音吐朗朗

朗読とは、声を伝って、言葉の海を泳ぐこと。

放送部に所属する女子高生・りんは、自分の声に強いコンプレックスを抱えている。どれだけ練習しても、言葉は意味を失い、音だけが残る。朗読をすればするほど、「自分」が薄れていく。

それは、隣にいつも、さゆりがいるからだ。
透きとおるような声、ためらいのない読み、そして、痛みを照らすような優しさ。
そんなさゆりに対して、りんは劣等感と嫌悪感が募っていく。だからこそ、「負けなくない」と思い続けている。
声とは何か。言葉とは何か。
伝わらない想いと、沈んでいく自我の境界で、全国大会を目指す少女たちは揺れる。

これは、自分の声で生きようと踠くひとりの少女と、彼女の声をまっすぐに見つめる、自分の声が分かりきった少女の、痛みと呼吸の物語。