デカ布団ダンス
脳幹 まこと
もごもごさいご
脅威的なデカさを持つ布団ダンスが地球をすっぽり収納しつくした。
中にある布団が
そんなわけで、人々は熱にうなされていた。
何も見えない。何も聞こえない。
嗅覚は最初、長年放置された布団のすえた臭いを送り届けたが、じきに何も感じなくなった。
彼らが味わえるのは、何をしようとたちまち汗まみれになってべたつく皮膚の不快だけだ。
とうの昔に衣服は破り捨てている。出来ることなら皮すら脱ぎたかったが、それは叶わぬ願いだった。
そんな状況でも、彼らは生きていた。
理由のない狂騒だけが支配したこの世界で。
・
ある夫婦は、この終末で肌を寄せあう最後の組だった。
残りは熱に堪えきれず、散り散りに去るか、相手を殺していた。大半の組はデカダンスが到来する前に心中していた。
夫婦は離れないように互いの足を斧で切断していた。そして絶えず抱擁しあっていた。二人だけの環世界で、彼らは
愛している。私は私の意志で、あなたを愛している。
膨大な
こうして残るのは、愛を知らない孤独な赤ん坊だけになった。
外界という混沌の中で意味もなく叫び声を上げるだけの、何もない代わり、無条件で許される状態。
実際のところ、人々はこの日を待っていたのかもしれない。
・
ある時空で、一つの星が尋問されていた。
「どうしてこんなことしたの?」
彼女は黙したままじっとその場に留まっていた。
宇宙の中でも天下無双に美しいとされたその姿は、今や見る影もない。
職場を三光年間無断欠勤し、同僚の星が彼女のアパートに向かったところ、布団ダンスの中で極度の脱水状態で発見されたという。
病院に緊急搬送され彼女は無事であったが、同時に発見された幼児は死亡が確認された。
当初は第三者の星による事件も視野に入れたものの、事件現場の状況から彼女の犯行だと断定された。
沈黙を破り、かつて人々が「母」と呼んでいた星はこう供述した。
「泣き声がうるさくて気がおかしくなりそうだった。一緒に死のうと思った」
デカ布団ダンス 脳幹 まこと @ReviveSoul
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