時空乃香菜梅

つばき

時空乃香菜梅

「時空の香奈梅」

皆さんは過去の扉の世界に行ったことがありますか。私もありません。けど世界はいつも私たちが想像することもなく、私たちが知らない世界で広がっている事に。

これは大人になった少女の冒険の話です。全ての物語はここから始まるのです。


【序章】


  私の名前は香奈梅。名字は「桜絢」なのだが誰も名字で呼ぶ人はいない。私の友たちはみんな私のことを香奈梅と呼ばずこう呼ぶのである。

「香奈ちゃん」

理由は簡単である。呼びやすいから。

今現在私は二十七歳になったばかりであるが、普通だったら結婚していてもおかしくはないが、まだ結婚はしていない。

私は二十六の頃、フェイスブックでやっと同級生と連絡が取れたり、そのつながりをきっかけに幼なじみと連絡が取れるようになった。むろん友たちに感謝である。

しかし、幼なじみを含めた人はみんな結婚したという。幼なじみの彼はメールでこういった。

「ごめんよ」

その後、彼は友だちとなったのであるが、私の人生はと言いますと、結婚相談所に行き、幸せにしてくれる人を見つけることを決意し、今の自分がいるわけで、そんな私が変な世界に行くということは私自身想像がつきませんでした。そして自分が時空を超えられるなんて知るわけもなかったのです。


それは、私が仕事帰りの最中の時でした。

「お疲れさまです」

「お疲れさま。まっすぐ電車で帰ること。」

「はい、主任。」

(今日も終わったな。家に帰ってピアノを弾こう。)

私は住宅地の中をとぼとぼと歩き始めた。

声がした…

「お姉さん、何か願いや会いたい人はいますか。」

女の人の声だった。誰と思い、少女は振り返り尋ねた。女は天女のような格好をしていた。

「あなたは誰?7」

彼女は答えた。

「この世界を操る万人の願い主。」

「願い主…?」

願い主はうなずき。少女に尋ねた。

「自分の願いは叶えられている? 会いたい人と結ばれている?」

私は返答を返さなかった。正直に答えると彼女の力に何をされるか分らなかったからである。しかし、

願い主は勝手に判断した。

彼女は言った。

「結ばれていない。」

少女は断った。

「いいんです。幸せになるための自分の人生を活動していますので。失礼します。」

願い主はうなずき少女の目を見つめ、目を閉じ心の中で思い続けた。

(勇ましい少女だわ。けど逃がさないわ。私の力で過去に飛ばし、二度と戻れなくし未来を変えてやる。)

そして彼女は諦めず慰めの光を空に放った。太陽光のような光を…。

そして、願い杖の力を発動させた。ライトという慰めの光を。

ライトは激しい光を少女に放ち始めた。その光は星のような光だった。

「なに? この光。」

少女は願い主が光を放っていることに気づいた。少女は願い主に訴えた。

「早くこの光を止めて。」

願い主は答えた。

「一度放たれた光は消えません。では。」

少女は引き留めた。しかし、願い主は笑いながら姿を消した。その瞬間、世界は分裂した。光は分裂した世界に放たれ、少女は真っ逆さまに落ちていった。少女は悲鳴を上げ、怖くて目を閉じていた。

「…」

目を開けてみると私は空を飛んでいた。あたりを見渡すと別空間ばかりである。私は心の中で思い続けた。

この空間はいったい何処に向かってるのだろうか。帰らなきゃ。でもどうしたらいいのかわからない。誰か助けて。

恐怖のあまり私は悲鳴をあげた。その瞬間、少年の声が聞こえた。音がした。誰かに受け止められた音が。

目を開けて見ると中学の頃に離ればなれになった浩雪君がそこにいた。

「大丈夫?」

私は満面な笑顔で頷いた。周りを見渡すと同じ班にいた仲間がいた。

私は尋ねた。

「あなたたち、名前は…浩雪君と洋子ちゃん。」

「そうだよ。香奈ちゃん。」

私は彼に尋ねた。

「どうして私の名前を呼ぶの。私のことをどう思ってる?」

彼は答えた。

「…言えないよ。」

「そう…私も言えなかった。未来で。」

彼らは私が未来から来たと言った瞬間、驚いた顔をした。彼らは私に尋ねた。

「未来とはどいういうこと?」

私は答えた。

「未来は平和で明るい世界だと。失った物もあるけど。」

「そうなんだ。」

私は彼女に訴えた。

「お願い、信じて。未来から来たのは本当だよ。」

洋子ちゃんは納得したような顔をして頷いていた。

「信じてくれないと思うけど…。」

「俺は信じるぜ。」

私は嬉しかった。信じてくれる仲間がいることが。

「浩雪君。ありがとう。」

浩雪君は満面な笑顔で私に尋ねた。

 「未来はどんな所なのかな?」

私は未来についてみんなの前で語った。だいぶ離れた未来のことを。

「私は未来で同級生とやりとりして連絡が取れたの。連絡を登録後にメールを再開したのは社会人になってから。でもあなたは結婚していた。そして彼とは友たちになった。私はおめでとうと伝えたの。すごく喜んでいたわ。でも浩雪君はずっと探していた。私と連絡取れなくても、ずっとずっと。」

「未来とはどいういうこと?」

私は答えた。

「未来は平和で明るい世界だよ。失った物もあるけど。」

「そうなんだ。」

私は彼女に訴えた。

「お願い、信じて。未来から来たのは本当だよ。」

洋子ちゃんは納得したような顔をして頷いていた。

「信じてくれないと思うけど…。」

「俺は信じるぜ。」

私は嬉しかった。信じてくれる仲間がいることが。

「浩雪君、ありがとう。」

「ここで諦めるわけにはいかないと思い、私を力で飛ばしたの。私は怖くて悲鳴を上げた。死ぬかと思い目を閉じたわ。気がつくと過去にいた。目を開いて見ると私は空を飛んでいた。あたりを見渡してみると世界は分裂した世界になり、私の体は光を放っていた。自分がどこにいるのかわからない状況になっていたの。」

「じゃあ香奈梅ちゃんは…。」

私は手を胸に当てて言った。

「ここにいる。」

浩雪は言った。

「じゃあ香奈ちゃんは永遠に戻れないのか、この世界から。」

私は不安そうな彼の姿を見て、彼の手を握り、伝えた。

「今のところは。でも大丈夫。飛ばされている間にあなたに助けを求めたから、未来のあなたに。だから絶対大丈夫だよ。今頃。届いているはず。あなたに。」

彼はほっとした表情で言った。

「そうか。よかった。」

私は彼に笑顔で言った。

「一緒に未来のあなたに私の思いを伝えてほしいの。」

彼は言った

「香奈ちゃん…うん。」

香奈梅は言った。

「うれしい。じゃあ祈ろう、一緒に。」

浩雪は香奈梅の笑ってる姿を見て思った。

( 本当に未来の俺に届くのだろうか。)

浩雪と香奈梅は願いの言葉を言った。

「届け、私たちの願い。メッセージよ届け。」

私たちは届くように祈った…目を閉じて。

そして、その願いは届いた。未来の俺に。


【未来の世界】

 プルプル…

「誰だよ。俺に電話くれるの。」

電話を僕は取った。

「もしもし?」

「私だよ、浩雪君。香奈梅だよ。覚えてない?」

俺は嬉しかった。電話の相手があの中学の頃の香奈梅だったから。

俺は思った。

( ああ、やっと何年ぶりにか君の声を聞いたな。)

俺は彼女の名前を呼んだ。

「香奈梅…」

「浩雪君。」

俺は彼女に尋ねた。

「なにかあったのか?」

彼女は助けを求めていた。

「助けて、浩雪。変なやつに訳分からない世界に飛ばされたの。助けて!」

その思いは聞こえた。

「香奈ちゃん!」

浩雪が叫んだ声は光となり消えた。そして、その光は糸になり私に届いた。私は糸をつかんだ。その瞬間、未来の彼の声が聞こえた。電話をかけ叫んだだけなのに。

「ああ、聞こえる。聞こえるよ。浩雪君。私はここよ。」。

その時、声が聞こえた・・・友たちになった彼の声が…。

世界に…私が消えた世界に…途切れた糸がつながった。


【過去の世界】

「私は伝えたわ、未来の浩雪君に。もちろん未来の浩雪君の声が聞こえたよ。浩雪君は聞こえた? 未来の浩雪君の声。」

僕は頷いた。そして決意を固め香奈梅に伝えた。

「香奈梅。僕は君に返す。僕も未来の自分の声が聞こえた。だから僕を頼って欲しい…。」

香奈梅は頷いた。

「うん」

私は彼を信じることにした。そして彼に頼んだ。

「浩雪君お願いがあるの。私はあなたを頼るわ。だから私を助けてほしい。」

彼は言った。

「分かった…。」

「ありがとう。」

うれしさのあまり涙がこぼれ落ちた。

私は迷惑をかけたと思い、彼の前でひたすら泣き謝り続けた。何度も何度も繰り返した。

「ごめんなさい、ごめんなさい…。」

「…。」

浩雪は謝る香奈梅を見て、何も言えなかった…。けれど体が勝手に動き始めていた…。

大好きな彼女を見捨てることができず、浩雪は彼女を抱きしめてしまった。今までならこんなことなどするはずなかったのに。

「浩雪君…。」

浩雪は告げた。

「何も言わなくてもいいから。この世界だけの僕を見て欲しい。例え君が未来から来ても願い主により飛ばさされても。君の未来や僕の未来は変えられない。これからも。ずっとだからこの世界の中で僕とやり直しをしよう。未来の自分たち分まで。」

「浩雪君…、ありがとう。」

私は涙を流しながら言葉をつないだ。

「離れた分は取り返せない。私は卒業前に「好き」と言いたかった。けど言えなかった。だから無理なの。もしそれが可能だとしても。それをしたら願い主の思い通りになる。そんなのダメ。だから諦める。」

「香奈ちゃん…。」

僕は嫌だと思った。たとえ叶わぬ過去でも変えられるものなら変えたいと。あきらめが悪い僕は決意を固めた。

そして、彼女をぎゅっと抱きしめながら伝えた。

「僕は諦めない。たとえそうなったと、そんな世界になってたとしても僕は君を好きでいたい。どんな結果になろうとこの世界では君は僕だけのものだ。だから諦めないよ。君を元の世界に返すまでは。だから卒業前に僕に告げて欲しい。「好き」という言葉を僕も君に伝えたい。だから諦めて欲しくない。君の声や君の笑顔は僕だけのものだから。」

「…うん。」

洋子ちゃんは私たちの様子を見ながら声をかけた。

「とりあえずみんなで行動しよう。」

「そうだな。」

私は笑顔で返事をした。

「よろしくね。」

「おう。」

僕は心の中で思った。

僕は君が元の世界に戻れるよう君の側にいることを誓う。

君が未来に消えても。 君がどんな世界の中で暮らしていても君の声や笑顔、君は全てたった一人の僕が大好きな大切な友たち。だから君は僕だけのものだよ。香奈梅…ずーっと。

私は懐かしの三班とともに行動することにした。

そして、私は元の世界に帰るために三班チームとなり、ともに学園生活を始めたのである。


【第2章】

私は感謝の気持ちを心に刻んだ。「ありがとう」と伝えることを…。

 ピカーッ

私の中に優しい光が入り混むのを感じた…。

私は休憩時間に彼に尋ねることにした。

「浩雪君に聞きたいことがあるの。」

「なに?」

「どうして私の前から消えたの。私はあなたをずっと待っていたのよ。どうして社会人になって消えたの。私たち幼なじみでしょう。どうして…。」

僕は答えた。

「たぶん未来の俺は君のためにしたんだと思う。理由は香奈ちゃんが忘れかけていたから。だから僕は君と会う日まで君を待ち続けながら幸せになると決め、結婚したんだと思う。けど過去の俺は今君と会えた…。」

「浩雪君。」

私は泣き崩れた…そして、私は謝り続けた…。

「ごめんなさい。ごめんなさい。」

僕はまた再び体が動き始めた。彼女を抱きしめた…。

 がさ―

「浩雪君!」

僕はまた繰り返した…。

「なんども言ったじゃん。謝る必要なんてないよ。僕らを引き離したのは大人たちだ。だから僕らは何も悪くない。だから君も謝る必要ないんだよ。」

彼女は安心したような顔をし、満面な笑顔で笑った…。


【授業時間】

「浩雪君。見えにくいところがあるんだけどノート見せて。」

「いいよ。」

「ありがとう。」

私は幸せでもあり後悔をしていた…心の中で苦を感じさせるよう思い続けた。

「なんであの時しなかったんだろうか。もししていたら幸せだったのに…。」


【給食の時間】

給食には食べられないものがあった。八宝菜である。

私は給食を見て思った。

「卵はおいしい。なぜだろう。」

浩雪君が来た。彼は私に尋ねた。

「香奈ちゃん。食べられないの?」

私は頷いた。

「うん。」

「食べてあげる。」

彼は私の苦手な食べものを食べてくれた。

私は嬉しさであふれた。うれしかった。すごく。

「ありがとう。」

伝えきれないくらいうれしくてうれしくてたまらず、私の鼓動が鳴り始めた。

どくん

こんな気持ち初めてだったからである。私は決意した。

この世界で彼にあの時、渡せなかった手紙を渡すと。


【移動授業」

私はため息をつきながら思い続けた。

「今日は別の教室で授業か…。」

私は授業中に手紙を書いていた。こんな内容である。


【手紙】 

「ノートを見せてくれてありがとう。私ね、浩雪君に感謝してるんだ。あの時私が、空から降ってきたとき、浩雪君が私を受け止めてくれたこと、すごくうれしかった。

ありがとう。もしあの時、浩雪君が受け止めてくれなかったら私死んでた。本当にありがとう。大好き。」

私はその手紙を隠して授業を受けた。授業後私は教室を出て、みんながいる教室に向かった。

私は気づかなかった。

まさかあの手紙を落とすなんて思ってもみなかったから。

そして、それを先生が拾うとも思ってもいなかったのだ。

そして、私は先生に呼ばれた。

「桜綾さん、職員室前に来なさい。」

私は職員室の前に行った。そして、先生にこう言われた。

「あんな手紙書いて誰に渡すのか。幼なじみに渡す気か? 恋愛より勉強が大事。絶対に桜私立高等学校に受かってもらう。姉ちゃんも行ってるんだから。分りましたね。」

しかし、私は先生に反発した。私は先生に言った。

「先生の言ってることは理解しています。けれど私にとっては恋愛や勉強は両方大事です。」

先生は驚いた。

「なんですって!」

私は決意を言った。

「私はこの手紙を渡します。」

私は自分の意思を伝え、戻った。走って。

タッタッタ…

先生から逃げ出した。私は走りながら思った。

「これでいい…。」

先生は引き留めた。

「香奈梅さん。待ちなさい.。」

声が聞こえた。

「香奈梅ちゃん。」

たくさんの声がした。そして、教室前。振り返ると野球部のみんながいた。

懐かしい…と思った。

「今帰り?」

私は頷いた。

野球部のみんなは揃って言い始めた。

「浩雪君が香奈梅のこと好きだって言ってるよ。」

僕は友たちがそろって言い始めたので防止退勢にはいった。

どうしてかと言うと自分で伝えたかったからだ。彼女に…。

「おいやめてくれ。自分で言うから。」

けど遅かった…。

彼女は答えた…。

「ありがとう。知ってるよ。」

僕は尋ねた。

「まだ自分で言ってないのにどうして君は知ってるんだ。君は僕の気持ち知らないはずだよ。」

私は答えた。

「私も同じ気持ちだったから。知ってるんだよ。私たち小さい頃から一緒だったでしょ。あの頃から…だから知ってるんだよ。」

みんなは言った。

「よかったな、浩雪。」

「…おう。」

僕と香奈梅は不器用だった。

私は探した。未来でなくなった彼を。

「あっ、そうだ。この中に昌樹君がいる。」

「俺だけど、なに? 香奈梅ちゃん。」

私は昌樹君に言った。

「今あなたに伝えることがあるから。この世界だから言っておくね。昌樹君は高校の終わりにいなくなってるの。川でおぼれて消えたから。私、親に止められてあなたの最後の顔見られなかった。ごめんね。」

涙がこぼれた。

昌樹は言った。

「俺は死んだのか。君のいる世界で…川で遊んでいて。泳げず。君に会えず。君の人生が崩れ落ち、変わったのか。」

「うん。気がつくと私の人生は止まっていた。みんな離れて、誰にも会わず思いも伝えられずあなたのお墓参りに行き、話したの。でも浩雪君にも会えず、結局連絡取れただけ。」

「…。」

僕は言葉が出なかった。香奈梅は僕に謝り始めた。

「ごめんね。約束守れず。一緒に来るって約束したのにごめんね。」

僕は思った。

ああ、君は謝ってるのに。僕は何もできなかったのか。君はいつも仲間思いで明るく、優しいし、おとなしい。そんなまじめな香奈梅だ。だから君はあの世界でずっと墓の前で泣いていたのか…何度も何度も…だから僕は決めた! 僕にできることはこれしかない…。

彼は私の手を握ってくれた。

「昌樹君…。」

「ありがとう。香奈梅。香奈梅の浩雪に対する思いは届いたよ。もし俺がいなくなったらちゃんと顔見せてね。香奈梅。二人でできなくてもいい。ちゃんと報告しろよ。プレゼントは入らないから。できれば友たちになった浩雪とともに僕に会いに来てくれるとうれしい。それがこの世界だ。」

「うん…約束する。」

俺は同情した。香奈梅と昌樹が訳わからん約束をしているからだ。

「おい、なんの約束だ。おい。俺にも教えてくれよ。」

「秘密の約束だよ。」

「はあ?」

僕らの友情は忘れられない友情になっていた…。私は浩雪君に近づいた。

「浩雪君。渡す物があるの。」

「なに?」

「本当は渡したかったけど会えなくなってるから今渡しておくね。」

私は彼に手紙を渡した。

「ありがとう。じゃあ読むよ。そこで待っていて。」

「うん」

私は彼が手紙を読み終わるのを待っていた。彼は私の手紙を読んだ。

僕は手紙を読んで思った。

「これは僕の思いだ。僕に対する思いだ。僕だけにここまで。なのに僕は君を待ち続け待てず…それでも君は探し続けてくれた。だから僕は…。」

彼は私の手を握った。

ぎゅっ

「浩雪君。」

しばらくして彼の頬から涙がこぼれた。彼は私を抱きしめた。

「浩雪君。」

「ありがとう。」

私は彼の胸の中で頷いた。その瞬間、突如風邪が吹いた。

風は勢いよく私たちのほうに激しく吹いてきた。嵐が吹くように…。

「なんなんだ。これは。」

浩雪は言った。

「わからない。けどこれはこの世界のだけを狙ってるんじゃない。香奈ちゃんを狙って何者かが現れてきてるんだ。」

「誰なんだ。あれは。」

彼らは見た。天女の姿をした巫女を。

「巫女だ。悪魔の姿をした。うわさでは聞いたことあるがあんな巫女を見たのは…初めてだ。」

巫女は私たちの前に降りてきた。

「巫女だと? あれが香奈ちゃんを狙ってるのか。」

「確証はないがおそらく。」

香奈梅は尋ねた。

「あなたは…あの時の?」

巫女は答えた。

「はい。私はあの時の巫女よ。これはあなたが望んだ世界です。素敵だと思いませんか? 楽しい世界だと思わない?」

私は否定した。

「私は望んでないわ。あなたが勝手に判断しただけの世界よ。それに私はこんな世界望んでない。ここにいる浩雪君に助けられて、仲間に助けられてすごしてわかったんです。私たちの人生は違うけどでもまたいつか会えると言うことを。たとえ好きでも、かなわない恋でも友として生きられるということを!」

