また動かねぇ

白川津 中々

◾️

電車遅延は時間にうるさい日本人にとって許されざる大罪である。


「本日、車両点検、荷物挟まり、踏切の無理な横断、お客様の救護活動のため、大幅な遅れが生じております」


クソである。

麻雀ならインパチレベルの役が完成。遅延込みで朝早く家から出てきた意味が消失。60分以上止まっており未だ動かないというのは為体という他にないのではなかろうか。利用客が多い路線だというのに各駅のホームは狭くそこでまた問題が発生し遅れる悪循環。ゴミ。しかも人がどんどん溜まっていくから一両当たりの人口密度も高くなって不快度指数も青天井だ。先日など子供が人圧によって浮上し足をばたつかせていた。危険である。

この状況は80年代から変わっていない。つまり対策が追いついていないのだ。地方創生が失敗に終わり依然上昇志向の人間が都心部に集中している現状を鑑みると致し方ない点がある事否めないが、それにしても酷すぎる。人が集まるのは明白なのに何故こうも動きが遅いのか。黙っていても客が利用せざるを得ない鉄道会社の怠慢を感じる。会社は駅員が毎日大変な思いをしているというが分からないのか。不憫でならない。


「お客様にご連絡いたします。電車の遅れは現在も続いており……」  


諦め切ったようなアナウンスの裏では常に複数の声や電話の音などが入り込んでいる。処理が追いついていないようだ。電車が動くまで、まだかかるだろう。仕方がない。不満と憤怒を胸に仕舞い、タクシーを捕まえる。痛い出費だが、遅刻するわけにはいかないのだ。今日は昼抜き。「電車止まっちゃってますねぇ」という運転手の軽口に腹を立てつつも「そうですね」と返す。


まぁしかし、たまには、こんな、優雅な出勤もいいだろう。車の窓から見る景色はまた違ったテイスト。隣に敷かれた、電車が走らない線路を眺めながらの移動もまぁ乙なものだと……


……あれ?

ガタンゴトン?

ガタンゴトンしてる!


「あ、動いたみたいですね、電車」


動くんかい!

ならはよ言えや!


俺は目的地変更を告げ、次の駅で降りた。

やはり、昼飯は食べたい。

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