怖いだけではない、不思議な魅力をまとったお洒落なドラマ

良い意味での『掴みどころのなさ』が、適度な緊張感と神秘性を作品に与えており、最初の一文から引き込まれます。しかしその引き込み方も、決して強引にはならず、ホラーでありながらもむしろ心地よい感覚で進行します。

物語の中心は、バーの中での会話。主人公がある男性にインタビューを試みます。このモノローグに前後して、二人が手にしたウィスキーの描写があるのですが、これがまたお洒落なんです。

バーのマスターやお店の内装も、細かい描写はないのにとても雰囲気があり、写実的ながら文章でしかできないことが為されている、という印象を受けました。こうした一種の矛盾を内包した作品って、やっぱり人の心に刺さるよなあとしみじみ思います。

素敵な掌編を、ありがとうございました<(_ _)>

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