「香奈梅…。」

願い主は笑っていった。

「お互い好きなのに。」

浩雪は言った。

「人の人生は変わる。それでも私たちは同じ世界で生きてる。仲間だから。」

「そうかしら。本当は未来で会ってないのですね。ただ連絡が取れただけ。では私が変えてやりましょう。」

私は言った。

「変えられてたまるもんですか。私の心は炎に包まれている。あなたに染められる心じゃない。私は自分の未来を作る。」

その時、浩雪が私の前に立った。

「浩雪君…。」

「大丈夫だ。俺がこいつらから守ってやる。香奈梅の未来のために。」

願い主は言った。

「終わりにしましょう。さあ幸せになり未来へ帰りましょう、香奈梅さん。」

敵の光が激しく香奈梅に降りかかり始めていた。

「そんなことさせない。香奈梅は俺が守る。」

「浩雪君…。」

彼は私の手を握った。その時、仲間が声をかけてくれた。

「俺たちもついてるぜ。香奈梅は俺たちみんなのものだ。独り占めするなよ。」

浩雪が仲間を振り返って言った。

「昌樹、みんな…そうだったな。みんな、ごめん。」

「いいよ。香奈梅、俺たちもお前を守るぜ。」

「みんなありがとう。」

私は思った。心の中で…。

「野球部のみんなは私のことが大好き。みんな私のもの、浩雪君だけじゃない。」

自分の心の中に強く持ち続けた。

「ひとつ聞いていい? この世界に来た私をどう思う?」

彼は言った。

「俺はどんな世界に来た香奈梅も大好きだよ。」

彼女は笑って言った。

「私も大好きだよ。」

僕は言った。

「ああやっと届いた。」

私は思った。

私の思いも。届いた。

浩雪は願い主を訪ねた。

「待てよ。お前。」

敵は振り返った。

「僕はこの世界だけの。これからもじゃない。俺は浩雪。こいつのこの世界だけの恋人だ。」

敵は悔しさと怒りの顔をした。私の前にいる浩雪は笑っていた…。

願い主は怒りに狂い、私たちに攻撃をしかけた。

私たちは笑った…手をつないだまま…例えかなわぬ想い出も…。

巫女の光は激しく、雷のように光を放ち始めた。

そして、その光は香奈梅に襲いかかり始めた。香奈梅は瀕死状態に陥った…。

「うっ、浩雪君!」

「香奈梅、俺を信じてくれ!」

私は浩雪君に抱きしめられた。彼には光を感じた。暖かな光を。

暖かい。

私は思った。

(どうして彼の胸の中は暖かいんだろう。そうだ私、浩雪君たちに助けられたんだ。だから私は生きられる。帰れる道が開けてるんだ。)

私は浩雪君に抱きついた。

…ドクン …

そして、僕の鼓動が鳴り響いた。

私は言った。

「みんなが私を守ってくれる。だから私はみんなを信じる。どんな世界でも、彼らを。ここで死ぬわけにはいかない。」

香奈梅はほうきを握りしめ、立ち上がった。

「こいつ。我の力を撥ね除け立ち上がるとは。なかなかやるわね。見える彼女の炎に燃えてる心が。まあいいわ」。

「ねえ、少し誉めてあげるわ。厚い友情と恋をね。だがそんなもの私が変えてあげるわ。」

巫女は強力な光の竜を放ち、破壊の光で香奈梅を突き飛ばした。

香奈梅は竜の能力にやられ、教室の壁にぶつけられ、動けなくなった。

僕は香奈梅の傍に駆け寄った。香奈梅はそのまま倒れこんでしまった。

「香奈梅。大丈夫か?」

「助けて…。」

「助けるよ。」

願い主は時空の力を放ちながら両手を広げ、笑いながら叫んだ。

「さあ竜よ。あの小娘にとどめを刺しなさい!」

その瞬間、竜が現れた。

「あれが時空竜。やつの一部だというのか?」

「時空竜…。」

竜はセイランに言った。

「小娘、我が力により別世界へ飛び去れ! ライト!」

竜の稲妻の光がまぶしく私に降りかかろうとしていた。

「浩雪君!」

浩雪は語った。

「覚えてるか香奈梅? 君と僕は幼なじみで幼稚園、小学校、中学も一緒なんだよ。たぶん、向こうの世界でもそんな運命だったかもしれない。君はそんなことも忘れたのか?」

私はその話を聞き、後悔した。今まで気づかず生活していたことに。

「ごめんなさい。気づかないで。でも途中で気づけてよかった。ありがとう。」

「香奈梅。俺と香奈梅は幼稚園の頃から俺たち一緒だったんだ。」

浩雪はモップを持ち、香奈梅の前に立ち、彼女に告げた。

「この世界でもそうだよ。」

香奈梅は涙を流した。

「浩雪君…。」

私は下を向き彼の名前をつぶやいた。

「この世界でも同じ学年になり、同じクラスになり、同じ班になれてうれしかった。」

浩雪は言った。

「僕は未来の僕を覚えていないが…。」

私の頰から涙がこぼれ落ちた。

「私もうれしかった。ありがとう、浩雪君。」

 バタン

香奈梅は体に染みついた光の痛みにより崩れ落ちるように倒れこんだ。

「香奈梅。大丈夫か?」

香奈梅は胸を押さえ苦しんだ。

「あーッ、痛い! まぶしい…。」

巫女は笑っていた。自分が支配した少女が命を絶とうとしているからだ。

「お前、香奈梅に何をした?」

「二度と戻れなくしたのよ、あの時代に。」

「何だと!」

「浩雪君、私はもう駄目よ…。」

「あきらめるな、香奈梅。まだ俺がいる。俺が未来に返す。だから行くな、香奈梅。」

がさ

僕は香奈梅に自分が言えない分をキスで込めた…。

「香奈梅ちゃん。」

私は精神をさまよっていた。

「ここはどこ? ああ、私死ぬんだ。ここは暖かい…。あれ? 光が見えるわ。それにみんなの声が聞こえる。

浩雪君の声も…私は…?」

ぱち

私は目を開けた。奇跡は起きた。セイランは香奈梅の意識が戻ったのをみて驚いた。

「何? 私の術が解き放たれただと! なぜだ?」

「あれ? 私…。」

「香奈梅、よかった。意識が戻って。」

「浩雪君。私どうしたの?」

「あいつのせいで未来を変えられかけて、命が取られかけてたんだ。」

「そうだったの。でも浩雪君が私を助けてくれたんだよね。ありがとう。」

「おう。」

浩雪は香奈梅を抱きかかえ、セイランの攻撃を躱した。走りながら。

「ちょこまかと! 許さないわ。そろそろ終わりよ。死になさい。終わりよ!」

セイランは死の光を発動させた。それは悪の光だった。

光は一直線に太陽と月の光を放ってきた…。

「…香奈梅。大丈夫だ。」

「うん。」

僕は香奈梅を抱きしめた。その瞬間、僕が光輝いていた。

「これはなんだ。けど今は関係ない。香奈梅を守るためなら俺は何でもするぜ。」

ピカーッ! バン!

光は僕らを飛び越え、グランドへ落下した。

  バン

巫女は驚いていた。

「何? 私の光を跳ね返したですって。なぜだ?」

浩雪は香奈梅を抱きかかえて言った。

「それは人と人が心を通じてるからだよ。」

 願い主は悔しさの表情を見せた。

 浩雪は言った。

「俺と香奈梅は未来が違っても結婚できなくてもつながってるんだ。」

「くっ、一時撤退よ。」

願い主は撤退した。しかし、彼女はこれで諦めたわけではなかった。

香奈梅は俺に触れ、言った。

「浩雪…君、ありがとう…。」

浩雪は言った。

「さあ。お前を追い出す時が来た。香奈梅を戻すために。お前が今撤退してまた現れようと、俺はこいつらとお前を倒す。行くぜ。香奈梅。野球部のメンバーたち!」

昌樹たちは言った。

「おう!」

果たして浩雪たちは願い主を追い出せるのか。



【第三章】

私がここに落ちたとき、彼は私を受け止めてくれた。

彼は未来の中学時代の時も。感謝をこめたい。「ありがとう」と。

私は心の中で思い、そして決意した。私は彼に言った。

「この世界でも。助けてくれた。それが浩雪君。だからもう一度言うね。守ってくれてありがとう。」

「香奈梅! 希望は捨てるな。」

「そうする。」

「…うん、香奈梅。俺は香奈梅のこと好きだよ。」

「知ってる。私も好き。でもかなわないけど少しお願いしてもいい?」

「何? 香奈梅。」

「この世界だけで私を好きでいてほしいの。それであいつから私を解放して私を未来に返してほしいの。浩雪君、元の世界に…。」

「香奈梅、分かった。約束する。」

私は浩雪君にもたれた。

「ありがとう。大好き。」

その様子を見ていた竜はセイランに言いました。

「この状態では彼女を時空に飛ばすのは不可能です。一度撤退され、次の策を一族と練り実行するべきかと。」

「そうね。撤退しましょう。

「くそ。貴様ら今日の所は撤退するわ。また会いましょう。ほほほ。」

そよ風をまといながら風をふかし敵は消えた…。

「香奈梅、大丈夫か?」

「うん。浩雪君。願い主は?」

「消えたよ。ごめん。これから作戦を練って倒そうと思ってたのに逃げられた。」

「いいの。ありがとう。浩雪君が助けてくれたから私、戻れるかも。」 

「香奈梅…。」

僕は彼女の笑った姿を見て思った。

(何でそんなに笑えるのにいつもおとなしいんだ。ちゃんと言えば俺を失わなくていいのに。こんなのお互いに みっともないじゃないか。)


文化祭が近づいていた。9月頃のことだった。

香奈梅は浩雪君に頼んだ。

「浩雪君。お願いがあるの。」

彼は尋ねた。

「なに?」

「文化祭の時に私の歌を聴いて、ほしいの。私、音楽部で出るから。」

「おう。」

ドクン

笑って話す。彼に私の心は揺れた。

「あっ、昌樹君たちも聞いてね。」

「おう。楽しみにしてるよ。」

「うん。これが私の最後の曲になるかもしれない。」

昌樹は尋ねた。

「どうして最後なんだ?」

「この世界の人間じゃないから。」

「香奈梅…。」

僕は最後という言葉が嫌だ。だって君を失う事になる。君の友たちとして好きでいられなくなるからだ。だから僕はー。

「嫌だ!」

僕は彼女を失うことが嫌で彼女に触れてしまった…。

浩雪君は私を抱きしめた。

「最後なんて言うなよ、香奈梅。」

「どうして私にそう言ってくれるの? 浩雪君。」

「約束したじゃん。香奈梅を現実の世界に返すと。願い主には渡さない。香奈梅には指一本も触れさせない。戻すために。絶対に…。」

「そう僕は決めた…君が消えたら君を失う。それに君の友たちでいられなくなる。俺は君を失いたくないんだ。だから最後なんて言わないでくれ」

シュー

風が吹き始めた。

「浩雪君。」

「ごめん。それに君がこの世界の香奈梅じゃないことは俺も知ってる。」

「どうして?」

浩雪は答えた。

「空から降ってきたからに決まってるだろ。誰が受け止めたんだ? 受け止めたの俺だよ。君とは初めて出会ったように見えるけど、僕らは未来で会ってると君は言った。だから最後まで守らせてくれ。」

香奈梅の心が大きく揺れた…。

「うん。」

香奈梅は尋ねた。

「一つ聞いてもいい? どうして私を守るの。こんな別世界から来た私を。」

「香奈梅…決まってるだろ。好きだから。だから今だけ好きでいさせてくれないか?」

「…私も好き。今だけ好きになってもいい。」

「今だけだ。俺もそう思ってる。」

「じゃあ約束。」

「約束。」

私は幼なじみと指切りをしたのである。たとえこれがかなわぬ恋心でも、これを現実とつなぎ、友たちになる。そして、全てが変わる事を私は信じ、その思いを心に残した…。

僕は決めたんだ。香奈梅を絶対過去から未来に返すと…。

ぎゅっ

僕たちは互いに手を握り、祈った…。

「浩雪君。」

再びそよ風が吹き始めた…。

僕は心の中は揺れる思いであふれていた。香奈梅のことで。かなわない恋心を描いていた。

その時、敵がそよ風とともに現れて、再び光の嵐を起こした…。

そして私を吹き飛ばした。

ドン

「ふふふ。そんな約束などなかったことにしてあげる。食らいなさい、我が竜の光を! ライトンソード!」

セイランは竜を剣に変え、死の技、ライトンソードという破滅の剣で香奈梅に刃を突き刺した。

ぐさぐさと刺され、私は悲鳴をあげた。

そして彼の名前を呼んだ。

「助けて、浩雪君。あー!」

またあいつが香奈梅を殺しに現れた。香奈梅が危ない。

香奈梅を守るって決めたんだ。

香奈梅が手を伸ばし、僕の名前を呼んでいる。助けなきゃ。

僕は香奈梅に手を伸ばした。

「香奈梅!」

少女は呼び続けた。香奈梅は手を伸ばした。

「浩雪君…助けて!」

僕たちは意識朦朧の香奈梅に手を伸ばした。

「香奈梅、僕の手を!」

僕らは手を伸ばそうとした…。

「届け…届け…。」

「…。」

しかし、一歩届かず…香奈梅は意識を失い、倒れこんだ。

「香奈梅!」

私は夢の中をさまよい続けていた。

「浩雪君どこにいるの。」

闇のほうから声が聞こえた。

「こっちよ、あなたの居場所は。来なさい。」

私は夢の中を走り続けていた…。

「これで香奈梅は我が思うまま現実に返る。最高よ。」

一方、浩雪は香奈梅を抱きかかえ、願い主を問い詰めた。

「お前、香奈梅に何をした?」

願い主は言った。

「私の思い通りにするためにしただけよ。彼女に。」

彼はバットを持ち言った。

「お前、よくも。香奈梅、目を開けてくれ。香奈梅!」

浩雪は目を閉じ香奈梅に触れた。次の瞬間僕の体が光った。そして、僕は眠ってしまった。

香奈梅に触れた状態で。そして、僕は香奈梅の夢の中にいた。

「ここはどこだ?」

声が聞こえた。

「浩雪君、浩雪君。」

声を辿り行くと香奈梅が闇のほうに走って行くのが見えた。俺は叫んだ。手を伸ばした。

「香奈梅、駄目だ、そっちに行っちゃ。そっちは闇だ。やつの餌食になる。戻れなくなる。香奈梅、そっちに行くな。香奈梅、戻ってきてくれ、俺の元に。香奈梅!」

私は暗闇を走り続けていた…。

その時、声が聞こえた。後ろを振り返ると光が見えた。

声はその光の先から聞こえた。

「光の方から声が聞こえる。行かなきゃ。私は光の世界に。」

私は光の世界にたどり着いた。

「あれ? ここどこ? 光の中? 浩雪君の声が聞こえる。」

私がさらに走り続けると彼がいた。

「浩雪君!」

彼は言った。

「やっと戻ってこられたな、香奈梅。」

私は尋ねた。

「どうしてここに?」

彼は言った。

「君を助けたくて。君に触れたら君の夢の中に入れた。」

私は言った。

「そうなんだ。ここはどこなの?」

彼は言った。

「ここは闇の夢。君は闇にやられ、闇の夢にいたが、俺が呼んだからここにきた。」

私は言った。

「私を助けにきたの?」

僕は言った。

「そうだよ。さあ香奈梅、帰ろう。ここにいては駄目だ。昌樹たちも待ってる。」

私は言った。

「浩雪君…ありがとう。」

私は彼の手をとった。

「さあ行こう、香奈梅。」

私は頷いた。私は彼の手を取り出口に向かい、歩いていった。

「僕はいったい!」

僕は目を開けた。

「大丈夫か浩雪。眠っていたから心配したんだ。」

僕は言った。

「ありがとう。あれはいったいなんだったんだ? 俺の力なのか。」

彼らは不思議そうに言った。

「浩雪。」

俺は昌樹に言った。

「そうだ、香奈梅。」

私は夢と現実をさまよっていた。

「私の名前を呼んでいる声だわ。早く目を開けなきゃ。」

私の鼓動が鳴り響いた。

「あれ? 何だろ、この感じ。」

浩雪は眠ってる香奈梅に言った。

「君が好きだ、好きだ。香奈梅、この世界でずっと。だから目を開けてくれ。香奈梅!」

激しく鼓動が鳴り始めた…。

「この感じ…温かい…。浩雪君のぬくもりだわ。行かなきゃ。浩雪君、今そっちに行くわ。」

タッタタ

「香奈梅!」

私は走り続けた。そして私は目を開けた。彼の胸の中で…。

「浩雪君…私どうしたの? 心配かけてごめんね。」

「香奈梅…よかった、よかった。すげ心配したんだよ。」

彼女はありがとうと言い、そして笑った…。

願い主は目を覚ました奇跡に驚いていた。

「くっ! なぜ目を開けた。信じられないわ。」

「お前、香奈梅によくもやってくれたな。」

願い主は浩雪に言った。

「くっ、やはりお前のせいね。香奈梅から離れて貰うわ。竜よ、貴様の力であの者を破壊せよ。」

「承知いたしました。」

竜は力を出し始めた。稲島の光を解き放った。

しかし、浩雪は光を跳ね返した。

「なに? 光を跳ね返しただと?」

「お断りだ。香奈梅はお前に渡さない。」

竜は驚いた。

「どうゆうことだ。…それは野球のバット?」

「俺は野球部所属だ。香奈梅を兵器として思い通りに使うなら俺が許さない。」

「このくそがき! このセイランとセイラン二号に勝てると思うなよ!」

バン

「やっとバットを跳ね返したわ。これで終わりよ。」

光は虹のように落ちていった。

願い主はバットの力により跳ね返された。

「香奈梅に触るなって言ってるだろう、この悪魔。大丈夫か香奈梅? 俺が守ってやるから。」

「…」

「浩雪君…」 

「無駄なあがきよ!」

「香奈梅、しっかり掴まってろ!」

「うん。」

浩雪君は私を抱きかかえて逃げ回った。

「ちょこまかと。くそ! 人間てどこまでしぶといのかしら。」

しかし、敵の力は生徒の力により敗れた。

「あーくそ! あと少しで私のものにできたのに。まあいいわ。次はお前を思いどおりにしてあげるわ。ほっほほ。」

願い主の巫女は笑いながら私たちの前から姿を消した。

「願い主はどうなったの、浩雪君?」

「消えたみたいだ。」

香奈梅は安心感を持ち、言った。

「じゃあ戻れるの、私? うれしい。」

「いや。あいつを倒さないと。」

「そう。まだ諦めるわけにはいかないわ。」

「ああ香奈梅。一つ頼みがある。今だけ俺の彼女になってほしい。」

香奈梅は尋ねた。

「それはいつまで?」

「香奈梅が成人になる日までだ。」

「分かった。でもどうして?」

「香奈梅を元に戻すために決まってるだろう。」

私は頷いた。

「それならいいわ。じゃあ約束だよ。じゃあ指切りしよう。」

「僕は君と指切りはしない。もっと大切なものを君にあげる。」

「…。」

彼は私に約束の口づけをしてくれた。

長い口づけが続いた。

…ドンドン、ぷるぷる…

「電話が鳴ってるよ、香奈梅。」

「うん。」

「出てみたら?」

私はうなずき携帯電話をとった。

「もしもし…。」

「桜綾さんですか?」

「はい、そうです。鈴木さんどうして?」

「桜綾さんが仕事にこないから 電話したのよ。」

「あ、鈴木さん、ご迷惑かけてすみません。」

「いいですよ。今どこにいるの?」

「今、時空の世界にいるんです。」

「時空? 見たことないよ!」

「私も、ないです。昨日変な人に飛ばされて、今、過去の世界にいるの。」

「なんだって? じゃあ、今こっちにいないってことだよね。」

「はい。鈴木さん、私もう戻れないかもしれない。鈴木さんはいつも私のピアノを聞いてくれる。でも、もう聞かせられない。」

「桜綾さん、諦めたらだめです。戻れます。みんな、待っています。」

「でもどうやったら戻れるの?」

「ピアノを弾いてください。そちらに音楽室ある?」

「あります。」

「でしたら音楽室に行ってピアノを弾いてください。」

「わかりました。」

「ではいったん切ります。また後でかけるから。」

「はい。お待ちしてます。」

  かち

「誰から?」

「仕事の上司から…。ピアノを弾いてくれと。」

「もしかしたら帰る道ができるかも。」

「なるほどね。」

「行こう、香奈梅。音楽室に。」

「うん。」

「俺たちも行くよ。」

「昌樹君、大紀君ありがとう。」

「おう。」

私たちは音楽室に行った。

携帯が鳴った…。

「はい。もしもし鈴木です。」

「鈴木さん。音楽室に着きました。」

「ではこのままの状態でピアノの上に携帯電話を置いてください。」

私は携帯を置いた。

トン

「置いたわ。」

「よし。ではピアノを弾いてください。気持ちを込めて。」

「わかりました。」

「ちょっと待て。」

「どうしたの?」

「空を見ろ。」

空を見ると、二体の竜が現れた。

「なんだ、あの竜は。二体いるぞ。」

昌樹は言った。

「でもどうやって止めるんだ?」

「一つある。香奈梅の弾いてるピアノの音色を聞かせることだ。それと俺は香奈梅のピアノを邪魔するやつは絶対に許さない。あの糸を止めるぞ。音を糸に響かせれば竜は消えるはずだ。」

