カタカタとキーボードを打つ音がする。
いつも通り、死んだ顔をした会社員たちが一言も発さず報告書を作成している。
あるのは、監視委員の異常報告の言葉だけだ。
「はぁ〜…疲れた…」
赤芽が書類でぐちゃぐちゃの机に突っ伏した。
「大丈夫か?コーヒー飲んだら?」
「あ〜…そうだね…彗華、取ってくんない?」
「はいよ。」
俺が差し出した”それ”を赤芽は躊躇なく手に取る。
パッケージを見て──赤芽は手に取ったものを俺に投げつけた。
俺はそれを危うげなくキャッチする。
「エナドリじゃん…」
「はははっ」
「わざとでしょ」
「当たり前。」
赤芽はエナドリよりコーヒーのほうが好きだ。
つい先程、一昨日の報告書を書き終わったところなので休憩がてらからかってやった。
「っていうか彗華、こんなことやってる暇あるの?さっき書いてたの、一昨日のやつでしょ?」
「これから昨日のをやるところだったんだよ」
「はいはい。小学生の言い訳みたいだね。っていうか、よく覚えてるよね。一昨日のことなんて」
「覚えらんないからスマホにメモってる。」
俺は机の上に無造作に置かれている黒いスマホを手にした。
「僕もそうだけど、彗華のスマホってだいぶ昔のやつだよね?今は腕時計型が多いのに…」
最近は技術が発展しているから、もう四角い端末ではなく、腕時計型でさらに持ちやすいのが主流だ。
防水性もあり、かなり便利らしいが、会社の給料じゃとてもじゃないけど買えない。
「高いから無理。」
「だよね〜」
お互いに、雑談もほどほどにして仕事に移った。
は〜。眠い。
この仕事が終わったらいい加減仮眠をとるか…
とか思っていても昨日の報告書を書いている途中か終わった頃にまた新しく仕事が来ることは予想できた。
それでも仕方がない。
今日も今日とで労働だ。