蓬莱が配信で呪われた!?

蓬莱の配信と”怪コメント”

ピコンピコンと何回も鳴る通知がうるさい。

アラームでもなくて、依頼でもなくて…

そうだ。『スズライブ』の通知の音だ。

スズライブとは、SNSの一種で気軽に今日あった出来事や、写真を投稿できるアプリである。

「お、梅雨、起きたか。」

珍しく真剣な表情をした桜が俺の正面に座る。

どうやら俺は、ソファーで寝落ちしてしまったらしい。

窓を見ると、すっかり太陽がこんにちはしていて、五色とメイの姿もあった。

「桜、どうかしたのか?」

「あぁ。これは大問題だ。」

桜がこんなに言うとは、よほどの事態なのだろう。

「梅雨、お前、心霊スポットに行った女子高生二人の悪夢の事件あったよな?」

「あぁ、あれか。覚えてる」

「そのとき俺が蓬莱の配信見てたのは?」

配信……

「思い出した。たしかその時、コメントに怪しい靄があって…」

「それだ。まだそのコメントが元凶がどうかは知らねぇが昨日の蓬莱の配信で、”怪コメント”がきた」

桜がスマホで昨日の配信を見せてくれる。

配信はに十分程度の物で、蛇紋神社にまつわる伝承を話している。

「動画の最後。『あなたは呪われました』っつーコメントが届いたんだ。」

桜が動画を早送りさせて、ちょうどいいところで止める。

コメント欄には、さまざまな労いの言葉が表示されている中で、呪いのコメントは異彩を放っていた。

「うわ、本当だ」

これはマジもんじゃなくても結構精神的に来るタイプだ

「あれ?そういや蓬莱は?」

ここには、俺、桜、メイ、五色が揃っているが、蓬莱だけ見当たらない。

「蓬莱は隅っこで。」

蓬莱の能力は二つ。一つ目は開門。

一定距離の空間移動──平たく言うとワープである。

そして二つ目は狐の窓。

こちらは、一定時間、離れた所を見ることができる。

「じゃぁ俺らは前のコメントから発信元を探ろう」

蓬莱以外に、離れた所を見る──みたいな能力を持っている人はいないので、四人で協力することにした。



「前来たコメントって言っても蓬莱って意外と毎日配信してるからな…」

「え……そうだったんですか」

五色が意外そうに言う。

「蓬莱って意外とマメだしなー」

桜がうんうんと頷く。

「ね、ねぇ、えっと、配信ってなに…?」

「あぁ、配信っていうのは、リスナーっていう自分のことを応援してくれる人たちとネット上で話したり、ゲームをやっているところをみんなに見てもらって楽しんでもらうって言う娯楽の一つだ」

「へぇ…!」

「気になるなら今度一緒にリアタイしよーぜ」

「リ、リアタイ…?」

「リアタイっていうのは、配信を、現在進行形で見ることだよ……」

「そうなんだ…!」

メイが興味津々気味に頷く。

「お、これじゃね?前見てたやつ」

蓬莱の配信動画一覧をスクロールしていたところ、ある一つの配信を桜が指さした。

その配信はホラーゲーム配信をしながら怪談という内容であった。

「よく思いつくよなー」

「ホラーゲーム実況しながらの怪談……凄く恐そう……」

「あれ?五色ちゃん、ホラー苦手なの?」

「いえ……苦手というか……苦手です。」

「苦手なんかい」

思わずツッコミを入れてしまう。

普段、お互いに敬語でしか話さないので、なんだか少し気まずかった。

「ホラーとかもっと得意だと思ってたわ」

「悪夢とかは……大丈夫なんですけど……急に出てくるやつとかは……心臓が止まりそうになります」

「ジャンプスケアですか」

あれは本当にビックリする。

事前に言ってから驚かせてほしい。

まぁ、急に出てくるのがホラーゲームの醍醐味でもあるんだけど。

「これ…なんのゲーム?」

「ホラーゲームの中でも結構有名なやつだなこれ。ジャンプスケアが特に多いらしい」

五色の顔を見ると、真っ青になっていた。

「あー…五色ちゃん見るのやめとく?」

「え…いや、…多分大丈夫です…その手のホラーゲーム配信は…学生時代に見たっきりなので…うん。多分…大丈夫…」

全然大丈夫ではなさそうであるが、まぁ本人が言ってるんだし良いだろう。

「じゃ流すぞー」



約二時間の配信だった。

ずっと膝立ちだったせいで、腰と膝が痛い。

「あったな。コメント」

「え……本当ですか……?」

「多分、1時間39分あたりだと思います」

「く、黒野ちゃん、ずっと目、つぶってたから…」

「やっぱり怖かったのか」

「てか、全然どうでもいい話だけどメイって五色ちゃんのこと下の名前呼び名のな」

「あ…直した方が…いい?」

「別にいいんじゃねー?俺らがどうこう言えることでもねーし

それに俺もメイって呼んでるしなー」

「あ…たしかに…僕は…餅花より…メイの方が…いいかも」

「おっけー」

「私はどちらでも…いいな」

「俺は如月でも梅雨でもなんでもいいよ」

改めて呼び方を確認し、コメントについての話に移った。

「靄がかかってるのは、コメントっつーよりアイコンだよなー」

「ネットで……呪い……?」

「そ、そんなのがあるの…?」

「ワンチャン生霊とか?」

「あり得る」

生霊となると、元となる人間が居るので、ただ単に祓って終わり。ですまない。

なので普通の幽霊よりも色々と大変になる。

「四人とも~場所がちょっとわかったかもしれない」

そう言うのは蓬莱だ。

「あ、蓬莱おはよう。あとお疲れ」

「ありがと~ それとおはよう梅雨。寝起き早々悪いんだけど、場所だけ報告しとくね」

そう言われ向かった場所は、ここからさほど離れていないアパートだった。

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天外堂の奇録 青霊 @AOREI

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