「なるほど。その方法で行くぞ。」

「おう。香奈梅、糸に君の曲を響かせるんだ。」

「…うん。」

私は光の糸に響くようクラシックをたくさん弾き続けた。糸に響くように。

「届け、糸に。私の音楽、届け。」

私は仕事を辞める鈴木さんのためにピアノを弾き始めた。その音は光の糸を作っていった。まるで音楽に魔法がかかってるように。

「香奈梅の弾いてる姿、初めて見たよ。奇麗だ。まるで香奈梅が僕のために弾いてるように聞こえるよ。」

「本当だ。僕たちのために弾いてるように聞こえるぜ。」

  シュー

「聞こえる、鈴木さん? 私のピアノの旋律が。私は鈴木さんのために弾いてるの。お願い、届け。私の音楽、届け。」

「もしかしたら帰る道ができるかも。」


【現代の世界】

「ああ、聞こえる…桜綾さんの旋律が。俺のいる場所に君のピアノが聞こえてきた。俺が君のピアノを聞いたのは去年が最初だ。君の曲は俺の心を癒やす。だから早く戻ってきてくれ。君の曲をまたこの場所で聞きたい。だから戻ってこい。早く早く。」

 ピカー

私は弾きながら叫んだ。

「届け。届け。」

ピアノの音が現代の空、そして今私がいる過去の世界の空に響き渡ったのである。そして、奇跡が起きた。空に奇跡の糸が現れた。三本の光の糸が現れた。

「何? 糸に光があふれ始めてる。これはいったいどういうことなの?」

ぎゃー

「あの光はまずい。私の思い通りの小娘が崩れるわ。そんなことさせない。祈りの竜よ。あの糸ができるのを阻止しなさい。」

ぎゃー

二体の竜が光の糸から落ちていった。

「くそ。私の竜がやられただと。今日は止められたけど次はあなたを私が作った世界にとどめてやるわ。」

シュー

敵は光の糸の近くから姿を消した。

「弾いたわ。敵は消えたみたいね。」

「そうみたいだな。」

「見て。糸が長くなってる。」

「本当だ。これで帰る道がまた一つできたね、香奈梅。」

「うん。あっ、電話。もしもし。私の曲届いた?」

「届きましたよ。戻って来る日をお待ちしています。皆さんに変わりますね。」

がしゃ

みんなの声が聞こえた。

「香奈ちゃん。早く戻ってきて。」

「皆さん。必ず戻ってきます。」

「待ってますよ。」

また一つ希望が見つかった。

「はい。」

私は電話を切った。

「浩雪君。帰る道がやっとつながったよ。」

「ああ。それも香奈梅がみんなにつなげたからだよ。」

「私が?」

「おう。ただ一番は俺だ。」

「浩雪君? どうして?」

「空から降ってきたからに決まってるだろ。それに、もし俺が受け止めていなかったら香奈梅はここにいないよ。」

「そうかもしれない…。」

「それに…。」

がさ

彼は私を抱きしめた。私は嬉しくて涙が頰から溢れ落ちた。

「やっと浩雪君の声が聞こえた。糸ができたから。今では現代のあなたの声が聞こえる。」

「やっと届いた。僕の声が。僕は過去の俺を通して君に話してる。」

「知ってる。今、聞こえるから。浩雪君の声が。」

その瞬間、消えた。

「なんで消えたの?」

「わからない。けど大丈夫。俺がつなげてるから。俺の話を聞いて。」

「…浩雪君。わかった。」

「香奈梅は知らないと思うけど、俺は香奈梅のこと好きだった。なんでそう言うかというと、現代の俺自身も香奈梅が好きだったんだ。中学の卒業まで。俺たちは返事を返さず卒業したんだ。」

「そうだったんだ。でもありがとう、話してくれて。でもどうして現代の浩雪君の思いがわかるの?」

「感じるんだ。彼の思いが過去の俺に繋がってるから。香奈梅も感じてみてよ。」

「うん。さっきは感じたけど今は感じないよ。」

「大丈夫。俺が手助けする。」

「うん。でもどうやって?」

彼は私に手を差し出した。

「俺の手を握って目を閉じてみて。」

「うん。」

私は彼の言うとおり目を閉じ、手を握った。その瞬間、私は彼の心を通した。

ピカー

「この波長の音は現代の彼の波長だわ。聞こえる…心の音が。」

彼の声が聞こえた。

「香奈梅なのか?」

「あなたは現代の浩雪君。」

「そうだよ。やっと再びつながった。俺の声。」

「うん。浩雪君、聞いて。私、あの時、浩雪君のこと好きだった。」

「俺も好きだったよ、ずっと。君と同じクラスになってから。」

「浩雪君。いつから?」

「君が部活で、僕が練習してるの見てるのは知ってる。あと君が僕にチョコレートをくれたことも。全部知ってる。君の全てだ。僕にとって君は大切なひとだったから。」

「ありがとう。」

「おう。」

「私たち不器用のまま卒業したんだね。」

「ああ。けど僕はまだ君に届けてない。俺の気持ちを全部。あの頃の気持ちを。だから戻ってきてくれ。ちゃんと君に伝えたいんだ。」

「浩雪君。私もあの時の気持ちを浩雪君に伝えたい。全部。私の気持ちを。」

俺と香奈梅の思いは一つになっていた。

「私も話したいこといっぱいある。だから待ってて。必ず戻るから。」

「俺も待ってるから。君が戻るまで、ずっと待ってるから。」

「うん。」

私は目を開けた。

「どう。現代の僕の声、聞こえた?」

「うん、聞こえた。だから私、諦めない。現代に帰るまで。」

「ああ。」

僕は君を必ず元の世界に帰す。たとえ君がこの時代から消えても。

最後のバレンタインが来た。三年生の卒業前の二月十四日が来た。

「みんなおはよう。これ友チョコ。」

「ありがとう。」

女子たちは喜んだ…。

私は心の中で思った。

この空気を絶対変えて戻るんだ。

「浩雪君、ちょっと渡す物があるの。」

「いいよ。ここでいいかな?」

「誰もいないところがいい。」

「じゃあ廊下はどう?」

「いいよ。」

僕たちは教室を出た。

「浩雪、どこにいくんだろ。香奈梅と。」

「ついて行こうぜ。」

「いく必要ないと思う。」

「なんで?」

「俺たちが介入したら香奈梅ちゃんが元の世界に戻れないだろ。」

「ああ、そうだな。」

「今はあいつに任せておこうぜ。浩雪に。」

「ああ。あいつなら必ず成功する。」

僕たちは浩雪と香奈梅を見守ることにした。

「香奈梅、ここなら誰もいないよ。話って何?」

「これ。今日バレンタインでしょ。浩雪君に。」

それはクッキーだった。

「ありがとう。香奈梅、君が大好きだ。」

がさ

彼は私を抱きしめた。

「…浩雪君。私も浩雪君のことが好き、大好き。」

「やった。互いに言えたね、香奈梅。」

「うん。でも今度は元に戻ってからだね。」

「ああ。その時は君の友たちとして君を迎えに行く。」

「うん。じゃあ約束。」

「うん」

僕たちはこの時代で最後の指切りをした。

「一つ目印をつけておきたいんだ。」

「いいよ。どんな目印?」

「メアド交換だ。万が一、君があいつに奪われても連絡取り合いながら戻る道筋を作るために。」

「わかった。」

「じゃあ交換ね。」

私は彼とメアドを交換して戻れる目印を作った。

「これで大丈夫だ。」

「うん。」

その時、私の体が光った…。

「なに?」

ピカー

「きゃー!」

「香奈梅、お前を必ず見つけ出してやる。どんな世界でも君を助け、元の世界に返す。だから待ってろ!」

「うん、待ってる。きゃー!」

「香奈梅!」

果たして香奈梅は元の世界に戻れるのであろうか…?


私は中学の時、空間から遙か彼方にある高校時代の時空に飛ばされた。

バン

「ここはどこ?」

それは、先ほどいた世界と違い、雲は浮いていた。天気は晴れていて、学校の形も違い、運動場も広く自然に囲まれた世界であった。

「なに? この世界、さっきと違う。」

「あなたはこの世界で彼を見つけ結婚するの。」

声が聞こえた…その声は以前の願い主と違う願い主の声であった。

果たして香奈梅は元の世界に戻れるのであろうか。


【第三章】

私は別世界に落ちた。あたりを見渡すと、浩雪の姿が何処にも見当たらない。ただ、唯一聞こえたのが時空から聞こえる願い主の声だった。けれど先ほど戦った願い主の声とは違う声だった。

私は尋ねた。

「誰?」

「私はあなたが最初に見た願い主よ。」

「違う、声が。願い主はあなたじゃないわ。」

「私よ。あなたが見た私はこんな顔姿よね。」

シュー

一瞬のうちに願い主は、天女の姿に変わった。羽衣を纏った巫女の姿に。

「そんな! じゃあさっきの姿は?」

願い主はまた元の姿に戻ったのである。

「これは本来の姿よ。私は時空を移動することにより自分を別の姿に変えることにできる。さらに私はあなたを支配することにより、さらに世界を自由に操れるの。そしてあなたは私の力により現代の彼の彼女となる。」

「そんなこと許させないわ。私はあなたの思い通りの人にはならないわ。」

タッタタ

「どこまで逃げても無駄なのに。行きなさい、光の竜ども。」

ぎゃー!

光の竜が私を襲ってきた。

ぎゃー!

「絶対帰るんだから、現代に。みんなの所へ。帰るんだからお願い。お兄ちゃん、鈴木さん、浩雪君、現代にいるなら私をそっちに導いて。お願い。みんな助けて。助けて、お兄ちゃん。帰りたいよ。助けて!」

ピカー



【現代の世界】

ブブブー

「よし。もうすぐ最後の祭りだぜ。目指せ優勝。」

声が聞こえた…。

シュー

「助けてお兄ちゃん。助けて!」

「この声は香奈梅ちゃん!」

「どこにいるんだ、香奈梅ちゃん。返事してくれよ。」

「お兄ちゃん、助けて!」

シュー

光が見えた。

「なんだ?あの光は。」

「あれは、糸だ!」

「糸の方から香奈梅の声が聞こえるぜ。待ってろ、お兄ちゃんが今助けに行くから。」

ブゥー

僕は車を走らせた。

電話が鳴った…。

プルプル

「はい。もしもし、友也です。」

「友也君、今どこにいるの。今日はお祭りの踊りの練習でしょう?」

「ごめん。今日の踊りはキャンセルしたんだ。もう連絡してる。」

「どうして?」

「妹の声がしたから。今、糸に向かって走らせてるんだ。」

「糸?」

「外見てくれよ。」

紗綾は外を見た。空に怪しい糸が浮いてるのを見たのである。

「見えたよ、友君。そこに香奈梅ちゃんがいるのよね。」

「間違いないぜ。僕はそこに向けて走り、香奈梅ちゃんを迎えに行くぜ。」

「わかった。気をつけてね。」

「おう。」

ピカー

俺は車を走らせた。光に向かって。その時、俺は気づいていなかった。まさか自分がこの事件に巻き込まれるなんて。

ブッブ。シュー

「ご主人様。緊急です。」

「緊急だと。どういうことなの?」

「現代から謎の青年が車を走らせてこっちに来るようです。」

「今はどのあたり?」

「糸の上を走っています。三本目に行かれたらアウトかと。」

「何者なのかしら。」

「家族かもしれません。」

「だとすると危険だわ。処罰しましょう。」

「はい。」

ぎゃー

「つぶしてあげるわ。」

ブッブシュー

声がした。糸の先から。

「お兄ちゃん、助けて!」

「また香奈梅の声だ。今助けに行くぜ。待ってろ!」

ピカー

「させないわ。」

願い主は友也に闇の光を解き放った。闇が友也に襲いかかってきた。

「なんだこの光は。燃えすぎだぞ。」

光は強く照らし始めた。

「死になさい。」

「この化け物を乗り切って見せるぜ。行けー!」

ブッブ

「しぶといわね。ならこういう方法を使うわ。食らいなさい。天女の光、エンジェルライト!」

天使の光が友也に襲いかかった。友也を天使の光が包み込んだ。

「くそ!」

バン、シュー

「わー!」

僕は落ちた。光の糸から。目を開けると違う世界にいた。

「ここは何処だ。」

気がつくと俺は別の世界に立っていた。俺は車の中を見た。あるのは携帯と弁当のカラと中身が入っている弁当箱と仕事の鞄が置いてある。

「なんか変だ。昼勤が終わってるから、から弁があるのはいいけど。なぜ中身がある弁当がある?」

俺は嫌な感じがした。この世界に。そして、空には光の糸がある。

俺は香奈梅を呼んでみた。

「香奈梅! 兄ちゃんが助けにきたぞ。返事をしてくれ!」

しかし、妹の声はしない。

「なんでしないんだ。そうか、わけがわからないやつに飛ばされ、届かなくされたんだ。くそ!」

ぎゃー

「竜だと。俺はこんなところで死ぬわけには行かないんだ。妹を助けるために。まだ死ぬ訳にはいかないんだ。」


桜綾香奈梅十三歳( 現代では二十六歳の社会人である。)が、謎の主( 願い主)により時を超えてしまう。過去の幼なじみ( 現代の幼なじみにより救出される。)が、時空に再び飛ばされた。彼女を助ける者は彼女の元にたどり着けるのであろうか。この世界はいつ終わるのか? 香奈梅は永遠に飛ばされたままなのであろうか。

【時空の香奈梅】

人はみんな、心の中に能力を持っている。そう思ったことはありませんか。

私も信じたことはありません。けれどこの世界に住む人たちは優れた才能を心の中に封印しているのです。私を含め。

私たち人間は口には出せない夢や希望など、たくさん心の中に眠っている物があります。

それは力、つまりそれは魔法です。一種の生まれ持った能力と言えます。その能力は自分自身が生まれ持った能力とも言えるのです。ですがその能力を利用できる者がいます。

それが願い主です。願い主はこの世界を見通し、人を自分の道具のように操る邪悪な悪魔なのです。彼女は人の心を操り、過去に飛ばすことができるのです。それは突然現われる敵なのです。

人は彼女をこう言う。魔女だと。だがそんな彼女を食い止める勇気を持つたった一人の少女がいました。過去に飛ばされても諦めず、自分の意思を強く持ち、仲間を率いて、戦う少女が。

これはそんな彼女の勇気と感動と愛の戦いの物語なのです。


【第四章  青龍のちから】

俺は妹を助けるために車を走らせ続けていた。

「待っていろ、香奈梅。今助けに行くからな。」

「どうしますか?」

雷を放ちなさい。車とヤツが撃たれるまで。

「了解しました。」

敵は稲妻を発動させた。激しい光を放ち始めた。雷は車に向かって電流を流し始めた。

「くそ。ここまでか。くそったれ! せっかく妹を助けると約束したのに。こんなところで終わるのかよ。ごめんもう限界だ。紗綾ごめんよ。香奈梅を助けることができなかったんだ。」

俺の頬には涙がこぼれた。そして俺は再び意識を失った。願い主は意識を失った俺の所へ近づいた。願い主の遣いは言った。

「気を失ってるみたいです。どういたします?」

願い主は意識を失っている俺に触れ、言った。

「利用価値がありそうだから。使いましょう。」

俺は思った。

「ああ。俺、こいつらに捕まるんだ。もういいや…。」

鼓動が鳴り始めた。そして、声が聞こえた。

「ここで死んでもいいのですか?」

俺は声の主に尋ねた。

「誰だ。この声は? 誰だ、教えてくれ。」

声の主は答えた。

「俺は青龍竜だ。青龍竜だ。」

俺は言った。

「青龍竜だと? じゃあなぜ俺だけに聞こえるんだ。おまえの声が?」

青龍は答えた。

「私はあなたの心を通して、あなたに話してるのです。」

俺は言った。

「なるほど。俺はどうすればいい?」

青龍は言った。

「今から私の指示に従ってください。」

俺は言った。

「わかった。俺は何をすればいい?」

青龍は言った。

「意識がない状態で走り続けてください。」

俺は言った。

「わかった。やってみる。」

俺は意識を回復させ、車を動かそうとした。

願い主は驚いた。

「こいつ、意識がないのに車を動かしてる!」

遣いは言った。

「まだヤツにそんな力があるのか!」

俺は車のエンジンを鳴らしながら。車を走らせ続けていた。

「香奈梅、待ってろ。絶対助けてやるから。」

俺は意識を保ちながら、敵の攻撃を受けながらも車を走らせ続けていた。

「あの青年、あんなに攻撃を受けてるのにまだ死なないわけ? しぶといわね。」

その瞬間、友也の体が光った…。

俺の前に光の鍵が降ってきた。

「力の杖の鍵…。」

青龍は言った。

「そうだ。さあ友也よ。その鍵で封印された扉を開くがよい。」

俺は言った。

「でも呪文がわからない。」

青龍は言った。

「では、私の口に合わせて。あなただけの呪文を言ってください。そして今こそ扉を開くがよい。」

俺は言った。

「わかった。やってみる。」

俺は目を閉じ、呪文を唱えた。竜とともに。

 …


【呪文】

「爾の断りに命じ、その封印のあるべき姿に移せよ。爾の断りに命じ、その封印のあるべき姿に移せよ。そして、その姿に変え、我が青龍のみなもととなりたまえ。そして、我がみなもとになれ。青龍!」

