【ファイナリスト発表】
今回の開催では、多くの感想が飛び交うことになりました。
よって、ここでは最小限の紹介に留め、末尾にて総評と所感を述べるに留めたいと思います。(敬称略にて失礼いたします)
● 愚者は咲かない花を視る / 未来屋 環
https://kakuyomu.jp/works/16817330669325945353
・全3話 9,991文字
今開催で最も多くの推薦を受けた作品がこちらでした。
純文学という言葉のイメージに、非常に馴染む作風と穏やかな空気感。描写も美しく、ただひたすらに静かに過ぎていく時間と、最終話での驚く仕掛けである視点変化が秀逸。「他の色を混ぜても作れない──」「これが、私の視ている世界──」魅力的な台詞と、饒舌なる沈黙が美しい、至高の一作。
https://kakuyomu.jp/works/16817330669325945353/reviews/16818622172235203867
https://kakuyomu.jp/works/16817330669325945353/reviews/16818622172295744087
● 夏飾り / 上月祈 かみづきいのり
https://kakuyomu.jp/works/16818093079039289588
・4,675文字
読み始めから引き込まれる空虚と寂寞感。
かつての行いが実は間違ったものだったと気付いた、それでも妹はそれを望んでいた────。どこまでも哀切が消えない、遺された者の想いと願い。それは、決して間違いではなかったのだと、彼に伝えてあげたいと心から思いました。
https://kakuyomu.jp/works/16818093079039289588/reviews/16818622172475083573
https://kakuyomu.jp/works/16818093079039289588/reviews/16818622172220417332
● DIGITAL SINGLE「Bride」 / 五十嵐璃乃
https://kakuyomu.jp/works/16818093084165809073
・全2話 9,334文字
上下二話構成の、戦時期物語。
タグにも記されている、浮気・不倫という言葉を、現在の手垢のついた解釈で捉えてしまうとこの物語の魅力は読み解け無い。それは、この時代にあってはごく当たり前の成り立ちの夫婦であり、その辿った道筋は紛れもなく「正しい夫婦に至る道」であったと思えます。
https://kakuyomu.jp/works/16818093084165809073/reviews/16818622172409048434
https://kakuyomu.jp/works/16818093084165809073/reviews/16818622172364148329
● 早生 / 祐里
https://kakuyomu.jp/works/16818622172412645989
・4,608文字
こちらも戦間期物語ながら、今作はかなりハードな作風。
法は自分を守ってはくれないということを正しく理解した、少年の物語。善悪を超えた、生きるということに向き合う姿勢とそれを包み隠さず、取り繕わずに描き切るという、迫真の一作。コメント欄が賑わいそうな内容を取り扱っているだけに、まだ読んでいない人はぜひとも読んで自身の意見をぶつけてほしい。
https://kakuyomu.jp/works/16818622172412645989/reviews/16818622172838685819
● 私もお前もミラーボール / ぬ
https://kakuyomu.jp/works/16818622170535504624
・全2話 5,492文字
主催者・天川は「アイドル」「配信」「SNS」というものに対する造詣が浅く、きちんと読み込めていたか不安でもあり、どちらかと云うと同作者様の別作品『リリー』のほうに共感が湧いていたのですが、多くの推薦票をもたらした読者を信じて、ファイナリストの座には今作を選定。「ペルソナ」というものがあまりに常態化してしまう現代の危うさを、内面から描き、ミラーボールに喩えた命名も秀逸。
https://kakuyomu.jp/works/16818622170535504624/reviews/16818622172263491205
https://kakuyomu.jp/works/16818622170535504624/reviews/16818622172177598428
● 完璧な割り下 / 神崎諒
https://kakuyomu.jp/works/16818622171640452203
・4,886文字
読む人によってかなり印象の異なるであろう今作。美味しい料理の登場する物語、という印象の読者も多い中、私は「解体と再構築」という仏教の理念を今作に見出しました。彼女にとっての「聖域」は彼女を守るものであったのか、それとも縛るものであったのか────。
https://kakuyomu.jp/works/16818622171640452203/reviews/16818622172439423616
● 箱詰めの悪意 / 島本 葉
https://kakuyomu.jp/works/16817139556353274519
・3,190文字
純文学の側面を語る上で「ただ、あるがまま」という要素は大きなものの一つではなかろうか。訴えかけるテーマや噺の落ちなどは存在せず、そこにある事象を感情を込めずに描き出す。結果生まれるのは、ふんだんに用意された解釈の幅の自由度。こちらの作品のコメント欄もまた、賑やかなことになっているであろう。梶井基次郎の『檸檬』を引き合いに出す読者もいるほどに────。
実は、当作者様の別作品『愁恋』の方も非常に捨てがたかった……。
● ひな壇は来なかったけれど。 / 西奈 りゆ
https://kakuyomu.jp/works/16818622170346329079
・3,246文字
漠然とした不安がやがて形となり日常を侵食していく……そんな精神不安を手触りを感じるほど芳醇に描き出した今作。作中の雰囲気は決して明るくはないのだが、読む者すべてに共通して温かい読後感を与えてくれるであろう。ともすれば、何処にでもありそうな夫婦の形。しかしこれが珍しくない社会と日常というのは、ある意味では何処か既に破綻し始めているのではなかろうか。しかし、夫婦の情はそんな世間の風雪をも跳ね返す芯の強いものでもあると気付かされる。
https://kakuyomu.jp/works/16818622170346329079/reviews/16818622172258284676
https://kakuyomu.jp/works/16818622170346329079/reviews/16818622172669192078
以上、8作品を第一回ファイナリストとして選定いたしました。
たくさんのご参加誠にありがとうございました。
ぜひ今後も、推薦以外まで含めすべての作品をもう一度見返し、
コメント欄を賑わせて下さい。
【参加作品目録】
https://kakuyomu.jp/user_events/16818622172155453001?order=published_at
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