【カクヨム純文コロシアム・会場】

　難しいことを誰にでも分かりやすく説明することが出来る人が本当の頭のいい人だ。

　この通説は、頭のよい人たちの間ではなく主に学歴コンプがあり頭の悪い自覚がある下種な人々に、熱狂的に支持されてきた。
　どうだ、ざまあみろ。悔しかったら俺たちにも分かるように説明してみせろ。その能力がないならお前なんかたいしたことないってことだ。

　ところがある日、

「いや、難しいことはやはり頭が一定レベル以上の人ではないと理解できないものだ。いくら分かりやすく伝えたところで彼らは理解しないだろう」

　と淡々と唱える人がいて、恥を知る者ならば顔を赤らめて消沈した。
　この世に高等な学問や芸術があることは…続きを読む

カクヨム学園文化祭は今年も大盛況に終わり、校庭は後夜祭で賑わっていた。キャンプファイヤーが轟々と燃えている。
葵は校舎裏で仲間と煙草を吸っていた。灰色のため息のような煙が、春の夜空へと吸い込まれていく。

「はぁ。ダル。どうせ私達がいなくても陽キャ達は気づかないんだから、いいでしょ」

「それな。先生達にすら見えてねーからな、俺達は。『純文部屋』には、客なんてほとんど来なかったしな……」

「ちょっと…ヤダ。泣いてんの？　人気なんかなくても、私はあんたの良さを一番分かってる。それでいいじゃない。それじゃダメなの？」

夜空には無数の星が煌めいている。
その時。東の空低くベガ(織姫星)が強い光…続きを読む