光が解き放たれた。太陽の輝きのように俺の体が光った…。

俺は目を開けて、自分の姿を見た。青き光の衣をまとっていた。

「これが俺の姿。俺の中に、君が今眠って力を与えているのか。俺を強くするために。君が…俺の中で…。」

青龍は頷いた。

「もう一度問う。力が欲しいか。」

俺は答えた。

「俺は欲しい、力が。」

青龍は剣を差し出した。

「ではこの刀をあげよう。そしてその刀で奴らを撃つのです。」

俺は車を止め、降りた。手を見ると俺は青く光る剣を握っていた。

「これが妹を助けるための剣…。」

青龍はうなずき言った。

「そうです。さあ。友也よ、我が力を受け取るがよい。」

握った剣が光っていた。俺は尋ねた。

「なんだ。これは。俺、この剣の使い方知らない。やり方を。」

青龍は言った。

「考えるのです。あなたはそれができる方です。さあ友也よ。あなただけの呪文を唱えるのです。妹を救うための呪文を、その剣で。」

俺は言った。

「ああ。俺ならできる。」

俺は念じながら術を唱えた。そして、俺は青く光る剣を握り、目を閉じた。

「考えろ。妹を救うために敵の世界をこじ開けるには。そうだ、答えが出たぜ。行くぜ、青龍!」

青龍は頷いた。

「はい。」

願い主は術を解き放った。

「地獄に落とすわよ。食らいなさい。地獄術!」

地獄の術が友也に攻撃をしてきた。しかし、友也は諦めなかった。

友也は反撃を仕掛けた。

「青き竜の剣よ、我が問いに答えたまえ。邪悪な主の世界を払いたまえ。ブルーレイト!」

ピカー

友也の放った剣の力は地獄術を無効化した。そして、地面が揺れた。

「なんだこれは!」

その姿は蒼く、青龍の姿をした自分の金色と混ざりあった。

「これはなんだ?」

青龍は言った。

「それは、我が力です。」

俺は言った。

「力…。」

そして、俺は青龍の力が宿っている剣を握っていた。   

「これは?」

私の青龍の力が宿っています。そう、あなたは先ほど剣の力を解き放ったのです。それがあなたの力です。」

俺は尋ねた。

「俺の力?。じゃあ、さっきの剣の姿は仮なのか?」

「はい。これは我が青龍の力の杖。」

俺は頷いた。願い主は俺の姿を見て言った。

「貴様が反撃しようとしても無駄よ。なんど立ち上がろうとしてもね。ここで死になさい。ソード!」

願い主は闇術を解き放った。しかし、俺は諦めが悪かった。

「死んでたまるか。食らえ、ブルーライト!」

青い光の風により、万人は消え、世界は崩れた。

「香奈梅に届け、兄ちゃんの思いが。行くぜ。氷期。ブルー!」

空に氷の光が放たれた。そして、声が聞こえた。たった一瞬の声が。

「お兄ちゃん!」

俺は妹の声を聞き、さらに叫んだ。

「香奈梅の声だ。香奈梅!」

香奈梅のいる場所に光が届いた。彼女がいる場所に。

「見えたぜ、香奈梅! ブルーソード!」

剣から青き光が空間に流れついた。そして、地面に光が降っていた。地震のような揺れが始まった。

「なんなのこれは?」

その瞬間、世界が揺れた。

「崩れていく」

氷期は言った。

「ご主人様。このままではやつの餌食になってしまいます。」

彼の力は凄まじい力だった。氷期の力を超える力だったからだ。

願い主は言った。

「だったら反撃よ。行け、地獄の門よ。友也を再び地獄に落とせ。ダークドアーズダンザー!」

レベル2の地獄の門が現れた。万人も。私は揺れた地面に立ち入った。次の瞬間、門が崩れた。

「こんな揺れ、たいしたことないわ。絶対切り抜けてみせる。私は絶対元の世界に行く。帰ったら君と友たちになるって約束した。だから絶対。私、諦めないんだから。」

私は光に向かって手を伸ばしながら走り続けた。

「門を崩すとはやるわね。けれど行かせはしない。。あの光には闇ソード。」

闇が襲いかかってきた。私は闇を跳ね返しながら言った。糸に向かって。

「浩雪君との約束したんだから。だから絶対、諦めないんだから。」

願い主は強力な魔法で攻撃してきた。そして、私は闇により撃たれた。

「こんなところで止まるわけには…いかない。」

私はその場に倒れ込み、意識を失った…。

「お兄ちゃん…」


【別世界】

妹の姿が見えた。俺は手を伸ばした。

「香奈梅!」


【高校の世界】

その瞬間、声が聞こえた…別世界に飛ばされた兄の声が。

私は意識を取り戻し、再び兄を呼んだ。

「お兄ちゃんだ。お兄ちゃん、私はここにいるよ。」

別世界にいる兄は私の声に気づいた。

「香奈梅!」

しかし、奇跡は消えかけた。私の世界に届いた兄の声が消えた。

兄の声が聞こえなくなった。

「どうして、お兄ちゃん。私の声が聞こえないの、お兄ちゃん…。」

手を伸ばし名前を呼びかけた。何度も何度も。

その瞬間、闇の光が現れた。闇の光は再び私を飛ばした。

「きゃー、助けて、お兄ちゃん!」

私はこの世界から消えた。

僕は思った。

この世界には闇と光が感じる。あなたは感じたことはあるでしょうか。

今この世界は狂っている。まるで邪悪な魔物に支配されてる世界だ。

僕のいた世界はこんなはずじゃなかった。僕は何度も何度も問いかけた。自分自身に。


【高校の世界】

「あっ、やっと起きたか。香奈ちゃん?」

周りを見ると友たちが私を囲んでいた。私は尋ねた。

「ここはどこ?」

彼女たちは答えた。

「教室だよ。」

私は彼女たちに言った。

「あなたたち。千枝ちゃんたちね。」

彼女たちは頷いた。

私は尋ねた。

「ここはどこの世界だろう。まるでさっきとは違う世界だわ。兄の声も聞こえない。」

彼女たちは言った。

「香奈ちゃん、もしかして違う世界から来たの?」

私は答えた。

「そうだよ。実は私、未来から来たの。」

千枝ちゃんは言った。

「どうやって?」

私は言った。

「時空を操ってるやつに飛ばされたの。」

彼女たちは頷いた。そして私に言った。

「何かできることがあるかな、私たちに。」

私は言った。

「力を借りたい。私はこの世界にいてはいけないの。」

千枝ちゃんは言った。

「わかった。」

その時、闇が漂い始めた。私は何かが起こった、そう感じた。

一方、兄は願い主との戦いで苦戦していた。

願い主は友也を食い止めるために電の光を発動させた。

「届かせてたまるか。ルイージ!」

闇の光を、その光の穴に向かって雷が友也の力とぶつかった。

「香奈梅。諦めてたまるか。香奈梅に届け。」

俺は呼び続けた…。

何度も何度も。

「香奈梅…どこにいるんだ。返事をしてくれ。香奈梅!」

世界は半分に裂かれ、私たちは夢の時空に閉じ込められてる。そんな世界だ。

一方、私は時空の別世界で作戦を立てようとしていた。

「私たち、何すればいい?」

私は言った。

「今、この世界は闇だらけ。私はその闇を解放し、この時空世界から出ないといけない。。その手伝いをしてほしい。」

千枝ちゃんは言った。

「理由はわかるけど、それをどう信じて一緒に戦えばいいのかわからない。」

私は言った。

「方法は一つある。みんなで円陣を組むことよ。仲間を信じるにはその方法しかない。」

みんなは頷いた。

「みんなの手を私の手に添えて。そして、目を閉じ、私とともに呪文を唱えて。」

彼女たちは言った。

「呪文がわからない。」

私は言った。

「大丈夫。私は呪文を知ってるから。それに合わせればいい。」

彼女たちは私に尋ねた。

「どうして知っているの?」

その時、光の空が闇の空に変化した。雨空でもない不気味な雲に変わっていた。クラスメイトたちは空を見上げた。

「あの雲なに? 見たことない。でも今日の気象は晴れのはずよ。天気予報でもそう言っていたはず…。」

千枝ちゃんは言った。

「じゃあ、あれは何なんだろう…。」

雲はどんどん広がり、そして、雲から闇が降ってきた…。

私は空を見上げ言った。

「あれは、闇の時空…。」

「闇の時空?」

彼女たちは言った。

「こんなの初めて見たよ。でもはっきりと見えない。」

私は言った。

「あなたたちには見えないわ。遙か彼方の世界から来た私にしか見えないの。でもこの世界のあなたたちの力を借りれば。きっと元の世界に戻れる道が築かれるかもしれない。そう私は信じてる、みんなを。だってそうでしょ。あなたたちは私の最高の大親友だったから。私がいた現代の世界でも。だから力を貸して欲しい。」

千枝は言った。

「香奈ちゃん…分かった。私たち、香奈ちゃんを信じる。だって仲間だから。けれど信じるには何をすれば?」

私は首に掛けている鍵を外し、彼女たちに見せた。

「これは何?」

私は言った。

「鍵よ。この封印を解けば龍が現れる。その龍が力を貸してくれる。一緒に合わせれば大丈夫。私を信じて…。」

彼女は言った。

「わかった。」

私たちは目を閉じた。そして、呪文を祈った。私たちは精の鍵の封印を解くため、光の呪文の第一条を唱えた。


【呪文】

光の精のりランよ。我が主たちの命に応え、汝の声に応えよ。」

その瞬間、声が聞こえた。

「私をお呼びになったのはあなたたちですか?」

私たちは頷いた。

精は言った。

「私にどのような用事ですか?」

私は言った。

「兄を助けたい。そして私はこの世界から出なければいけない。その力になっていただきたい。」

精は言った。

「わかりました。この光の姿では戦えませんので力を貸していただけないでしょうか。」

私たちは言った。

「はい。」

精は言った。

「では一緒に唱えてください。みんなで唱えましょう。」

私たちは頷いた。そして、私たちは呪文を唱えた…。

光の呪文を…。


【呪文】

「光の精よ。私たちの声に答えよ。あるべき精に移り変わり、その姿を現したまえ。りラン。」

その瞬間、光とともに杖が空から降ってきた。

「香奈ちゃん。これは?」

私は言った。

「精の鍵よ。さあ、まだ終わっていない。もう一度祈りの理を。一緒に。私たちの平和のために。」

彼女たちは頷いた。

「うん。」

再び私たちは呪文を唱えた。

【呪文】

「花の精よ。いまこそ姿を現したまえ。そして花とともに闇を浄化したまえ。ランゲリラン。」

花の精が現れた。

「はじめましてリランです。状況は伺っていますが念のため見せさせていただきます。どこですか?」

私は指さした。その指先の方向を精霊は見た。

なんと闇がこちらの方に近づいていた。その闇は黒い稲妻を鳴らしながら黒い風を吹かし猛スピードで私たちに襲いかかろうとしていた。

私はリランに尋ねた。

「大丈夫?」

リランは言った。

「問題なしです。呪文を唱え防ぎます。精霊よ、我らの問いに答えたまえ。」

その瞬間、リランは花の力を解き放った。闇を無効化させることに成功した。しかし、闇は再び現れた。

「主、きりがありません。もう一つ力を発揮しないと。杖をお貸し下さい。」

私は杖を差し出した。

リランは杖をそばに置き、呪文を唱えた。

「我が名はリラン。答えよ。古き姿からあるべき姿に変わりたまえ。ライナ。」

杖は光に追われ、そして、精霊の杖に変化した。

「何? この杖、初めて見た。こんな輝きの杖、見たことがない。まるで、魔法少女が持つ杖みたい。」

リランは言った。

「そうかもしれない。でもこれは夢ではない。今、現実となっている。けれどいつかは消える。」

私はリランに言った。

「それだけは理解してる。さあ、今こそ私たちの力を出し、願い主の闇を浄化しよう。」

千枝たちはかけ声を言った。

「おお!」

私は手を上げ言った。

「さあ行くわよ。第三呪文発動!」

私たちはライナ精の杖を握った。そして第三の呪文を解き放った。

その瞬間、杖が光黄金剣に変わった。そして精霊龍リランは、精霊の姿に変わった。

その姿は、太陽と月の輝きを放ち、羽は黄色く、流れ星のような光を放ち、体は黄色く光るドレスをまとい、黒き杖を手に抱え、まるで闇と光の中間の精の姿をしていた。

「これが私たちの祈りでできた杖、そしてその姿が精霊リランの真の姿なの? すごい。」

リランは言った。

「この姿で会うのは初めてでしたね。初めまして、主たち。私はあなた方の願いにより封印から目覚めた精、フラワーライナと申します。私は光の花と闇の花の中間力を持つ精霊です。前は仮の姿でお会いしましたが。」

「中間の主…。」

「はい。私は二つ名前があります。そして私はあなた方の願いどおり、私に何でもお命じください。それにより私は動くことができます。」

「わかりました。一つ命じたいことがあります。食い止めて欲しいの、あの闇を。」

ライナが辺りを見渡すと、見渡したその方向に闇が攻めてきていた。

「あれがその闇ですね?」

「うん。でもこの先どうやって元の世界に帰れるかわからない。」

「大丈夫です。私が援助します。ここにいるあなたの仲間たちとともに。だから私を信じてください。」

「フラワーありがとう」

「…では最後にお尋ねします。この先どうなるかわからないので。あなたの名前を教えてください。」

「私は桜鞍香奈梅。」

「では香奈梅様。私の後ろについてください。そしてみんな様、私についてください。私とともに祈りの言葉を唱えてください。あの邪悪な力を私とともに食い止めましょう。」

私たちは頷いた。

「…わかった。」

ライナは言った。

「では行きます。」


【精霊の祈り】

「太陽よ。あの邪悪な力を月に換え我が問いに答えよ。そして、新月となり我が精に答え、闇を払いたまえ。精の真珠発動せよ。神の導きより門を開きたまえ。」

私たちはその理の祈りの呪文を精霊フラワーとともに唱えた。

あの力を…。

その瞬間、光が解き放たれた。そして私たちは彼女とともに再び術を唱えた。

「さあ始めましょう。光の門よ、我が問いに答え、あの迫り寄る闇の門を打ち破りなさい。セイントスリート!」

門から光の女神の力が放たれた。

「あの光は危ない。ご主人様。光は我が竜の力を浄化してしまいます。」

願い主は氷期に言った。

「なんですって? だったらこちらも反撃しましょう。さあ始めましょう。闇の力を…。」

氷期は言った。

「ではあの呪文を発動させます。呪文発動。第三魔法発動!」

地面が地震のように揺れた。


【闇の呪文】

「闇の精の呪文よ。我が竜の力となり、あの門の力を封印し、あの少女たちを閉じ込め、香奈梅をこの力で消したまえ。レイントライトー!」

闇は光の女神とぶつかった…。

「私たちに危害が及ぶかもしれません。私に考えがあります。幼なじみの声を目を閉じ感じてください。そして、その声をたどり、見つけ出し、彼の元へ行くのです。」

私はライナに言った。

「でもお兄ちゃんが私を助けて…。」

ライナは言った。

「兄は不可能です。別の世界で瀕死状態です。生きてはいますが…。」

「本当? 兄の姿は移すことができるの?」

「はい。ですが兄を助けるにはあなたがここを出るしかありません。まずあなたに兄の声を感じてもらい、兄がいる世界を私が移すことです。そうすれば同時に助けることができます。」

私は言った。

「じゃあ、お願い!」

ライナはうなずき術を唱えた。

「ライトオンライズフラワー!」

その瞬間、光の門が開かれた。再び呪文をライナは唱えた。

「その新たなる時空を移したまえ。姿を我が光の命により、ファント!」

透視術は、空や地面に放たれた。そして、その瞬間、別世界が空に映し出された。

「これが別世界にいる兄の姿です。」

私が見た別世界にいる兄は、意識がもうろうしながらも何度も何度も私の名前を呼んでいた。

「お兄ちゃん…。」


【別世界】

「香奈梅…ごめん。俺、香奈梅を助けることができなかった。ごめんよ。妹なのに助けることができなかった。ごめんよ、香奈梅…。」


【時空】

「お兄ちゃん…私を助けるために。」

 ライナは言った。

「兄はあなたを助けるために竜を目覚めさせたのです。心に念じたから…。」

 私は言った。

「心に…。」

ライナは言った。

「そうです。」

千枝たちは言った。

「私たちにもできるの? 友也に届けることが。」

ライナは言った。

「できます。なので私を信じてください。私の透視は見切ることが可能です。私の透視の力で…。」

私は巫女に言った。

「ではお願いします。」

巫女は笑って言った。

「わかりました。では透視術を唱えます。」

フラワーの精は透視術を唱え始めた。


【呪文】

「精の光よ。少女の答えに応え、親族の姿を移したまえ。ヒエナールライト!」

ピカー

花の精は透視に成功した。その透視の光は境界の世界へと光を照らした。

「今です、主!」

私は決意した。そして巫女に言った。

「フラワーさん。私、決めた。私を助けようとして戦ってくれたお兄ちゃんのためにも私、がんばる。私、幼なじみの声を探すわ。」

ライナは笑って言った。

「よく決断しましたね。時間がありません。始めてください。」

香奈梅は手を握りしめ言った。

「…でも少し怖いです。」

彼女たちは言った。

「香奈ちゃん、私たちがいるから。」

周りを見渡すと友だちがたくさんいた。一人じゃないと思った。

「千枝ちゃん、栞ちゃん、美樹ちゃん、綾ちゃん…ありがとう。私、がんばるよ」

私はみんなと手を握り、こう言った…。

「絶対大丈夫だよ。私が助けるから、みんなと自分と家族を…。」

目を閉じた…。

「待っててね、お兄ちゃん。必ず助けるから。」


【別世界】

「香奈梅…。」

私は目を閉じ、遙か彼方の先までの声を探し始めた。聞こえないはずの声を。私は叫んだ。見えない世界にいる彼に。

「お兄ちゃん、私よ。香奈梅だよ。私はここにいるよ。返事をして。」

僕は夢を見た。

「ここは何処だ?」

辺りを見渡すと妹が立っていた。

「香奈梅…。」

妹は俺に話しかけてくれた。

「お兄ちゃん、すぐ助けに行くから待ってて。でもそれにはお兄ちゃんの力がいるの。」

俺は言った。

「無理だ。戦ったけどだめだった。でも声が聞こえた。青龍の。だから竜を目覚めさせることができた。戦うこともできた。けれど力が奴より及ばなかっただけ。だから行くことができなかった。ごめん。」

