フリマ

フリマ

何気なくフリマサイトを見ていたら「おすすめ」にとある靴が表示された。90年代に流行ったハイテクスニーカーのひとつだ。

当時のブームを思い出す。人気のモデルはチェーン店では軒並み品切れ、個人店ではとんでもない値段がつけられ、普通に手に入れることは困難となっていた。ブームの絶頂期には店舗・個人を問わずの盗難、挙句には履いている人が強盗に遭うという事件まで発生したのだった。

モニターに映っているスニーカーは人気のラインナップからは外れていたが、俺は気に入り、欲しかったモデルだった。しかしブームに吊られて品薄となってしまい、結局手に入れることはできなかった。

あれから数十年経ったが、あの頃の気持ちはまだ残っていた。俺は商品ページをクリックした。

フリマサイトはモノを売りたい人が気軽に出品できる。そしてそうした中には店では売っていないようなモノもある。そんなメリットと引き換えに、買う側は商品の良し悪しや信頼できる出品者かどうか、また価格は適正か、などといったことを自分の目と感覚で見極めなくてはならない。

最近はメーカーが、ブーム当時に人気のあったスニーカーを復刻販売したりもしている。しかしこのモデルは復刻されていない。だから本物だとしたら相当に貴重なものということになる。俺は商品を確かめようと画面をスクロールしていった。

　【商品概要】

　ロット番号：19960723-L674_B

　状態A相当／個人所有でした／ソールの減りは少ないです／接着の劣化もみられません

　【写真】

　▢　▢　▢　▢　▢

写真を見る限り、かなりの美品だ。また偽物でもなさそうだ。

　【備考】

　Keiさんへ／ftra6hau59

これは…どういうことだ？

俺の名前が書かれている。その後の英数字は俺のIDだ。俺が買い手として指名されている？

そんな馬鹿な

￥3,800（税込）

当時、数万円したあのスニーカーが、この状態でこの値段なのは破格と言っていい。

俺は備考が気になったが、思わず購入ボタンをクリックしてしまった。

それから3日後、出品者から荷物が届いた。

丁寧に包装されている。しかしスニーカーにしては重いように感じる。

梱包を開くと、お馴染みの厚紙のシューズボックスが出てきた。

蓋を開けるとスニーカーが現れた。まさにあの当時、憧れたそれだった。

俺はスニーカーを手に取った。　…重い。

箱から取り出して…　中を見て、思わず床に落とした。

心臓が凍った

箱の底に何か書いてある

『頑張って手に入れました　中身はおまけです』