言語化という呪い

アミノ酸

言語化という呪い

 書いたり読んだり紡いだり。

 これを読んでるということは。

 好きなんでしょう、言葉の魔力が。


 魔法やスキルだなんてものに憧れを持ち、人の恋路を思うがままに創り出す貴方にとって、それはそれは魅力的に映ることでしょう。


 言語化という呪い。


 令和という元号にもなれてきて、世はAIだなんだと騒いでおります。

 行き着いた先は、この言語化という呪い。


 自分の持ってる言葉に当てはまめているだけです。

 自分の持っていない言葉では言語化できません。

 自分の知っている言葉で説明しているだけです。

 自分の知らない言葉で説明はできません。


 自分の言葉で作られたソレは、さぞや綺麗に見えることでしょう。

 でもそれは、他人から見たら糞で固めた出来損ないのモノかもしれません。


 古くは六世紀、菩提達磨大師は仰った。

 言葉は不要、と教えてくださった。

 過ぎては十世紀、陰陽師達は身につけた。

 言葉は理、と政で世の中を変えられた。


 言葉とは何でしょう。

 言葉とは固定すること。

 曖昧を許さない。妥協を示さない。

 境界線を有耶無耶にさせない。


 林檎は赤かったと言われてしまえば、

 染まりきらない青い部分を想像してもらえません。

 裏のここがまだ青いですと伝えたいのに。

 ここってどこですか?と聞き返されてしまうもの。


 その目で見ればいいじゃないですか。

 文字にせず、言葉に変えず、手に取れば済むじゃないですか。


 人は言語化により恩恵を得ました。

 他人と意思の疎通が出来ました。

 人は言語化の代償を払い始めました。

 他人と意思の疎通が出来なくなってきています。


 呪いと聞いて、霞や煙のようなもんを想像しましたか?

 残念。そんな幻想的なもんじゃあありません。

 そこで這い回る出来損ないの毛虫のような存在です。


 よく目にして耳にしてるんでしょう?

 メールでお願いします。

 LINEでよくない?

 口で言えばいいのに。


 相手の顔を見なさい。

 忙しなく動く首を見てやりなさい。

 言葉にできない思いを、どうして汲み取ろうとしないのですか。


 呪いを解く方法を教えて差し上げましょう。

 言葉にすると、なんと陳腐でくだらないことかと笑ってしまう簡単なことです。


 口を閉じ、筆を置き、世界のあるがままを受け入れるだけ。

 他者と自分の違いをあげつらわずに、自分と理想の差に憂うことなく。

 ただ、じっと見つめ、抱き締めるだけでいいのです。


 簡単でしょう?

 呪いなんてものは言葉がなければ存在すらしないのです。

 それが、愛するということなのです。

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