夢の中の妹は笑ったまま何も言わなかった。

「…。」

夢の中に暖かな光が差し込んだ。そしてその光は現実とつなげる夢の光だった。

その光は俺を照らした。妹は手を広げ立っていた。妹は俺に言った。笑って…。

ピカー

「いいよ、必ず行くから。待ってて。」

俺は夢の中で妹の側に行って言った。

「香奈ちゃん…ありがとう。」

妹は笑っていた。微笑んだまま妹の姿は消えた。

私は目を開けた。兄の声は消えた。ライナは言った。

「道を作って下さい。そして幼なじみの彼を探し、兄を見つけるのです。」

私は言った。

「やってみる。」

私は語りかけた。透視術を使いながら。その透視術は時空乃彼方へと広がり、光を解き放った。私は探した。

「大好きな浩雪君。どこにいるの? 私の声が聞こえる? 浩雪君…。」

その時、奇跡が起きた。声がした。聞こえないはずの声が。

「香奈梅? そこにいるのか?」

一瞬だが聞こえた。彼の声も。けれど兄の声は消えたままだ。

しかし、彼女は諦めなかった。彼女は願った。みんなと自分と家族を…。

私は目を閉じ、遙か彼方の先まで声を探し始めた。聞こえないはずの声を。

私は叫んだ。見えない世界にいる彼に。そして消えたはずの兄の声を。

「お兄ちゃん、私よ。香奈梅だよ。私はここにいるよ。ここにいる。ここにいるよ。生きてるよ。私の声、聞こえないの? 浩雪君、お願い。どっちでもいいから私の声に答えて。神様…。」

奇跡が起きた。私は耳を澄ませた…人の歩いてくる音が聞こえた…はっと私は目を開けた。

「どうしました?」

私はライナに言った。

「足跡が聞こえたんです。」

ライナは言った。

「主。あなたの願いが届いたのです。もう少しです。声をもう一度たどってください。」

私は頷いた。

私は再び目を閉じ、声を探し続けた。

ライナは微笑みながら言った。

「…それでこそあなたです。」

千枝たちは言った。

「香奈ちゃん。私たちもついてるわ。」

香奈梅は言った。

「うん。みんな、私がんばるよ。では行きます。」

私は再び耳を澄ませながら目を閉じた。その瞬間、再び彼の声が透視の光とともに流れてきた。

「香奈梅、そこにいるのか?」

私は答えた。

「いるよ。あなたは誰?」

彼は言った。

「浩雪だよ。無事なのか?」

私は答えた。

「無事だよ。浩雪君は無事なの?」

彼は言った。

「ああ。すぐ行く。君を必ず帰す。元の世界に。」

香奈梅は言った。

「うん、待ってる。」

彼の声は消えた。私は再び目を開けた。

「どうしましたか?」

 ライナが言った。

「彼の声が聞こえたの。」

「それは本当ですか。聞こえるということは奇跡が起きたのですよ。あなたが起こしたのです。」

私は言った。

「本当です。ちゃんと聞こえたの。それって、私の力なんですか?」

「そうです。ではもう一度呼びかけてください。彼があなたを迎えに来てくれます。」

「でもそんな力、浩雪君にはないわ。」

「彼には力があります。」

同級生たちは言った。

「香奈ちゃんの幼なじみに力があるってどういうこと?」

ライナは言った。

「そうです。彼女を助けたことにより彼は愛の力を持っています。ただ時空の世界にいる彼しか使えないのです。」

私は言った。

「愛の力が浩雪君に…。」

ライナは言った。

「はい。彼ならあなたをきっと返してくれます。この時空の世界から。たとえ彼が過去の時空の少年でもね。助けられる時間もありますが問題ありません。」

私は言った。

「フラワーありがとう。私、信じるわ。彼を。そして帰る道を彼と作ります。不安で不安で仕方なかったの。もう帰れないのと思うと怖くてたまらなかった!」

ライナは言った。

「よく言えましたね。ではお別れです。さあ行きなさい。帰るための世界に。彼は来ています。反対側の世界に。」私のろに鏡が現れた。

「香奈梅…。」

私は涙を流しながら言った。

「浩雪君…会いたかった…。」

鏡が光った。声は答えた。

「俺もだよ、香奈梅。」

ライナは言った。

「最後の通しです。道を作るから目を閉じてください。はっきり彼の声が聞こえます。耳を澄ませ聞いて下さい。後ろの透し鏡に届くように言うのです。」

「はい。」

私は目を閉じ語り始めた。

「浩雪君。聞こえる? …私の声。」

彼は言った。

「ああ聞こえるよ。君の声が…。」

香奈梅は言った。

「私も聞こえる。けれどあなたの声しか聞こえない。」

彼は言った。

「俺は声だけではなく君の姿も見える。」

香奈梅は言った。

「私には見えない。浩雪君、どこにいるの?」

彼は答えた。

「君の後ろだよ。目を開けて後ろを見てごらん。」

私は聞こえる彼の声をたどりつつ目を開け、後ろを振り返ってみた。

その瞬間、透視の鏡が光った。その鏡の中に彼が映し出されていた。

「浩雪君…。」

彼は言った。

「やっと見えた…君の姿が。」

香奈梅は尋ねた。

「どうして?」

彼は言った。

「君を探すため、僕は敵の時空をさまよいっていたんだ。もちろん、友だちも君を探していたよ。僕は友だちと合流して君を再び探していたら君の声が聞こえたから、声をたどりつつ仲間と歩いていたらここにたどり着いた。」

彼女は笑って言った。

「浩雪君…ありがとう。今はちゃんと見えるよ。」

僕の顔から涙がこぼれ落ちた。

「よかった…。」

香奈梅は涙を流しながら言った。

「でも怖かった! 飛ばされたとき、もう会えないんじゃないかって思うと。」

私が鏡に手を伸ばした瞬間、鏡が強い光を放った。それは太陽の光のように輝いていた。

「鏡が光ってる…香奈梅!」

浩雪君の声が鏡に響き渡った。

今、彼の声が聞こえる。

「目の前に見えるわ、姿が。浩雪君。」

手を伸ばしながら叫んだ。

彼は言った。

「香奈梅、一緒に帰ろう。」

「うん」

彼は手を伸ばした。鏡が光った…。

「あれは光の鏡。彼の力が鏡に宿って現れたのね。」

ライナは言った。

「はい。」

香奈梅は言った。

「みんな、ありがとう。」

ライナは言った。

「礼を言うのは早いですよ。私もあなたについて行きます。私はあなたが友だちとともに産みだした力です。今後もあなたの力となり、ついて行きます。」

主は言った。

「フラワーありがとう。今後もよろしく。」

ライナは言った。

「…さあ主よ。参ろう、彼のいる世界に。」

「はい。みんなありがとう。さよなら。」

彼女たちは言った。

「香奈ちゃん、気をつけてね。」

私は笑顔で頷いて鏡の前にライナと立った。

ライナは言った。

「香奈梅さん。私は今からあなたと融合し力となります。体内に入らせていただだきます。そしてあなたに防壁のバリアを張りたいと思いますので許可をお願いしてもいいですか。」

「いいわ。許可します。」

「ではさせていただきます。その間あなたは手を伸ばし彼の手をつかんでください。そうすれば通り抜けることができます。私が体内に入り結界を張りサポートします。」

「了解。では行きます。」

ライナが頷いた次の瞬間、鏡の中から声がした。闇の声が。

「ふふふ、行かせないわ。」

私たちは言った。鏡を見つめながら。

「この声は…あの声は彼と私を引き離した願い主の声だ。」

ライナは言った。

「主、答えてはいけません。私の声だけに答えてください。」

私は言った。

「わかった。」

ライナは私の中に入った。ライナは体内から語りかけた。

「主よ。光り輝く鏡の向こう側に手を伸ばし、彼の手をつかんでください。」

私が鏡に手を当てた次の瞬間、鏡が光り私はすり抜けた。そして私は彼の手をつかんだ。すり抜けた瞬間、精霊の言葉を信じ、糸をつかんだ。糸をつかみ向こう側に手を伸ばしたその瞬間、私は糸を通り抜けた。手を伸ばしながら…。


【向こう側の世界】

俺には香奈梅が通り抜ける瞬間が見えた。

「香奈梅の姿が見える。香奈梅、僕の手をつかんでくれ。香奈梅!」

俺は鏡の向こう側に手を伸ばした。


【反対側の空間】

「浩雪君…今行く。浩雪君。」

私は彼の名前を呼び、手を伸ばしながら鏡の中を走り続けた。

そして、私たちは互いの手を取ることができ、再びあの時代と同じ形で出会おうとした。その瞬間、鏡が闇の鏡に変化した。

「香奈梅。俺の手を離すな。」

香奈梅は言った。

「うん。また会えるね。」

俺は言った。

「ああ、この手を離すな。」

香奈梅は言った。

「わかっている。でもこれは何?」

彼は闇を見て言った。

「わからない。でも必ずお前を助ける。だから姿が見えるまで手を離すなよ、香奈梅。」

私は頷いた。

「…うん。」

彼の姿が光とともに見えた。

「見えたわ。来てくれてありがとう。」

彼は言った。

「ああ。だけど油断はするな。来るぞ。」

私は頷いた。次の瞬間 願い主は姿を現し言った。

「行かせない…。」

願い主は闇を解き放った。その瞬間、鏡の中の時空間が揺れた。

「大丈夫か、香奈梅。」

私は言った。

「うん。何が起こってるの?」

彼は言った

「奴が香奈梅をまた時空に飛ばそうとしてるんだ。そんなことをしたら香奈梅が二度と戻れなくなるんだよ。俺はそんなこと、絶対にさせない。」

私は言った。

「そんな…私は嫌よ。過去は過去よ。未来は未来よ。」

彼は言った。

「そうだな。俺はあの時、お前が来た瞬間、やつが現れて言ったんだよ。お前を思い通りにすると。」

私は泣きながら言った。

「そんなことさせない。願い主、私はこの世界では生きないわ。あなたの思い通りにはならない。お願い、私たちの邪魔をしないで。」

願い主は言った。

「お前は私の物よ。行かせてたまるものですか。闇の鏡よ、彼女を攻撃しなさい。」

鏡の闇は私を包み込んだ。光の映し鏡が闇に染まった。

「ううっ、苦しい。息ができない。助けて、浩雪君!」

私は彼の手を握りながら意識を失いかけた。

「香奈梅、死ぬな。俺のために生きてくれ。ここでお前が死ぬのは見たくない。諦めないでくれ。香奈梅!」

俺は叫びながら香奈梅を片手で抱きしめた。彼女の手を握りながら…。

その瞬間、うっすらと消えかけた闇に覆われた香奈梅の姿が見えた。俺の胸の中にいる香奈梅の姿が。

「見える。香奈梅がうっすらと。香奈梅!」

俺はもう片方の手で抱きしめていた手を離し、香奈梅のもう片方の手をつかんだ。そして、香奈梅を俺の方へ引き寄せることに成功した。

俺はぼろぼろな香奈梅を抱きかかえた。

「浩雪君…。」

香奈梅の意識が戻った。願い主は驚いた。

「なぜだ。だがまだ手はある。この世界から消えてしまいなさい!」

しかし、その言葉には耳を傾けなかった。僕たちは。

「…うん。私、生きてる。ちゃんとあなたの元にたどり着いてる。」

俺は抱きしめながら言った。

「ああ。ちゃんといるよ。香奈梅は俺の腕の中に。」

少女の瞳から涙がこぼれ落ちた。彼女はうれしそうに泣いていた。

「よかった…。」

私は彼の頬に手を伸ばし、触れた。

「香奈梅…。」

少女は言った。

「やっと浩雪君の顔に触れることができた。空から落ちた時以来…うれしい。」

俺は少女に触れて言った。

「香奈梅…俺もだ。おかえり。」

光が僕らを照らした。

「まぶしい…怖いわ、闇が…。」

夕日が僕らを照らしながら、そして太陽が消え闇になった瞬間、香奈梅は目を閉じた。

「香奈梅。どうしたんだ。まさか…。」

私は視野が少し狭くなった…敵の力を浴びて…。

俺はライトで少し香奈梅を照らした。

「何があった?」

彼女は言った。

「私、敵の力を受けて目の視力を失ったみたい。」

俺は言った。

「香奈梅…俺の姿は見えるか?」

少女は笑って言った。

「…見えるよ。」

彼は言った。

「…よかった。」

私は彼に抱きしめられた。

「浩雪君…ありがとう。でも大丈夫。私、人は見えるから。死なないよ。だから…。」

彼は私を抱きしめながら言った。

「そういう問題じゃない。香奈梅は次にあいつの力を浴びたらこの世界から消えるんだ。」

香奈梅は涙を流しながら言った。

「じゃあ私、死んでしまうってことでしょう。そんなの嫌よ。」

俺は香奈梅の手を握りしめた。言葉が出ず、ただ彼女の名前を言うしかなかったからだ。

「香奈梅…。」

香奈梅は俺に言った。

「もう終わったのね。死なないなんて嘘よね。ずっと帰れるって思った…でももう無理。私の人生ももう…。」

黒い涙が溢れ落ちた瞬間、闇の泉に変化した。

「諦めちゃだめだ。香奈梅! 香奈梅…。」

私は彼に願いの口づけをされた。

「浩雪君…。」

彼は言った。

「簡単に諦めるなよ香奈梅。俺が守ってやるって言ったろ。それに必ずお前を戻すと約束したろ。そんなことも忘れたのか。香奈梅!」

彼女は言った。

「浩雪君…ごめん。私忘れかけてた。あなたの言葉を信じるわ。ごめんね。」

彼は言った。

「…香奈梅。前に言ったろ。俺は君を帰すまでこの世界だけの何だ?」

香奈梅は言った。

「私の恋人でしょ。」

彼は笑って言った。

「正解だ。いいか香奈梅。ここで自ら消えてしまったらあいつの思い通りになってしまう。それだけはするな。」

香奈梅は言った。

「ありがとう、浩雪君。たとえ未来が違っても私たち友だちよね。」

彼は答えた。

「ああ。俺たちは友だちだ。その未来になるには君を帰す。元の世界に。」

彼女は言った。

「…私、浩雪君、大紀君、昌紀君を信じて前に進むわ。ここで諦めるわけにはいかない。」

彼は言った。

「俺もだ。お前を帰すまで一緒に歩む。だからそれまで諦めないで前に進む。」

香奈梅は笑って言った

「私たち似たもの同士だね。それに考えも同じ。」

彼は笑って言った。

「そうだな。香奈梅、行こう。この先に俺の友だちがいる。俺の友だちが道を探してくれてる。そこまで一緒に行くように大紀に頼まれてるんだ。」

私は彼に尋ねた。

「でもその後はどうするの。もし、道の糸が見つかったら。浩雪君はどうなるの?」

彼は答えた。

「その世界まで君を連れて行く。そこでお別れだ。」

香奈梅は言った。

「そんなの嫌よ。浩雪君がいなきゃ私帰れない。」

私はしゃがみ込み、泣き崩れた。

「香奈梅…。」

僕は彼女を抱きしめた…。

「浩雪君…。」

彼は言った。

「僕の話を聞いてくれ。今から君に伝えるから。もし飛ばされたときのことを。」

私は言った。

「わかった。」

彼は私に指示を伝えてくれた。

「ありがとう。一つ目は俺のことを忘れないこと。二つ目は成人式に出ること。そして、ブロックごとに分れてるから中学校名を探し、俺を見つけるんだ。」

私は尋ねた。

「見つけたらどうすればいい?」

彼は言った。

「まず、その世界の俺に会いたかったと言う。たぶん向こうの俺には今ここで君と話している俺との記憶があるから。覚えてるはずだ、未来の俺の記憶も。だから事情を話せ。そして、連絡を取りながら、いいな。それからもし、願い主、セイランが現れたら、君の中に眠っている巫女の力と仲間の力、その世界の俺の力を借りて、戦うんだ。それでも駄目なら身内に頼むこと。」

香奈梅は言った。

「でもお兄ちゃんはもう助けることができないわ。別世界で意識を失いかけて生きてるのよ。見て。フラワーお願い。力を貸して。」

ライナは頷いた。

「…はい。」

私はフラワーの力を借り、透し術を発動させた。彼に…兄の姿を見せた。

「香奈梅…待ってろ。」

私は言った。

「お兄ちゃんはいつも助けを求めている。私の名前を呼びながら。どうやって助けを求めるの?」

彼は言った。

「香奈梅…大丈夫だ。まだ姉ちゃんがいる。きっと助けてくれるはずだ。友也のことを姉に伝えるんだ。そうすればきっと助けてくれるはずだ。」

彼女は言った。

「…うん。じゃあ言うね。」

彼はうなずき、香奈梅に言った。

「僕をその世界で探して欲しい。その世界では君は大学生になってるはずだ。その生活は長いかもしれない。けどそこで仲間を作り助けてくれる。そして、もう一つはやつと戦うことだ。おそらく俺には力があるから、向こうの世界でも。」

香奈梅は言った。

「わかった。必ずがんばる、向こうの力も借りて。でも浩雪君の力はすごいね。」

彼は言った。

「まあな。けど別にたいした力じゃない。戦う力でもない、君を守る力だよ。」

香奈梅は尋ねた。

「私を守る力…?」

彼は言った。

「ああ。じゃあ行くぜ。目を閉じてくれ。そろそろ反撃しないと奴に食われる。」

私は頷いた。

「…分かった。」

私は目を閉じた。

「じゃあ行くぜ。愛の呪文発動!」

僕は呪文を唱えた…。


【呪文】

「僕の愛する愛しき友の言葉に命じ、我が友の身内をこの我が主に答え、移したまえ。ミラーズホワイト!」

その瞬間、地面がピンク色に染まり、太陽の光が照らされた瞬間、鏡の扉が開かれた。

「目を開けていいよ。」

私が目を開けて見ると、鏡の扉があった。

「浩雪君。これは何?」

彼は言った。

「これは鏡の扉だ。俺が作った。その扉を開けてみろ。そこには香奈梅の大切な物が入ってる。君の大切な物が見えるはずだ。」

香奈梅は扉を見ながら言った。

「私の大切な物?」

彼は言った。

「大事な物でもあるし、大事な人がいるはずだよ、その扉の向こうに。」

私は言った。

「もしかしてお姉ちゃんがいるの?」

彼は言った。

「ああ。彼女は今何をやっているか知っているか?」

香奈梅は言った。

「知らない。」

彼は言った。

「じゃあ見せてあげる、俺の力で。」

香奈梅は言った。

「浩雪君。魔法持っているの?」

彼は言った。

「魔法じゃないよ。守る力だ。」

彼は扉を開け呪文を唱えた。次の瞬間、扉の中が光り、私の姉の姿を映してくれた。それは姉が、私と兄が戻ってくるのを待っている姿だった。

私は気づいた。姉をあの扉の中で呼べば道が築けることに。

私は彼に言った。

「私、行くわ、あの世界に。そこで、お姉ちゃんを呼べばいいんだよね。そして、声がしたらその声をたどり、仲間と浩雪君とともに別世界に行けばいいんでしょ?」

彼は言った。

「ああ。けれど助かる道はその世界が長い可能性がある。それは帰る道にもなるから。行こう、香奈梅。俺とともに。俺の手を離すなよ。大紀たちのところへ行くまで。何が起こるかわからないから。」

