「未練」を味わう。

バーという静謐な空間で、亡くなった常連客のОさんが体験した交通事故直前の恐怖が語られるという、入れ子になったホラーでした。

幻の横断歩道と、上から聞こえる不気味な声、そして歩道に供えられた小さな花束。生と死の境でなにかに呼ばれる恐怖が、じわじわと迫ってきます。

死者を視て話せる主人公と、常連の成仏を願うマスターの間に流れる信頼感。
そこにはОさんの話を聞いてもらいたいという未練を、自然と解消してしまう優しさが流れていました。

霊が去った後に何故かほっこりとした読後感と、余韻が残ります。

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