むかし、むかし、五人の吸血鬼がいました。
一人は大地に、
一人は水に、
一人は風に、
一人は木々に姿を変え、
最後のひとりは仲間たちの作った世界の移り変わりを、永遠に見守ることになりました。
こうして不老不死となった吸血鬼のクレストは有能な従者、
淫魔のメイトリアーク
夢魔のパトリアーク
と共に穏やかな時を過ごしていました。
そんなある日、クレストの住む森の外から人間と思われる悲鳴が聞こえてくる。
そこにいた少女との出会いから、クレストの穏やかな日々は一変することに。
穏やかな日々は、幸福感あふれる刺激的な生活に変わることになった。
しかし、少女を人里から離れた場所で生活させ続けるわけにもいかないので、人間の町で少女を預かれそうなところを探そうとするが……
実はその少女は……
そして、その少女を取り戻そうとする者が現れ……
運命に翻弄される少女を優しさで包み込むクレストの姿に癒されること間違いなしです!
是非、お勧めしたい作品です!
区切りの良いところまで読めたので書きます。
ストーリーはあらすじにお願いします。
吸血鬼。書いている私の作品の題材でありますが、やはり人によって大分違う印象を受けます。
本作の吸血鬼クレストは来歴とは裏腹に頼りない。何でそこまでと聞きたくなってしまうぐらいに。おまけにコミュ障で優柔不断なところがあります。
しかし、それこそがクレストの魅力でもあります。優しさがしっかりあります。
でなくては、地獄へ今にも突き落とされそうになっていた見ず知らずの少女を救いはしません。幸福を願ったりはしない。全てを諦めたフィリアに希望を灯さそうとはしないはずです。
孤独に悠久を過ごしてきた吸血鬼と追われる没落貴族の元令嬢。
このままの日々が続くのか?それとも、帰る日が来るのか?
文章が丁寧でその情景がイメージしやすく、絵画的な美しさがある作品です。
森の中で長い長い生を、ただ生きていく。
人間では想像できない程の期間、何をするでもなくひたすらに世界を見つめてきたのだと考えると、無気力になるのも当然のような気なします。
そんな時に、昔の記憶に少しばかり触れる出来事が起こる。ずっと微睡んでいたところを揺さぶり起こされるような心地だったのでしょうか。
吸血鬼の彼からすれば、まだまだ生まれて間もない程度の期間しか生きていないだろう少女。
それもずっと幸せとは言えなかっただろう、幼いのに達観してしまっている。
この二人の関わりが、今後どう互いに影響を及ぼすのか。
この先を見守っていきたいと思います。