私は頷いた。

「…うん。」

私たちは扉の中に入り歩き続けた。仲間の元まで。その時、闇の竜が現れた。再び、願い主のセイランだ。

「行かせん。ライトスノー!」

願い主の竜、セイランは闇の雪を発動させた。

「浩雪君…。」

彼は言った。

「大丈夫だ。バリアグレイ!」

結界を張って攻撃を防いだ。だがセイランの力は強かった。

「くそ!」

ライナは言った。

「お任せください、香奈梅様。結果術を。」

私はうなずき術を唱えた。


【呪文】

「いにしえの神の光よ、我が命に応え汝の二人を守りたまえ。エルジーバリア!」

その瞬間、彼が放った結界と私が放った結界がセイランの攻撃を無効化した。

「ありがとう、香奈梅。よし、その先にもう一つの扉がある。行くぞ。」

私はうなずき。彼とともにその先の扉に向かって歩いた。そしてついに扉にたどり着いた。

「これが扉?」

彼は言った。

「ああ。時間が無い。開けるぞ。」

私は言った。

「うん、開けます。」

私が扉を開けた瞬間、その先が光った。そしてある人が映った。

「香奈ちゃん…友君、何処にいるの。友君が香奈ちゃんを連れて帰るって言ったのに戻ってこない。香奈ちゃん、友君」

私は巫女に言った。

「お姉ちゃん…ずっと私たちを探して待っててくれている。ごめん。私、誰も助けてくれないと思っていた。ごめん。」

僕は姉の姿を見つめる彼女に言った。

「香奈梅。やっと気づいたんだね?」

彼女は言った。

「浩雪君、ごめん。私、やっと気づいた。私、一人で戦っているんじゃないって。友だちや家族や。それに浩雪君がいるから帰る場所があることに。」

彼は言った。

「ああ、そうだ。だから僕らは歩かないといけない。行くぞ、香奈梅。」

私は頷いた。

再び願い主がやってきた。

「見事に我らの術を無効化したわね。だが無効化できても我らの術には及ばぬ。」

彼は少女の前に立ち、言った。手を広げ、バットを片手に持ち。

「それはどうかな。俺はお前の相手をする余裕がない。彼女を元の世界に戻さないといけないからな。」

願い主は笑って言った。

「なるほど。でも行かせないわ。あなたは私の支配によりここで死ぬのよ。食らいなさい、我が秘伝を。スノースノー!」

セイランは闇の雪を闇の氷に変え、香奈梅の上に落とそうとした。

「させない! 氷と雪を燃やし、融かせ。ファイアリーライト!」

光の火が放たれた。光の竜は氷の上に落下した。

「香奈梅! 伏せろ!」

私がしゃがみ伏せた瞬間、氷は激しく水になりながら融けていった。まるで雨水のように…。

「香奈梅。大丈夫か?」

香奈梅は言った。

「うん。何したの?」

彼は言った。

「氷を融かしたんだ。これには特殊な力がある。闇の力を浄化し、そして火で浄化するという感じだ。」

彼女は驚いた。

「すごい。でもありがとう。」

彼は深刻な顔で言った。

「お礼を言うのは早いぜ。言うんなら奴を突破してから言ってくれ。」

香奈梅は言った。

「了解。私も戦うわ。現代では社会人だし強いわよ。」

彼は言った。

「香奈梅、下がってろ。確かに未来では君は社会人で強い。けど今の自分の状態を見ろ。俺と同じぐらいじゃないか。それにその体でさっき別の時空世界で戦ったから体力が尽きてる。だから今は休んでろ、香奈梅。」

香奈梅は頷いた。だが香奈梅の笑顔はいつもと違っていた。戦おうとする目をしていた。

「…うん。」

彼は私の手を握り、バットを構え、術を唱えた。

「行くぜ。龍聖の炎!」

龍聖の炎が発動した。瞬間、炎を纏った剣が手から出てきた。

「どんな技でも私には効かないわ。そのバットと剣でどうやって戦う気? 無駄よ。」

願い主と騎士は私たちの目の前に舞い降りた。

「願い主…浩雪君、危ない!」

彼は言った。

「大丈夫だ。俺に捉まってろ。」

彼女は頷いた。

「…うん。」

騎士はセイランに命じた。

「我が主よ。奴を殺し支配せよ、再び。」

願い主は羽の魔力を発動させた。

「アイスライト!」

セイランは氷の羽で攻撃をしてきた。彼は羽の攻撃をよけた。

「なかなかやるわね。」

しかし、彼の体力は限界に近づいていた。

「はあはあ…」

騎士は言った。

「ここからは一発勝負で戦うしかありません。それはダークウォーティです。闇の水は少し効果があります。」

セイランは笑って言った。

「いい提案ね。それでいきましょう。ただし、それにはあなたの協力がいります。手伝っていただきますね。」

騎士は言った。

「わかりました。サポートするわ。」

セイランは尋ねた。

「ちなみにその力は凍らすこともできるの?」

騎士は答えた。

「はい。ではいきますか。」

セイランは頷いた。騎士は青き剣を抜き、青年に言った。

「浩雪といったな。貴様の攻撃は我には通じない。食らえ。ダークスノーソード!」

騎士が僕に襲いかかってきた。

「速い。このままじゃやられる。ここで死ぬわけにはいかないんだ。ライトソード!」

彼は光の剣で騎士の攻撃を無効化した。

騎士は言った。

「まだだ。セイラン様。今です!」

セイランは剣を抜き、浩雪に攻撃してきた。

「了解だ。母様のために我は天明を解き放つ。食らいなさい。死ね、浩雪。ライトオブジェクトコール!」

光の天明術が僕に襲いかかった。そしてその光は騎士の剣に融合した。そして騎士は僕に襲いかかった。

「食らえ。これで終わりだ。天明剣の攻撃で死ね。青年よ、ここで食らえ。ダークオブジェクトライトーソード!」

僕は反撃した。

「食らえ、ライトオブ天界ブルーソード!」

バットと剣の光を融合させ、騎士の攻撃を無効化しようとした。

しかし、僕の力は押されかけた。

「まずい!」

私は危ないと思い、結界を解き放った。

「危ない! ラースエンジェルライトバリア!」

私の結界で奴らの攻撃を防ぐことができた。

「助かったよ、香奈梅。ありがとう。」

香奈梅は言った。

「うん。でもちょっとピンチだわ。奴ら、さっきより強くなってる。連繫攻撃してるんだわ。なんとかあれを防がないとここを突破できないかも。」

彼は言った。

「ああ。それにはこいつを倒してからだね。」

香奈梅は言った。

「そうだね。」

願い主は私らを見て作戦を練り始めた。

「私の氷を融かしただと? あの者がなぜ? 連繫で我らの動きを止めてるとは。それに奴はなぜいるのだ? この空間に…。」

騎士は言った。

「ご主人様。あの者には覚えがあります。以前、あの少女と引き離したことがあります。ですが、その時はまだ無能力だったはずです。」

セイランは言った。

「確かに。でもなぜあんな力を? なぜ?」

騎士は言った。

「おそらく意思です。意思があれば可能です。やつは力を発揮できるはずです。」

セイランは言った。

「彼にどういう意思があるわけ?」

騎士は言った。

「彼女を守るという強い意思です。愛する彼女を守るために持つ力です。すなわち愛の力です。ライトスイートという光の結晶の力です。強い意志がないと保ちません。おそらく彼にはあったんじゃないかと。」

セイランは言った。

「なるほど。倒す方法は?」

騎士は言った。

「ありません。しかし、可能であれば一つだけあります。彼は別世界には入れないのが弱点なので。」

セイランは言った。

「なるほど。それでいきましょう。」

声がした。

「待ちなさい。それでは不可能よ!」

セイランたちが振り返るとセイ二アが立っていた。

「セイ二ア。どうしてここへ?」

セイ二アは言った。

「父に命じられたの。サポートするようにとね。」

セイランは言った。

「助かるわ。それでどんな方法なの?」

「小娘を支配するのよ。そうすれば彼に攻撃する隙ができるわ。また彼を時空に送り込むことができる。」

セイランは言った。

「わかりました。セイ二ア、あなたに任せます。」

セイ二アは言った。

「承知しました。騎士よ、セイランのサポートを頼みます。」

騎士は頷いた。

「さあ反撃しましょう。」

セイ二アは術を唱えた。闇術を。


【術】

「いにしえの闇よ。少女に闇の時空を与え支配せよ。汝はセイ二ア。我が問いに答え、闇を解き放て。ダークワークルジャーズ!」

セイ二アは私に闇を解き放った。

一方、私と彼は作戦を新たに考えた。

「やつを倒す方法はあるの?」

彼は言った。

「一つだけある。別世界の声の主を倒すことだ。それがバリアだ。この光で奴の闇の力を跳ね返す特殊な効果がある。そうすれば…。」

香奈梅は言った。

「すっごいね。浩雪君…私…。」

彼女がつぶやいた瞬間、倒れた。

「香奈梅! しっかりしろ! おい!」

声が聞こえた。

「その子は目を開けないわよ。」

振り返ると皇女が立っていた。

「どういうことだ?」

セイ二アは言った。

「私が支配して凍らせたの。」

浩雪は言った。

「なに! お前、何をした?」

セイ二アは言った。

「心を凍らせただけよ。さあ、次はお前よ!」

浩雪は言った。

「お前!」

僕は剣を抜こうとした。

「待って…。」

僕が振り返ると香奈梅が立っていた。体を押さえながら。

「殺しちゃだめ。大丈夫…私は凍ってなんかいないから。」

僕は香奈梅に触れて言った。

「まだ戦えるのか。香奈梅?」

彼女は頷いた。

セイ二アは香奈梅を見て言った。

「私の氷を融かすとは。なぜだ?」

香奈梅は言った。

「私には効かない。あなたの氷は時空間でできてる。たとえ凍らせても私はすぐ復活する。なぜなら、あなたたちは姉妹で私を倒さないと私を殺せないから。」

セイ二アが怒りと悲しみにあふれたその時、姉のセイランが彼女の肩に触れた。

「お姉様…私…。」

姉は言った。

「私に任せなさい。」

セイ二アは頷いた。そして彼女は僕らに刃を向け、言った。

「よくも我が妹に傷をつけてくれたわね。この姉がここで成敗してやる。学生どもよ。ここで死になさい。」

セイランは時空術の水の魔術を発動させた。


【呪文】

「我がセイランよ。我が問いに答え、少女を水で覆い凍りづけにすることを許可する。汝の命に応え、いにしえの力を発動せよ。ウォーティスロー!」

地面が揺れ、地面から闇の水が現れた。

そして、猛接近して、私たちのほうに近づいてきた。

「くる!」

少女は彼の手を握り、尋ねた。

「どうするの。浩雪君?」

彼は言った。

「これを使うんだ。ジャストーライト!」

浩雪は剣を地面に突き、剣の特殊な術を解き放った。空全体、そして地上、周りなど全てに光が放たれた。その光は水の力を浄化していった。

セイにアは言った、空を見上げて。

「お前、まだ戦えるっていうの? なんてしぶといのかしら。だったらこちらも邪魔させるわけにはいかないわ。彼女を取り返すまでは。サーズクローを発動させるわ。いいよねお姉様?」

セイランは妹に触れ笑って言った。

「はい。我が妹よ、二人でやりましょう。」

妹は言った。

「はい。二人なら…。」

騎士は言った。

「私もサポートします。」

姉妹は笑って言った。

「ありがとう。ではやりましょう。」

騎士は頷いた。

姉妹は騎士とともに融合術を解き放った。

「癒合術発動! 我が主よ、我が身とその身を真の姿となり、奴を滅ぼせ。ユーザソード!」

稲妻が飛んできた。稲妻はセイ二アたちの力を跳ね返した。

「てめえの力は終わりだ。俺が全て跳ね返した。貴様に勝ち目はない!」

セイランは言った。

「あがくのも今のうちよ。後ろを見てごらん。」

僕が後ろを振り返ると、香奈梅が倒れていた。

「香奈梅、起きろ! どうしたんだ!」

セイ二アは言った。

「我が力の影響を受けたの。確かに貴様の力は我らの力を無効化したが、その衝撃の影響を受けたのよ。でも死んではいないから安心して。もうじき我が一族の願い通りの幸せを手に入れるのだから。」

彼は香奈梅を抱きかかえ立ち上がり、セイ二アに言った。

「許さない。俺はこいつを見捨てて行かない、絶対にな!」

その目は守る意志を願い、戦おうとしている目だった。

セイランは言った。

「確かにあなたの力は私の力をほとんど跳ね返した。でも残念だけど、私の能力は無の能力。前にも言ったけど。私はこの騎士と一つなのよ。彼は竜。今の姿は仮よ。私たち姉妹はね、彼と一体化したもの。それが我が

一族の技。だから私たち姉妹を倒すには彼女の意思じゃなきゃ倒せない。私はそういう願い主。無の闇を操る守護者。レインとセイ二ア・セイラン。闇と光と願いを操る。悪魔の精霊よ。」

浩雪は追い詰められた。

僕は嘆き叫んだ。泣きながら。香奈梅を抱きかかえて。

「くっ…俺はどうすればいいんだ? 香奈梅…香奈梅…俺は…。」

私は凍り付き眠っていた…。

…あれ? 私どうしたんだろ。また氷になったの? …そうか…私、突然倒れたんだ、衝撃で。でもどうして、浩雪君が泣いてるの? そうか私が倒れたから。それじゃ、早く起きなきゃ。でも体が動かない。どうすればいいの…。

僕は諦めが悪かった。

「香奈梅…そうだ。契約術だ!」

僕は立ち上がった。彼女を抱きかかえて。

「お前、セイニアとセイランっていったな。よく聞け。俺はお前らを許さない!」

僕は光る剣を出した。一方、私は夢の中で巫女の声を聞いた。それは、あの世界で契約した巫女の声だった。

「起きて下さい。」

私は夢の中でライナを見た。

「フラワー、生きていたの?」

彼女は言った。

「生きているのは当然です。私はあなたが仲間と呼び出した精霊です。それにあなたの力であります。」

私は言った。

「そうだったのね。ありがとう。」

フラワーはうなずき言った。

「さあ反撃しましょう。そしてここから目覚め、帰る時空に行くのです。」

私は言った。

「はい。」

その瞬間、扉が開いた。私はその扉をくぐり、歩き始めた瞬間、光の底に落ちた、その瞬間、願い主の体は光り、ついに闇の竜レインと合体した。

「さあ始めましょう、青年よ。」

浩雪は言った。

「…こんなところで死んでたまるか。香奈梅、俺はこの空間から君を連れ出す。そして、守る。目が覚めなくてもいい。俺は君の力を借りたい。力を貸してくれ!」

眠っている香奈梅の上に僕の涙が落ちた瞬間、香奈梅の体が光った…。

「なんだ? これが俺と香奈梅の契約術の力なのか?」

眠っている私は光に覆われていた。夢の世界の光を走っていた。奇跡が起きた。

…この光は、浩雪君の私に対する思いの力…応えないと…でもどうやって答えればいい…?

ライナは言った。

「私をお使いください。」

私はうなずき、術を唱えた。夢の中で。


【術】

「いにしえの光よ。この邪悪な闇の夢空間を解き放ちたまえ。フラワーツバキ!」

その瞬間、闇の夢空間が消えた。そして眠っている私の氷が半分融けた。さらには僕の体も光った。

「これが俺たちの力か。よし行くぜ。香奈梅!」

セイランは驚いた。

「何ですか。あれは? 私の力が跳ね返されただと? いったいどういうことだ?」

騎士は言った。

「わかりません。ですが少し様子を見ましょう。今、彼とあの小娘に触れるのは危険です。」

セイランは言った。

「わかったわ、セイ二ア。彼に接近しないように。危険だから。」

セイ二アは頷いた。夢の中では私は光の空間に立っていた。

「フラワー、ありがとう。」

フラワーは言った。

「礼を言うのは早いです。彼が呼んでいます。これは、彼の力です。あなたは彼と無意識に契約し契約術を解き放ったのです。」

私は言った。

「だとしてもどう答えたらいいのかわからない。」

フラワーは言った。

「手を伸ばし、唱えてください。あなたはもう私を自動で使えます。たとえ、眠っていても。」

私は言った。

「私が?」

フラワーは頷いた。

「そうね。やってみる。いくよ、フラワー。」

深い眠りの中、私は夢の中で呪文を唱えた。


【呪文】

「我が守護者のフラワーよ。契約時に基づき我が問いに答えよ。光の精のフラワー。私と浩雪君に力を貸して。フラワースイートライト。」

凍り付いた私の体が光った。再び。僕はその異変に気づいた。

「香奈梅…。」

声がした。香奈梅の声だ。

「浩雪君…あなたに力を貸すわ。」

僕は君を呼んだ。

「香奈梅…。」

彼女は言った。

「私はまだ眠っているけど、あなたと戦える。一緒に倒そう。そうすれば私はあなたの力で目を開けられる。さあ、私の手を取って。そして私に触れて。そうすれば封印が解ける。」

僕は言った。

「…わかった。」

僕が凍りついた香奈梅に触れた瞬間、再び声がした。

「ありがとう…。」

僕は彼女の名前を呼んだ。

「香奈梅…。」

セイランは言った。

「泣くのも今のうちよ。真の術を唱えても無意味。我らの能力には勝てないわ。ここで死になさい。いくわよ。くらえ、雷神青龍ソード。これが真の闇の力よ。消えなさい、青年と少女よ。」

闇の雷は勢いよく攻めてきた。

「こんなもんで俺たちが死ぬわけないだろう。食らえ、花の光の契約術発動。ライトファイアリーフラワー!」

花と光が交わった力と闇の雷がぶつかった瞬間、敵の力は跳ね返された。

真の姿になった願い主は、癒合解除を攻撃の影響でしてしまった。

「レイン!」

セイランはレインに手を伸ばし叫んだ。

「ご主人様!」

願い主は竜とともに吹き飛ばされた。

「くっ、次は容赦なく、お前を二度と彼女を助けられなくしてやる。我々がね。覚悟して待っていなさい。おほほほ…。」

笑いながら願い主は消えていった。

「終わったのか?」

その時、奇跡が起きた。再び香奈梅の声がした。

「そうよ。やっと二人きりね。なれたね。さあ私を起こして。」

「香奈梅……香奈梅…。」

僕は香奈梅に触れた。その時、香奈梅に放たれた闇が割れた。香奈梅の体が光り始めた。そして、香奈梅は目を開けた。

「…浩雪君…会いたかった…。」

  彼女は僕を抱きしめた。温かかった。僕も嬉しさのあまりに彼女を抱きしめた。

「香奈梅…。」

私は言った。

「浩雪君どうしたの。急に抱きしめるなんて。私は平気だよ。」

僕は言った。

「違うよ。君は倒れたんだ。香奈梅は死んだんだよ。俺の胸の中で氷ついた状態で。」

私は彼に触れて言った。

「浩雪君…。」

彼は泣いていた。彼は涙を流しながら言った。

「俺はお前を失うかと思うとすごく怖かったんだ。だから俺は涙を流しながら言葉に出した。」

彼女は笑って言った。

「ありがとう、浩雪君。浩雪君のおかげで私、救われた気がする。私を夢から救ってくれてありがとう。あなたの声が夢の中まで聞こえたわ。だから私、救われた。浩雪君の能力で。私のためにその力を持ったのでしょう。ありがとう。」

