ホットスナック

白川津 中々

◾️

ホットスナックが食べたい。


コンビニレジ横にある揚げたチキン。あの噛むと油が飛び出す健康アナーキーなフードを無性に口へ入れたいのだ。明らかに食べない方がバイタルにポジティブなのに湧き上がってくる欲望。脂質過剰確定にもかかわらず求めてしまう。ほら、もう我慢できず、部屋着の上からデニムとパーカーを着て外に出てしまっている。コンビニ入店。ビールを持ってレジへ。「◯◯チキください」とオーダーし外国人店員から物品を受け取る。喜びを胸に店外。さっさと買って店前で食べて帰る。これが俺流ホットスナックの楽しみ方。食べ歩きも悪くはないが止まって食べたい派なのだ。てなわけで袋を開けてチキンに齧り付く。


……こんなもんかぁ。

こんなもんだよなぁ。


そうとも、こんなもんなのである。

お手軽お気軽に購入できる商品なのだから過度な期待をしてはいけない。不味くはないが感動を得ようと思って食べるものではないのだ。その点でいうと、俺は些か正気が薄れていた。ホットスナック食べたさに現実を忘れ、幻想ともいえるクオリアをチキンに求めてしまってた。ビールで油を流し込みながら膨らむ腹に若干の後悔が溜まっていく。


「……帰ろ」


満足できたのかできてないのか判断できず帰路に着く。こんなことは何度もあった。そして、これからもあるだろう。ホットスナックは、忘れた頃に食べたくなる。きっとまた、同じ行為を繰り返すのだ。


「唐揚げ、美味しそうだったな……」


ホットスナックコーナーにあった唐揚げ。惹かれる心。明日は、唐揚げ。

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