エピローグ 空模様

初雪が舞うような寒い日だった。

夏生の家で、世は一緒にレジン作品を創作していた。外の空気との温度差から結露した窓から、露が一筋垂れていた。エアコンから流れる暖かな空気に包まれて、まるで繭の中のようだと思った記憶がある。

「世は、色の使い方が上手だね。」

群青色をしたレジンの夜空に浮かぶ、練り消しゴムの雲の淵に黄色の着色レジンを塗ったその景色は幻想的だ。

「本当?嬉しい。夏生の教え方が上手なんだよ。」

そう言って、世は嬉しそうに花がほころぶような笑顔を浮かべる。

「いつの空だろう。モデルはあるの?」

「これはね、夏生や春近と一緒に見た天体観測の日の空だよ。」

懐かしい、唯一無二の三角関係を築いたあの頃。今は二人になってしまったけれど、今でも時々胸が痛むけれど。

悠久の時間の中で出会えた奇跡が、今の俺を強くする。

いつか、君を超える愛しい人ができても、チカの存在は特別だ。決別をしたとき、空に向かって手を振ったときに生まれたその穏やかな風に乗って、どこまでも自由に走って行ってほしい。

「…うん、」

その後姿を、俺は世と一緒に見送る。

「綺麗な空だ。」



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好き。でも、恋をするきみが嫌いだ。 真崎いみ @alio0717

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