僕は謝った。

「香奈梅…でも、ごめん。」

「いいよ。もうどこにも行くな、俺の前から。最後まで。それだけは約束してくれ。」

彼女はうなずき、僕に言った。

「…うん。じゃあ約束の印をしよう。何がいい?」

僕は考えた。僕はその答えを言った。

「目印に口づけするのはどう?喉に。」

香奈梅は笑って言った。

「いいよ。きっといい約束になるわ。目をつぶるね。」

僕は頷いた。そして僕は香奈梅にキスをした。喉に目印の約束を。

香奈梅は僕に言った。

「私、守るから。浩雪君との約束。」

僕は頷いた。

香奈梅は僕に尋ねた。

「願い主はどうなったの?」

僕は香奈梅に言った。

「消えた。俺たちの力により。」

香奈梅は言った。

「そうなんだ。私たちの契約術により吹き飛ばされて消えたんだ。」

「でも香奈梅、まだ油断できないぞ。いつ奴が現れるかわからない。この先も、君の身にも。だから俺から離れないで欲しい。俺の友たちからもだ。みんなで守るから、香奈梅のこと。」

「…うん。行こう、私の帰る道の世界へ。」

「ああ。行こう、香奈梅。」

僕たちは歩き続けた。しばらくすると光の線みたいなのが見えた。

「浩雪君見て。線が沢山あるように見える。」

彼は言った。

「香奈ちゃん、あれは線じゃない。君には線に見えるかもしれない。けれどあれは糸だ。しかも百本ある。」

私は空を見上げ言った。

「どうして百本あるの? 帰る道は一本しかないはずよ。」

浩雪は言った。

「おかしい。何か変だ。嫌な気配を感じる。さっきとは違う気配だがなにか変だ。」

香奈梅は言った。

「どんな気配を感じるの?」

僕は言った。

「わからないけど、すごく嫌な感じだ。」

声がした。糸の奥から。

「助けてくれ…。」

かすかな声が聞こえた。

「この声、大紀と昌紀の声じゃないか。どこから聞こえるんだ?」

私たちが上を見上げると、二人が糸に縛られていた。

「浩雪君、みんなが…。」

彼は剣を抜き、言った。

「わかっている。けどどうやって下ろせば?」

邪悪な声が聞こえた。

「下ろすことはできないわ。全て私のエネルギーだから。」

上を見上げると願い主が立っていった。空中に。

「お前は願い主…。」

セイランは言った。

「私の攻撃を防ぎ、妹を追い払い、騎士まで追い払うなんてさすがね。だがもう無駄。貴様たちはここで見ていなさい、貴様らの仲間が死ぬところを。さあ我が力を彼らに与え、そして破壊せよ!」

闇が放たれた。セイランは時空の光の闇を解き放った。


【呪文】

時空の闇、青龍竜よ。我が命に従い、花とともに奴を滅ばす封印の力を解き放て。ブルーフラワーストーンダーク!」

その瞬間、空が暗くなった。空は闇に包まれた。

「なにこれ。夜なの。青空が急に真っ暗に!」

彼は言った。

「違う。あいつが暗闇に変えたんだ。」

「なんだって?」

セイランは言った。

「そうよ。私が全て闇に染めたの。もうこの空間は我らのものよ。さあ準備ができたわ。闇夜、この世界を我が支配下にせよ!」

その瞬間、この世界が揺れ始めた。

「なんだ、これは? 俺たちの力が吸い取られていく。わーっ!」

私は仲間がやられる瞬間を見た。

「みんな! 浩雪君、みんなが!」

彼は言った。

「わかってる。香奈梅、魔法だ。お前の巫女の力と俺の力で昌紀たちを助けよう。」

私は頷いた。

「うん。でもどうやって?」

彼は言った。

「風だ。風と弓で奴の糸を解く。それであいつらを奴から解放できるはずだ。それが終わったらあいつらから別世界の糸を教えてもらう。それができたら俺以外の糸を切る方法だ。」

私は言った。

「わかった、やろう。いくよ、浩雪君!」

彼はうなずき。剣を地面に突き、目を閉じて。祈った。

その瞬間、剣が地面に光を解き放った。

僕は目を開けて、剣をしまった。

「準備できたぞ、後は頼む。」

香奈梅はうなずき、呪文を解き放った。


【呪文】

「花と星の精よ。いにしえに基づき、私の命に応え、私に精の力を与えたまえ。フラワー!」

花の精の剣が現れた。

「浩雪君、この剣を。」

彼は言った

「ありがとう、香奈梅。行くぜ!」

僕は剣を剣を受け取り、呪文を唱えた。


【呪文】

「いにしえの力よ。我が花の応え、闇を光に解き放て。その剣に応え、彼らを救い出したまえ。バブルライト新星術。スターボーズスセレレードソード!」

その瞬間、空の闇が浄化された。

しかし、闇の空は再び暗闇に染めていった。

「やっとの…。」

彼は言った

「いや。まだだ。次の策を練らなければみんな死んでしまう。」

私は言った。

「浩雪君…お願い、みんなを助けて…。」

「考えがある。香奈梅、愛の契約術は使えるか? 俺は攻撃しか持ってない。香奈梅のサポートで使えたが。それ以外はできない。でも香奈梅は持っているはずだ、浄化のやつを。」

「持ってるけど。あれは一人では使えない術で…。」

「いや、大丈夫だ。俺がサポートするから。二人で唱えれば…。」

「そうね。やろう。」

僕はうなずき彼女と契約術を唱えた。


【契約術】

「第二解放発動。いにしえの光よ、我らの命に応え、いにしえの光を空に与えたまえ。イリュージョンライトネスソード!」

その瞬間、剣から青い花と光が空間に放たれ、風を吹かせた。

「させないわ。闇の雨よ、風を壊せ。レインダーク!」

闇の雨が降り始め、風を破壊しようとしていた。風の威力が弱まってきた。

「そんなことさせない。食らえ、フラワーレイジス!」

花の光が放たれ。雨をはねよけ糸を破壊した。その時、昌紀君たちを縛っていた糸が外れ。二人は地面に着地した。

「お前ら。大丈夫か?」

大紀は言った。

「大丈夫だ。俺たちを助けてくれたのか。ありがとう、浩雪、香奈梅。」

香奈梅は言った。

「うん…あなたたちがいないと私、帰れないでしょう。」

昌樹たちは言った。

「そうだったな。ごめん。」

浩雪は言った。

「謝るのは後だ。今はあいつを倒して、この世界から別世界へ香奈梅を送り届けてからだ。」

昌樹は言った。

「そうだな、話はそれからだ。それでさ。別世界の糸はどれだ?」

浩雪は空を指差した。

「あれだ。」

上を見上げると、セイランが別世界の糸を操作していた。

「どうするの?」

浩雪は言った。

「考えがある。」

一方、セイランは糸を操作しながら怒りに満ちていた。

あー、この私ごときがやられるなんて。あの小娘、覚えていなさい。お姉様とともにお前を殺してやるから。覚悟していなさい。おほほ…。」

笑いながら消えていった。

香奈梅はセイランの声が聞こえた気がした。

「ねえ、さっき願い主の声が聞こえた気がするんだけど。セイランはどうなったんの?」

浩雪は言った。

「消えたが。まだ油断できない。上を見ろ。」

上を見ると。見たことがない巫女が上空に立っていた。

「何あれ?」

昌樹は言った。

「わからない。さっきのやつとは違うやつだな。」

大紀は言った。

「なんだって? 俺は噂で聞いたことがある。特別な力を持つ巫女がいると。それがあの巫女だ。名前は

知らないが危険な巫女だって。」

浩雪は言った。

「なんだって。だったらみんなで倒すしかないな。」

香奈梅は言った。

「そうだね。でもどうやって倒すの?」

昌樹は言った。

「考えがある。みんなで連繫して倒すんだ。」

大紀と浩雪と香奈梅は頷いた。

その時、巫女が舞い降りた。

「はじめまして。私は巫女のセイリア。この世界を監督する巫女よ。」

浩雪は言った。

「監督だと?」

セイリアは言った。

「そう。けれど見ていると、あなたたちは私の生徒を壊したから少し罰を与えないとね。これで死になさい。レイトンダーク!」

セイリアは闇の風を解き放った。闇の風が僕らに襲いかかろうとした。

私は浩雪君に手を握られた。

「俺がいる。俺が香奈ちゃんの力になるよ。」

昌樹たちも言った。

「俺たちも力になるぜ。仲間だろう?」

香奈梅は言った。

「ありがとう、みんな。じゃあ行くよ!」

僕らは手を握った…香奈梅とそして、呪文を唱えた。


【呪文】

「いにしえの愛よ。我が主、香奈梅の命に応えよ。汝あるべき姿に替え、邪悪な敵を私たちの愛により浄化せよ。ラブフラワーライト!」

ピンクの花の光がセイリアを照らした。

風を吹き飛ばした。

「くっ、行かせないわ。ハーレンラート!」

セイリアが私の力を無効化した瞬間、私はその影響で吹き飛ばされ、闇に包まれた。

「きゃー! 助けて、浩雪君。みんな!」

僕らは手を伸ばし叫んだ。

「香奈梅!」

僕らは吹き飛ばされている香奈梅の手をつかみ香奈梅を抱きしめた。  

「浩雪君…みんな…。」

浩雪は言った。

「まだ諦めるな。それと、ここで死ぬなって言ったろ?」

香奈梅は言った。

「浩雪君…ありがとう。私、諦めない。」

彼らは言った。

「大好きだ、香奈梅。」

「…私も好き…。」

浩雪と香奈梅が口づけをした瞬間、香奈梅の体が浄化され、僕らが放った力が強力に放たれ、セイリアの力を押しつぶした。

「なに?」

そして、帰る時空が開かれた。

「入口が開いた。行け、浩雪。香奈梅を連れて。香奈梅を送り届けたら必ず戻ってこい。待ってるから。信じてる。」

 浩雪は言った。

「わかった。必ず戻る。友たちだから。」

昌樹は言った。

「あたりまえだ。必ず戻って来いよ。待ってるから、いい報告を。香奈梅、元気でな。元の世界に戻れたら墓まで会いに来いよ。待ってるから。ありがとう。」

彼女は微笑んだ。

大紀は言った。

「浩雪。後のことは頼んだぞ。香奈梅を死なせたら俺たちが許さないからな。」

浩雪は言った。

「ああ。じゃ、行こう。」

香奈梅は言った。

「ちょっと待って。セイ二アはどうなったの?」

浩雪は言った。

「消えたみたいだ。俺らが放った光で。それより香奈梅、けがはないか?」

香奈梅は言った。

「うん。私は大丈夫。引き留めてごめんね。それより浩雪君はけがしてない? 大丈夫なの?」

彼は言った。

「平気だ。」

昌樹は言った。

「おい、お前ら。」

昌紀、大紀が駆け寄ってきた。

浩雪は言った。

「どうしたお前ら。さっき別れたばかりだろう。お前らこそけがの心配したらどうだ、自分の?」

昌樹は言った。

「大丈夫だ。浩雪たちが助けに来てくれたし、一緒に戦ったしな。それより先に進まないと。俺たちはあの糸の先の扉にはいけない。意思の力で。もうこの世界までしか発動できないから。」

香奈梅は言った。

「そんな…。じゃあここでお別れなの?」

昌樹は言った。

「ああ。香奈梅、さみしいがすまん。この先は浩雪が連れて行ってくれる。一緒に帰って来いよ、別世界の別世界まで。」

香奈梅は僕たちに言った。

「ありがとう。みんな一つだけ言うね。大紀君ありがとう。また成人式で見つける。ここで話したことを忘れないで。」

昌樹は言った。

「俺はいないが。お前もな。香奈梅、俺たち友たちだよ。」

香奈梅は言った。

「うん…忘れないよ。ありがとう、昌紀君。この先の世界では会えないかもしれないけど、別世界の別世界に行った報告をするね、墓の前で。その時は私の声を聞いてね。」

指切りをした。私は二人と。

「香奈梅…。」

私は彼に言った。

「浩雪君…ありがとう。」

彼は言った。

「おう。みんな、任せとけ。じゃあ行くぜ。行こう、香奈梅。」

みんなは手を振ってくれた。

「この先に別の空間があるんだね。けど、私を別世界の浩雪君が。」

浩雪は言った。

「…だから行くんだ。君はここにいてはいけない。帰るんだ、君の居た世界に。過去は変えられない。」

香奈梅は言った。

「ここまで私はずっとあなたを信じてともに歩んできた。だから見つけるわ。この世界で待ってて。必ず見つけるから、別世界でここで。大紀君と昌紀君と生きて。何が起こるかはからない。」

浩雪は言った。

「そうだね。けど慎重に行かないと。敵が潜んでる可能性もあるし。」

香奈梅は言った。

「そうだね。行こう。」

しばらく歩いて行くと、糸が広がっていた。

「これが糸?」

私が糸に触れた瞬間、扉が開いた。

「行こう、この先に。」

俺と香奈梅が扉の中に入ると道があった。僕らが道を歩いていくと、再び扉があった。僕たちが見た扉の中の世界は別世界になっていた。

「ここが君の行く三つ目の帰る世界だ。」

香奈梅は言った。

「ここがそうなのね。浩雪君も行こう。だって守るって言ってくれたじゃん。」

彼は彼女の手を離して言った。

「ごめん。僕はこの先に行くことができない。僕にできるのはここまでなんだ、香奈梅。」

彼女は尋ねた。

「どうして…そんなこと言うの? だって約束したでしょ。」

彼は言った。

「ああ。けどここまでなんだ。もう一人の俺が言ってる。別世界の俺が。」

香奈梅は言った。

「…別世界の浩雪君がそう言ってるの?」

彼は言った。

「ああ。ただ君を待っている。それと敵が潜んでるから気をつけろ。いいか、俺の声を探すんだ。彼は君の声を探してる。」

香奈梅は言った。

「私の声を…?」

彼は言った。

「ああ。だから俺を探すんだ。」

香奈梅は言った。

「うん。」

彼は言った。

「香奈梅、ありがとう。お別れだ、ここで。大好きだよ、香奈梅。この世界で俺に会ってくれてありがとう。」

香奈梅は言った。

「私も…会えて良かった。私を助けてくれてありがとう。未来でまた会おうね。」

彼は笑ってうなずいた。そして私は浩雪君に抱きしめられた。

「ありがとう。」

彼は私を抱きしめた手を離した。そして私は扉の中へ入り、歩き続けた。

その時、私は意識を失った。光を浴びながら。

どれくらい眠っていたのだろう。目を開けると。また空を飛んでいた。

「前と同じだわ。でも着地しないと。どこがいいのかしら…あそこがいいわ。あそこはたしか五号館だわ。いきましょう。」

私は目的の場所にたどり着いた。

「ここはどこ? 校舎が多いわ。学校みたい…大学ね。料理系みたいだわ。この状況だと大学二年生ね。つまり成人式が近いってことだわ。まずは何かあったらいけないから仲間を作らないと。あいつから逃げるために。」

私が歩き続けていたとき。

声がした…。

「おはよう。」

振り返るとショートカットの髪をした少女が立っていた。

私は尋ねた。

「あなた誰?」

「何言ってるの? 私よ。人美だよ。」

「人美?」

私は現代の大学時代を思い出してみた。その瞬間、私が彼女と友たちだったということに、そして一緒にご飯食べたりしていたこと。そして、大好きな事務の職員とお話ししたり、三年の時にゼミの先生に図書館のインターシップに参加させていただいたりしたことを思い出した。

それが私がたどり着いたこの世界と同じだということに。

「覚えてないの?」

「覚えてるよ。だって初めてできた友だちですもの。ところで香奈梅ってさ。空から降ってきたんでしょ?」

「なんで私が空から降ってきたってわかるの?」

「見たからよ、降ってくるの。それに香奈梅ちゃん、そんなシンプルな服着てないし。」

「さすが私の親友ね。人美の言うとおり、私が空から降ってきたのは確かよ。服装が違うのも。でも自分で飛びたいって思って飛んではいないの。」

「どういうこと? 私には魔法をかけられたようにしか想像がつかないんだけど。」

「確かに。魔法かもしれない。でも本当のことを言うとね。悪の魔法にかけられ現代から過去の世界に飛ばされた。」

「誰に飛ばされたの?」

「願い主」

「ひどいことをするわね。邪悪な願い主はどんなことができるわけ?」

「人を殺したり、時空へ飛ばしたりする。それ以外は知らない。だからこの世界で幼なじみを見つけ、奴らを倒し、この世界から脱出し元の世界に帰るの。」

「待って一人じゃ無理よ。」

「大丈夫。仲間がいるわ。」

「そうだけど。誰がいるの。」

「豊田先生と愛野美由紀先生と赤城先生、原井、三保、佐藤亜由美ちゃんがいるわ。私が掛け合うからついてきて欲しいの。」

「わかった。でも私たち人間よ。」

「例えそうであっても絆があれば勝てるの。そしたら私はこの世界から去り、別世界で救いを求め合い、帰ることができるから。もし足止めされたら? 誰かに私たちと力を合わせて戦っても相手が強かったらの話。その時は彼に助けてもらうわ。」

人美は尋ねた。

「彼って誰? 香奈ちゃんの恋人?」

「違うわ。幼なじみよ。幼少期の頃から一緒だった浩雪君よ。彼はね。未来から降ってきた私を助けてくれたの。」

「そうだったの。その人、今でも助けてくれてるの?」

「そうだよ。彼はね、私が別の空間に連れて行かれたときも、別の空間から救い出す道を作ってくれたの。彼は強いわ。私をこの場所に命がけで戦って、守りながら私を連れてきてくれたの。未来の世界に。」

「そうだったの。ごめんね。変な勘違いして。」

香奈梅は言った。

「気にしなくていいわ。それより仲間を集めましょう。」

「うん。ねえ、どんな奴が襲ってくるの?」

「悪魔ね。そんな悪魔、私が退治する。でも契約は結んでるの。この世界だけの恋人でいようと。それが彼との契約。」

人美は言った。

「なるほど。でも戻っても恋人でいようとは思わないの?」

「そんなことはない。友だちでいようという約束はしたわ。目印はしてるわ。」

人美は尋ねた。

「どんな目印?」

「喉に目印よ。そうしないと戻れない。だから私は彼といないといけないの。」

「じゃあその彼も後から行けるのね。」

「彼は来ないわ。」

「どうして?」

「いざという時にしかこちらに来れない。彼の力は私を守るための力。だからこの世界の時空の道に私を連れてくることしかできなかったの。」

「そうだったの。でもどういうときに現れるの?」

「私に何かあったら。だから今は自分の力で歩くしかないの。だから力を借りたい。」

「納得したわ。じゃあまずはどうしようか。」

「力を持つ少女がいるわ。その子は私がいた世界でも支えになってくれた人なの。性格はまじめで明るく、優しいけどすごく頭がいいのよね。頭脳的な力を持つ人よ。同じ学科よ。急ぎましょう。食堂にいるはずよ。」

