約束や別れ、春の訪れといった日常の情景が、神や愛といった普遍的なテーマと重なり合う。「やわらかな皮の向こうにひんやりと心が住まう」という表現には、身体と心の境界を超えた詩的な発見がある。現代的な言葉と古典的な響きが自然に調和し、読む者の感情に深く響く。私もまた、何気ない瞬間に宿る詩的な真実を感じ、心を動かされた。
短歌のポエジーという蝶が舞っている。それを遠くから確実に撃ち落とすスナイパー。作者の非凡な才能を、そんなふうに表現することも可能だろう。幻想的な短歌あり、叙情的な短歌あり、恋愛系の短歌あり、ホラー系の短歌あり、シニカルな短歌あり。バラエティーに富んだ短歌が、美しいカオスになって、発露している短歌集と言えるだろう。