この物語は、きっと小説でなければならなかった
- ★★★ Excellent!!!
アイドルは「偶像」だとどこかで読んだ記憶があります。
この物語はアイドルという顔を出す職業と、Vtuberという顔を隠した職業。二つの側面から「偶像」について描かれているように感じました。
インターネットが普及した今、些細なことで炎上してしまうことが増えました。
それは顔が見えても見えなくても関係なく訪れるのだと、この物語では鮮烈に描いているように思われました。
そんな対比が本当に素晴らしくて、読み終わってからも、ふとした瞬間に、思い返す度に、「あれはこう言うことだったんじゃないか」や「なるほどなぁ」となるばかりです。
個人的にはレイくんの涙ながらに言われた最後の言葉を読んだとき、ある意味インターネットで救われた人なんだと感じました。
でも、それを強く感じることができたのは、レイくんの見た目について言及される後編でのことで、それまでの描写では綺麗にミスリードさせられてしまいました。
だからこそ、レイくんの言葉はとても鮮やかで触れてしまうのも苦しい程痛々しく伝わって来ました。
また、ミラーボールというのも、非常に納得させられました。ミラーボールのように、一筋の光が乱反射して、最初はキラキラ輝いていたのに、最後は生身の人間の意見のせいで、グロテスクに見えてしまう。それは「偶像」というミラーボールに乱反射して人々に光が届いてしまったと言う皮肉が、胸の奥にズシっと得体の知れない何かがのしかかってくるような気持ちになりました。
小説を読むことの楽しさを思い起こさせていただきました。
言葉足らずで本作の魅力を語りきれませんが、本当に読んでいただきたい一作です。
ステキな、と言っていいかは分かりませんが、とてもいい読書体験をさせていただきました。
ありがとうございました!