第43話 それぞれの星の役割

神々の末裔の中にも階級制度はある。

それらの名称は太陽系の惑星を太陽に近い順に並べた際の星の並びになっていて

太陽に近い星が一番下の階級、太陽から一番遠い星が一番上の階級になる。


星の階級は華族や爵位の序列制度よりも共通とした知識であるため使われている。


それぞれの星にはある程度の役割が決まっている。

一番身分が低い水星階級の貴族は人間狩りが主な仕事だ。

組織を作って生活している人間を捕獲するため、国内遠征に出ることも多い。


次の階級の火星階級の貴族は水星階級が捕まえた人間達を都市内などで幽閉して

奴隷として売ったり、売れそうにない人間はステラに捧げたり管理することが仕事。

もちろん、多くの兵士がそうなるが、志願すれば水星階級と共に任務に出ることも可能だ。


木星階級の貴族は有能な兵士が多く、任務に出る際は

水星・火星の兵士たちの上司にあたる。見込まれれば王星の下に就く事もできる。


土星階級の貴族は特殊で、明確に二つの道に分けられる。

研究員か、王星、教団直属の兵士だ。


そして 王星。

天王星、海王星、冥王星の階級にはたった一人のみ座することができる。


日本の天王星は特殊で代々同じ一族の長女、もしくは長男が継いでいる。

歴史をさかのぼれば建国より3,200年続いているらしい。

この世界が闇に染まった500年ほど前より続いているというのだから

世界の暗雲よりも闇は深いのかもしれない。


冥王星も特殊な星だ。

この世界の各国の冥王は星に座した時から誰一人として


つまり なのだ。


日本の冥王である路翔みちかけを 俺は幼い頃から知っている。

父に連れられ、一度見たことがある。


今も昔も 容姿が変わっていない。


孤高の 近寄り難い雰囲気を常に放っていた。


− そして海王星は 唯一 何代にも渡って席が変わる星だ。


俺の父親は先々代海王だった。

若くして次の者に席を奪われた。その者の方が優秀だったからだ。


誰よりも知識があり、誰よりも優秀な者が海王になる。


父親は多くの人間の奴隷を飼って多くの者と子を成した。

下級兵とも関係を持ち、とにかく多くの女と交わった。


結果的に俺は誰が自身の母親かを知らずに育った。


物心ついた頃にそばにいたのは、父直属の兵士だった大石だった。


3難解な数式を解いた時、父親は俺を研究所に連れて行きステラに繋げた。


あの快感を 今でも鮮明に覚えている。


頭が空っぽになった俺を父親は


自身より価値ある存在になりかねない子供が怖かったのだ。


涎を垂らして呆けている俺を大石は父に隠れて再びステラに繋げた。

アウトプットしたのだ、ステラに吸収された、本来俺が持っていた記憶を。


そして6

父の席を奪った者よりも、幼い俺は優秀だった。


海王星とは、そういう星だ。


そして 父は自殺した。


特に何も感じなかった。

強いて言えば、死ぬ前にステラに脳を繋げればよかったと思ったくらいだ。


それぞれの王星にも役割はある。


象徴として君臨する冥王星はただ呆けているだけじゃない。

彼らもだから、その星の座に就いているのだ。


もし彼ら1人の脳をステラに繋げれば

向こう100年分の光に困らされることはないだろう。


因みに人間一人の記憶につき、せいぜい3ヶ月分程度の光にしかならない。


知識と記憶こそが、ステラの光になる。


そのメカニズムを 俺は研究し続けている。


それが海王星の役割だ。


天王星の役割は兵士たちの指揮だ。

いってしまえば軍隊長、もしくは元帥げんすい


天王星である宮美は、家柄もあり冥王星、路翔みちかけとの縁談を期待されていた。

それが「宮家」の悲願なのだそうだ。

そしてそれを目的として彼女は天王星になったと噂されている。


しかし それはあり得ない話だ。



何せ 彼女には すでに愛する者がいるのだから。



愛というのは あまりにも曖昧で不明瞭で漠然としている。


答えのないものは 嫌いだ。


答えを出せない者も 中途半端な思考を持つ者も 俺は嫌いだ。


大した知識も記憶もないのなら 生きている価値なんてない。


全てステラに捧げて 

本人の存在は消してしまった方が世界のためになる。



多くの者が光に向かって祈りを捧げている姿を見ると


心底



吐き気がした。



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その流れ星をルーメンと云う ぱすかる @jittukurikotokoto-_-Zzz

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