、大西洋、北極海と世界の海の三つに注がれており、海の生態系を維持するために大変重要な山々であることも間違いないでしょう。


 さて、そんな北アメリカ大陸の水源であるロッキー山脈から流れる河川の一つにコロラド川があります。

 日本最長の信濃川の6倍を超える全長2300㎞の河川が行き着く先はカリフォルニア湾。上流域のコロラド、ニューメキシコ、ユタ、ワイオミングの4州と、下流域のネバダ、アリゾナ、カリフォルニアの3州、それに隣国メキシコを合わせて計4000万人の飲料水、2万平方キロメートル超の農地水利、数百万世帯分の電力をまかなってきました。

 

 そんなコロラド川ですが現在消滅の危機を迎えております。

 二十年ほど前から水不足が慢性化し、主要なダムを備えた西部ユタ州とアリゾナ州にまたがるパウエル湖の貯水率、同州とネバダ州の境にあるミード湖でもいずれも貯水を始めて以来最低の水準に落ち込むなど、水を巡る問題は年々厳しさを増しているようです。


 何故、川が消滅しそうな状況になっているのか?

 それには今から凡そ百年前に、アメリカの七州間で締結したコロラド川協定による取水量に関する取り決めが深く関わっています。


 水の流量見積もりの甘さと利水重視、そして近年は気候変動による流域での降雨量の減少から渇水の危機に見舞われているのです。これを受けて7州は2007年、取水量を2026年までに抜本的に見直し、それまではダム湖貯水量に下流3州での取水を制限する方針を打ち出し、2023年5月には連邦政府と下流3州が取水量を13%ずつ減らす暫定合意を結んでいます。


 https://www.google.co.jp/intl/ja/maps/about/behind-the-scenes/streetview/treks/colorado-river/


 こちらのグーグルストリートビューからコロラド川がどんな景色なのか見ることが出来ます。水の浸食により作り出された世界遺産にも登録されているグランド・キャニオンを流れる雄大で悠久を思わせる川の景観。個人的にはこれぞアメリカ! カントリーミュージックを流しながら川下りなんて出来たら最高だろうなぁ、と思いました。が、そんな自然の奇跡である景観が今正に失われかけているのだと思うと、やはり大国アメリカといえど、水に関しての問題は避けられないのだという事実に打ちのめされます。


 さらに大きな問題として取り上げられるのが、『干ばつ』です。

 記憶にも新しい今年の一月、カリフォルニア州ロサンゼルスで発生した山火事は同州内で過去に起きた事例の中でもトップ3に入る被害をもたらしました。


 出火の火元は乾燥した山の植生に火が付いた結果、激しく燃え上がり、それがロサンゼルス市内にも飛び火したとする説が有力だそうです。一部には陰謀論も出回ってますが、確証が無いので本コラムではスルーします。

 

 山火事といえば、日本でも三月は国内各地で山火事が相次ぎました。

 冬から春にかけての乾燥した時期ということもあり、なんとか恵みの雨と、地元や各地から応援に駆けつけた消防士の方達の尽力により、消し止めることは出来たわけですが、やはり連続で続いたというのは気がかりですね……。


 さて、そんな干ばつ被害と山火事にあったカリフォルニア州ですが、気候変動による変化の兆しは2011年以降から専門家が警鐘を鳴らしていました。


  アメリカ海洋大気庁(NOAA)は、カリフォルニア州の現在の干ばつの主な原因は、人為起源の気候変動ではなく自然の海洋・大気パターンにあると発表しています。アメリカ西海岸では2011年以降、冬の間に気圧の尾根が発達し、雨季の降水量が減少。報告書によると、海面温度パターンがこのような尾根を形成させる要因となっており、人為的な気候変動に起因するモデル予測とは正反対となったのだとか。同州ではこれまでも複数年にわたる干ばつが定期的に起きており、今後も発生する可能性は高いとされていました。


 つまり、ダイレクトに気候変動の影響をもろに受けているのが、アメリカ西海岸ということになります。


 これは人為的というより、気が遠くなるくらいの年月を重ねた地球自体が何かのサイクルに入ったと見るべきかもしれません。


 最近どこかで耳にしたことではありますが、現在進行しているのは温暖化ではなく寒冷化だという説もあります。


 いずれにせよ、水を巡る問題に関しても気候変動による影響は予断を許さない状況になりつつあること、ご理解いただけましたでしょうか。


 いやー北アメリカ西部だけでもこの情報量のボリューム……よ。

 というわけで東部の水事情に関してはまた次回。

 それでは。


 

 


 

 

 


 

 


 

 


 

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ちょっと世界の話をしよう 大宮 葉月 @hatiue

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