「いいわよ。何ていう人?」

「佐藤亜由美ちゃんよ。」

「どんな力を持つの?」

「それは知らない。向こうでは普通の子よ。この世界では知らないけど…でもまじめな子は確かよ。」

「そうなんだ。」

私たちはその子がいる聖徳天にいった。

「いたいた。亜由美ちゃん。久しぶり。」

亜由美は言った。

「久しぶりじゃなくてはじめまして、でしょう?」

香奈梅は言った。

「なによ。昨日会ったのに。」

亜由美は言った。

「別人だから。それに昨日会った香奈梅はそんな格好してないし。」

「すごいね。亜由美ちゃんは」

「…別に」

「あっ、紹介するね。私の友だちの人美。教育学科の。」

人美は挨拶した。

「よろしく。」

亜由美は言った。

「はじめまして、佐藤亜由美です。よろしく。」

人美は頷いた。

香奈梅は亜由美に言った。

「早速の話だけど私、亜由美ちゃんの言うとおり別世界から来た香奈梅だよ。」

亜由美は言った。

「ほらな。」

香奈梅は言った。

「でも自分で来たわけじゃないから。」

亜由美は言った。

「確かに。誰かの攻撃で来たんでしょ。それをする奴は何でも願いどおり変える敵。願い主でしょう?」

香奈梅は驚いて言った。

「ちょっと! なんで詳しいの。まだ何も話してないのに。」

「そうだよ。」

亜由美は言った。

「決まってるだろ。私はあいつと強敵同士なんだぜ。」

香奈梅は尋ねた。

「どういうこと?」

亜由美は言った。

「簡単に言うと、あいつは時空と君を自由自在に邪悪に操ることができる。」

香奈梅は言った。

「亜由美ちゃん。話してくれてありがとう。あなたなら力になってくれるって思ってる。だから力を貸してほしい。」

亜由美は言った。

「なるほど。まずは仲間だな。私は力貸すけど。彼女の力も必要だし。」

香奈梅は言った。

「三保を探さないと。」

人美は言った。

「その人を探しに行くのね?」

香奈梅は言った。

「学生会に所属してるはずよ。この時間だと授業前よ。行きましょう、彼女を探しに。」

人美は言った。

「これで仲間が私と亜由美ちゃん、合計二人になったね。」

亜由美は言った。

「これだけじゃだめだ。まだまだ集めないと。」

人美は言った。

「そうだね。この戦い、終わること可能なの?」

亜由美は言った。

「可能だろ。今度は倒す。だって奴と同じ能力持ってるし。逆に言うと、私は時空を自由に操り、香奈梅を元の世界に戻せるってことだよ。」

人美は言った。

「なるほど。前に戦ったことあるの?」

亜由美は言った。

「あるよ、時空間で。陣取ろうとしてきたけど、私の方が強かったから。奴は撤退し新たな支配の道が作った。だから今度は私が押され、時空は半分になった。まあ時空は私が作り上げたようなものね。」

香奈梅は言った。

「それが原因で私、未来から消えたのね。」

亜由美は言った。

「うん。ごめんよ、巻き込んで。」

香奈梅は言った。

「いいよ。そのおかげで幼なじみと会えたし。」

亜由美は言った。

「まじで! じゃあ、例の救世主に!」

香奈梅は言った。

「まあね。でもまた助けてくれるの、この世界で。で、亜由美ちゃんにお願いがあるんだ。」

彼女は尋ねた。

「なに?」

香奈梅は言った。

「成人式の世界に連れて行ってほしいの。彼に会わないといけないから、帰るために。」

亜由美は言った。

「いいけど。今の私の力じゃ無理だけど、仲間と身内と君をここまで連れてきてくれた彼にも頼まないと。」

香奈梅は尋ねた。

「どうやって?」

亜由美は言った。

「まずは先生に頼んでみるんだ。きっと力になってくれる。他の奴はそれから集めればいい。先生の力は特別だから。」

香奈梅は言った。

「わかった。あと頼むね。」

亜由美は言った。

「おう。俺たち、ここで待ってる。」

香奈梅は言った。

「ちょっと待って。行く前に聞きたいことがあるの。」

人美は言った。

「なに?」

 香奈梅が尋ねた。

「蘭ちゃんてさ、どうして言葉がおかしいの?」

人見は笑いながら、

「ああ、それね。亜由美ちゃん、兄が二人もいるからその影響かもね。でも亜由美ちゃん、女らしいところもあるから大丈夫。」

「そうなんだ。」

香奈梅は言った。     

「じゃあ私、行くね。」

人美は頷いた。

私は笑って先生の元に行った。

亜由美は言った。

「私たちも行こう。私たちからも頼めば信じてくれるはず。」

人美は言った。

「そうね。行こう。」

人見と亜由美は香奈梅が向かった事務所に行った。

「こんにちは、豊田先生。」

先生は言った。

「こんにちは。あれ? 香奈梅さん、服装変わった?」

香奈梅は言った。

「うん。でも先生は変わらないね。」

先生は言った。

「ですね。それで、授業の単位は取れていますか?」

香奈梅は言った。

「まだ取れていないのが必修科目に何教科か残っています。」

先生は言った。

「卒業は難しいですね。あと半年ですよ。」

香奈梅は言った。

「知っています。」

「よろしい。それで、今日は何しに来たの?」

香奈梅は言った。

「先生に助けてもらおうと思って来たんです。」

先生は言った。

「そうですか。内容によりけりですが、私が何を助けるの?」

香奈梅は言った。

「私、時空に行きたいんです。」

先生は尋ねた。

「難しいことを言うんですね。ちなみにどうして時空のことを知ってるんですか?」

香奈梅が答えを考えていたその時、亜由美たちが来た。

「着いたぜ、人美。あの先生に声をかけてみてよ。そうすれば道は開ける。」

人美は頷いた。そして先生に声をかけた。

「…先生。」

私が後ろを振り返ると亜由美たちが立っていた。

「亜由美ちゃん。」

亜由美は先生に言った。

「私たちは彼女を助けたいと思っています。」

先生は言った。

「あなたたちは?」

亜由美は言った。

「香奈梅の友だちの亜由美と人美です。香奈梅はこの世界の人ではないです。それは先生もご存じのはずです。」

先生は言った。

「そうですね…。」

亜由美は言った。

「香奈梅は化け物により飛ばされてここに来たのです。幼なじみの助けを借りて。今も香奈梅は家族や友たちの力を借りながらここにいます。香奈梅を助けてください。私たちも香奈梅を 助けるためにここにいるんです。」

香奈梅は言った。

「みんな…。先生、お願いします。時空のことは聞いたことがあるでしょう?」

先生は言った。

「そうですか。わかりました。では皆さんを信じて助けてあげましょう。」

香奈梅は言った。

「では助けてくれるんですね。ありがとうございます。」

先生は言った。

「けれど先生の力には難点があるんですよ。」

香奈梅は尋ねた。

「難点とはいったい何ですか?」

「先生は別の時空で瀕死状態になっている人を助け、力を与えることしかできないの。仮に、もしけがが癒えて歩けるようになっても、その世界を出ることができない。連れ出すことも。本人の力と最も大切な人の救いがないと不可能なの。ごめんなさい。」

香奈梅は言った。

「それでもいいです。助かります。」

先生は笑って言った。

「ええ。生徒のためなら何でもしますよ。ではまた連絡ください。」

香奈梅は頷いた。

亜由美は言った。

「これで一人確保ね。」

「そうね。じゃあ後は三保ね。たぶんまだ食堂にいるはず。行ってみよう。」

「先生ありがとうございました。また連絡します。」

先生は頷いた。

私たちは食堂を目指した。そして、食堂にたどり着いた。

「こんにちは、香奈梅。ずいぶん変わった服着てるね。褒めてるのよ、これ。」

振り返ると少女が立っていた。

「ちょっと気になってただけ。」

私は少女に言った。

「これ未来の服よ。」

少女は言った。

「だと思ったよ。見かけない服だから。」

亜由美たちは少女に言った。

「私たちさ、香奈梅の付き添いで動いてるんだ。」

少女は尋ねた。

「そうなんだ。それで、みんなしてどうしたの?」

亜由美は言った。

「君には関係ない。行こう。」

少女は言った。

「…わかった。」

香奈梅は頷いた。

私たちは再び事務室の前に行った。

その時、先生が再び声をかけてきた。

「香奈梅さん。」

香奈梅は言った。

「先生。先ほどはありがとうございました。」

先生は言った。

「いいえ。何かできたらと思って言っただけです。」

香奈梅は言った。

「先生。ありがとう。」

先生は言った。

「力不足ですが助っ人に沙織先生も連れて行くよ。赤城先生は扉を開けることもできるから連れて行くよ。三人先生がいれば安心でしょう?」

亜由美は言った。

「ありがとうございます。」

先生は尋ねた。

「いいえ。それで決行はいつですか?」

香奈梅は言った。

「あしたの十二時です。池の前です。扉の入口が開きそうな場所なんですが、明日お伝えします。今、亜由美ちゃんが調べてくれています。」

先生は言った。

「了解です。」

香奈梅は言った。

「それと、あと二人来ます。原井三保ちゃんと美由紀先生が来てくれます。」

人美は言った。

「赤城先生は調理の先生よ。きっと力になってくれるはず。」

香奈梅は言った。

「そうよね。」

先生が言った。

「ただし、卒業単位も取ることですよ。」

香奈梅は言った。

「わかっています。ではまた明日会いましょう、先生。」

「では、また明日。赤城先生にはあなたたちが頼みに行くといいですよ。明日は連れていきますけど。」

人美は言った。

「わかりました。」

事務室を私たちは去った。

香奈梅は言った。

「ひとまず揃ったかな?」

人美は言った。

「いや。あと一人赤、城先生が。紗綾と豊田先生は揃ったけど。三保もなんとかなるわ。」

人美は言った。

「そうね。とりあえず実習室に行こう。」

私は頷いた。

実習室にたどり着いた。

「ほら、席についてください。」

私たちは赤城先生のところへ行った。

「先生、こんにちは。あの、話があるんですが。」

赤城先生は言った。

「授業が終わってからです。」

香奈梅は言った。

「はい。わかりました。」

亜由美が来た。

「何やってるの、香奈梅?」

私は言った。

「授業を受けないと聞いてくれないみたい。」

亜由美は言った。

「わかった。人美、あんたは自分の授業を受けに行っててくれない? 終わったら合流よ。五号館で合流ね。」

人美は言った。

「わかったわ。」

授業が始まった。

亜由美は三保に授業中に尋ねた。

「三保、ちょっと聞いていい?」

「なに?」

「剣だよ。ただし、もし手伝えるなら魔法になるけど…。」

亜由美は言った。

「その魔法戦争だよ。」

三保は言った。

「じゃあやるよ。私の能力はこの剣よ。召喚魔法少女も出せるのよ。」

三保は剣を出してくれた。

「手から剣が出てきた。どうやって手から剣が?」

三保は言った。

「それはね、私は昼間は勇者で朝は普通の学生なの。でも学生が本来の姿なのよ。」

亜由美は言った。

「へー。いろんな姿するんだ。」

三保は笑って言った。

「これは勇者の剣。人助けの剣だけど、敵を倒すのにはちょうどいいかな。」

香奈梅は言った。

「どう? 役に立つかな?」

三保は言った。

「立つわよ。」

亜由美は言った。

「三保は強い。前回の戦いも助けてくれたから。」

香奈梅は言った。

「そうね。亜由美ちゃんの言うとおりだわ。三保ちゃん、じゃあ明日、あの池の前に来て。明日詳しいことは連絡するから。」

三保は言った。

「了解。ねえ、どうしてそこまでするの?」

香奈梅は言った。

「世界を浩雪君が救ってくれるから。」

三保は言った。

「なるほどね。」

一方、反対側の世界では大学生の浩雪が空に向かって香奈梅に想いを伝えていた。

「君が望み過ぎたら君を返せなくなり、君はこの世界に閉じ込められるはめになる。そんなの僕は嫌だよ。だから俺を信じてくれ。別の空間にいるんだろう。香奈梅、もしいるのならこの場所まで名前を呼んでくれ。香奈梅…俺は君を救いたいんだ。」


一方、私は三保の話を聞きながら窓を見ていた。

誰かが私を呼んでる声が聞こえたからだ。

「浩雪君…。」

三保は私の様子が変だと思い、肩を叩いた。

「香奈梅、香奈梅!」

私は我に返った。

「なに?」

三保は言った。

「どうしたの。ボーっとして。なんか名前呼んでたけど。」

香奈梅は言った。

「なんでもない。誰かの声が聞こえたような気がして…でも、気のせいだったみたい。」

三保は言った。

「そうなんだ。それよりこのあと先生と打ち合わせよね。何があるの?」

亜由美は言った。

「明日のことだよ。」

三保は言った。

「わかった…どうすればいい、私?」

「とりあえず、授業が終わったら一緒に来て。まず授業が終わってからね。」

「わかったわ。」

「私さ、人美のところに行ってくる。明日の打ち合わせ。すぐ戻る。」

香奈梅は言った。

「うん。気をつけてね。」

亜由美はうなずき、人美のところへ行った。

人美はまだ近くにいた。

「人美。」

人美は振り返って言った。

「亜由美ちゃん。どうしたの?」

亜由美は言った。

「明日十二時に池の前で集合だ。それと先生が二人参加する。あと、原井三保も参加する。先生はこれからするところだ。」

人美は言った。

「わかった。明日、予定どおり行くね。」

亜由美は言った。

「ああ。よろしく頼む。」

「うん。あっ、香奈梅。私、子供教育の授業があるから行くね。また明日。」

亜由美は言った。

「うん。また明日。」

亜由美は人美と別れ、授業に参加した。

「今日は何作るのかな?」

亜由美は言った。

「あっ、今日はハンバーグとプリンだよ。あと炒飯かな?」

香奈梅は言った。

「じゃあ私、プリン作るよ。」

亜由美は笑って頷いた。

私は思った。

( ああ、こんな世界でみんなと過ごすのも久しぶりだな。ずーと過ごせたらいいのに。)

…声がした。

( そんなふうにのぼせたらだめだ、香奈梅。)

私はあたりを見渡しながら尋ねた。

「懐かしい声…。誰?」

彼は言った。

「俺だよ。」

「浩雪君…。」

「ああやっと連絡がきた。今、俺は君を助けるために世界を光で包み込んでる。ああ、時間がきた。また後で話す。」

私は手を伸ばし叫んだ。

「ちょっと!」

声は消えた。

三保が来て私に言った。

「香奈梅、今誰と話してたの? 叫んでたけど?」

香奈梅は言った。

「別に…話してないよ。」

三保は言った。

「いやさ。行動が止まっていたときがあったから。もしかして過去の人と話してたかなって。」

香奈梅は頷いた。

三保が尋ねてきた。

「なんて言ってたの、その声の人?」

「話はそれからだ。また後で必ず連絡するって。」

「わかった。それってなにか事件が起こりそうってことかもよ。」

「…うん」

料理とプリンが完成した。

「おいしい。香奈梅が作ったプリンも美味しいぜ。」

香奈梅は言った。

「本当? ありがとう。」

亜由美は言った。

「お菓子作るの好きなんだな。」

香奈梅は笑って言った。

「お母さんが作ってるからかな。」

三保は言った。

「親の影響か。じゃあ将来はお菓子屋にでも勤めるの?」

「違うよ。掃除だよ。」

亜由美は尋ねた。

「なんで掃除? もしかして香奈梅、未来では掃除の仕事についてるの?」

「…うん」

亜由美は言った。

「だからか。いいよ、その答えで。帰る道が開けるなら。なあ、三保もそう思わない?」

三保は言った。

「まあ、さっきも話したからいいか。」

亜由美は言った。

「…まあね。人と話してるのかなって思ってさ。」

香奈梅は言った。

「亜由美ちゃんには隠せないよ。亜由美ちゃんの言うとおり、過去の人と通じてたんだ。」

亜由美は言った。

「もしかして例の契約した幼なじみ?」

香奈梅は頷いた。

三保は言った。

「で、なに話したんだ?」

香奈梅は言った。

「まだ。でも彼は今、光をこの世界に送り続けてるの。私の帰る道ができるように。それが仕事らしいよ。」

三保は言った。

「なるほどね。で、他には?」

香奈梅は言った。

「また後で話すと。授業が終わってから。」

三保は言った。

「了解。私たちも香奈梅を助けるから、聞く権利はあると思うの。聞いてもいいかな?」

香奈梅は笑顔を振り巻きながら言った。

「もちろんよ。」

亜由美は言った。

「サンキュー!」

【従業終了後】

私たちは先生のいるゼミ室に行った。

「先生、お願いがあります。」

先生は言った。

「授業が終わってからでしたね。用件はなんですか?」

香奈梅は言った。

「私を助けてください。」

先生は言った。

「急に言われても困るわ。原因を言ってからにしてもらえない?」

亜由美は言った。

「原因ならあります、香奈梅に。根拠は香奈梅がこの世界の香奈梅でないことです。」

赤城先生は言った。

「それが原因ですか。ではどう助けてほしいの?」

香奈梅は言った。

「道を作る手助けをお願いしたいのです。」

赤城先生は言った。

「わかりました。でしたら、協力します。大した能力ではありませんがよろしいですね?」

亜由美は言った。

「構いません。」

赤城先生は言った。

「ありがとう。ではまた明日。」

私たちはお辞儀をしてゼミ室を後にした。



【帰り道】

「緊張したよ、先生と話するの。」

亜由美は言った。

「まあしょうがない。でも協力してくれるんだし、ありがたいじゃん。」

香奈梅は言った。

「うん。」

三保は言った。

「ねえ、例の幼なじみと通じてるて言ってたよね。連絡きた?」

香奈梅は言った。

「まだだよ。でももう来ると思う。」

再び声がした。

私は耳を澄ませた。

「浩雪君…。」

彼は言った。

「その声は香奈梅か。すまん、敵の影響で連絡がうまく通じなくて時間かかった。」

香奈梅は言った。

「いいよ。だって私のために動いてくれてるんだから、罪ないよ。」

彼は言った。

「ありがとう。ところで現状報告を頼めるか。今どんな様子だ?」

香奈梅は言った。

「仲間を集めたところ。で、明日みんなで別空間の入口の扉を開く予定。」

浩雪は言った。

「そうか、順調だな。今から君の援助に行く。」

香奈梅は言った。

「大丈夫だよ、私は。」

彼は言った。

「大丈夫じゃない。危険なんだ。」

香奈梅は言った。

「どういうこと?」

彼は言った。

「光の糸が出ないからだ。」

香奈梅は驚いた。

「そんな!」

「おそらく奴の仕業だ。」

香奈梅は窓を眺めながら言った。

「願い主…。」


一方、願い主は別空間の支配を考えていた。


【時空間】

「さあ我が妹よ。邪魔者は消えたわ。セイ二ア、一緒に彼女を殺し、迷宮に封印しましょう。」

セイ二アは言った。

「はい、お姉様。さあ参りましょう。おほほ…。」

その戦いは終りが来るのだろうか。未来と過去に…。

香奈梅は仲間と浩雪君とともに兄を救うことができるのであろうか。

姉と連絡を通じ合うことができるのであろうか。

運命の闘いが迫っていた…。


あとがき


みんな様、お久しぶりです。椿と申します。このたびは「蒼天乃王」を手にとってくださりありがとうございます。本編の方、読んでいただけましたか? 楽しんで頂けたなら幸いです。

この本が形になるまでにはたくさんの方にお世話になりました。

担当のPさん、校正の方、イラストを担当してくださった鶴山みこと先生、本当にありがとうございました。

そんなスタッフの皆さんの恩に報いられるようにこれからも頑張っていきたいと思います。

次週からイラストを担当する人が変わりますが、まだまだ椿シリーズは続きます。

みんな様の応援、よろしくお願いします。

というわけで、またお会いできる機会があれば、その際にはまた、色々とお話させていただきますので、今回はこのあたりで失礼します。


    椿

            







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時空乃香菜梅 つばき @tubaki0525

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