エピローグ
夢を見ていた。
そんな気がする。
とりとめのない、万華鏡のような夢。
ある夢はとても美味しそうで、別の夢は悲しい別れに満ちていた。あちらの夢はなんだか悪夢で、こちらの夢は青春時代の1コマだった。
長い、長い夢だった気がする。でも一炊の夢だったような気もする。
もううまく回らなくなった頭で、なにかを思い出そうとしていると、いつの間にか部屋が暗くなってきたことに気づいた。
ふと、窓を見る。
窓は美しい夕焼けに染められており、柔らかな春の雲が添えられている。
誰ぞ彼どき。
夕焼けの窓から、大きな桜の樹が見えた。
春風に静かに散りゆく桜。
━━西行法師の気持ちがわかるな。月は出てないが。
どのくらいこの部屋にいるのだろうか。
それも分からなくなってしまったが、それなりの時間には違いない。
いつからか、訪う人もいなくなった世界で、唯一の友人は左手にある鈍色の銀板だった。
銀板の中では男は自由自在に生きることができた。
あるときは、神剣を自在に操る神代の英雄。またあるときは、栄華を極めた異能の成功者。はたまたあるときは、闇の組織を狩る非情の復讐者。
それは、きらめきに彩られた男だけの劇場だった。
その劇場も、そろそろ閉幕が近いことを感じる。
足音が迫る。
男は友人の存在を確かめるかのように優しく、でも不器用に銀板を撫でる。
友人は、いつものように男にまだ見ぬなにかを紹介してくれる。
━━エウレカ、こんなにも心が踊る物語をありがとう。
━━エウレカ、これほど優しい思いをありがとう。
万感が男の胸中を満たし、しわが刻まれた目尻から溢れてしまう。
せっかく友人が招いてくれているのに、ぼやけてよく見えない。
きっと陽が落ちてしまったせいだろう。
男は何かを整理するように、長い息をゆっくりと吐き出す。
そして呟いた。
「ありがとう、夢をくれた物書きさんたち。楽しかったよ……」
ゆるやかに手が落ちて、銀板が鈍い音を一度だけ刻んだ。
夜の帳が男をやさしく抱きしめていった。
END
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【エウレカ!】本話にて終了でございます。
ここまで読んでくださったあなたに最大の感謝を。
そもそも読んだ人いるのかという問題はさておき、本作のテーマはこのエピローグに集約される物語の"発見”でした。
日々、忙しい中で知恵を振り絞って物語を紡ぎ、無償で提供してくださる物書きさんには頭が上がりません。
まだ見ぬ作品への出会いと発見。そして感動。
投稿サイトは様々な驚きに満ち溢れています。
でもね、投稿サイトは出版不況にあえぐ出版社が"数撃ちゃ当たる"にすがったものとも思うわけです。
恐れず言ってしまうと、数打ちの刀です。しっかり鍛えずにとにかくたくさん作ってしまう。とりあえず使えればいいや。
そんな、考えがあったはずです。
そんななかでも、いくつもの作品で楽しませていただきました。
日本刀には分類できないけど、その切れ味は尋常ならざる……。
そんな刀もきっとあるでしょう。
最後に、もう一度投稿者の皆様に感謝を!
ちなみに私、元気ですよ?
まあ、アレコレとガタもきていますがそれなりに生きています。
見てください、この2本の足……あるえぇ?
エウレカ! 黒冬如庵 @madprof_m
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