SFと人間ドラマを描き切る、巧みすぎる結節点。あと、ハンカチ準備推奨。

SFと言われると、物好きな僕はビジュアルを想像します。
人間ドラマと言われると、物好きな僕はその人の外見を想像します。
が、しかし。
この作品には、どちらも事細かに描かれてはいません。では描写力に欠けるのか?

否です。むしろ無駄な要素がない……というか、自然と湧いてくるんです。登場人物の様子や心理、街を行く人々や交通機関。
ここで新たなテーマが持ち上がります。それは「現実vs非現実」だったり、「出会いvs別れ」だったり。

また、文章自体に温もりがあります。本当に、どうすればこんな作品を描くことができるのか、勝手ながら羨ましく思ってしまいますね(笑)

仮想現実をテーマにした作品が流行している現在、仮想現実内における登場人物の人間らしさはどうなるのか? いわば『二重の生命』を生きる人々が受け入れるべき現実とは?

そして、そんな時代における『心の温もり』とは? ああ、一気読みできてよかった……(^ω^)

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