第6話 未来(?)の報告
この報告を受け取っている人、見えていますでしょうか?
本報告書は、時間を超えてお伝えしています。
局地極光はあなた方が予想したとおり、宇宙から飛来する未知の素粒子を阻むための現象でした。
あなた方から見たら未知でも我々かは既知の素粒子ですので、威力を弱めるくらいは造作も有りません。
ではなぜこのようなことをしたのかと言うと、ひとえに人類の進化を安定させるため、この報告を書いている世界は今でこそ安定していますが、様々な突然変異や新たなる知性体の出現により大混乱に陥っていました。
それらの諸問題は、この素粒子が原因と言っても過言ではありませんが、同時に人類の対応力の問題でもありました。
そこで、あなた方から見た未来世界において知性体共同連合はひとつの計画を実行することにしました。
それは、人類の進化速度を意図的に遅くし、適応していく時間を作り上げること。
もちろん過去への干渉は複数の世界を作り出す原因となり、干渉した世界は今の世界と異なるものへと進むでしょう。
ですが、我々は時間も移動可能な次元へと到達しています。
ですので分かたれた可能性の世界でも行き来することは出来るでしょう。
わたしたちはそれを観測して結果を記録したいと思います。
では過去の地球の
Dear Friends
ヨカゲシノブ
***
「ってのどうかな?」
しゃれたアーケード通りの真ん中に建てられたパラソルの下、わたしの前に座る忍はサングラスをずらしながら、わたしの顔を覗き込む。
どうって言われましても……。
とりあえず、わたしはため息をつきつつ書類をテーブルの上に置いた。
「どうもこうも、なんで突然高次元人が未来から報告してるのよ……」
力なくわたしは感想を言う。
いや、シノブから渡したいものが有るからとショッピングモール近くの店を来てみたら、こんなSF小説もどきのものを渡されたのだ。
「だいだい、なんで文末が『Dear Friends』ってなによ、手紙じゃないのよ!」
わたしはそう言うと手元のアイスコーヒーを一気に飲み干す。
「ええ、報告書って手紙みたいなものでしょ?」
「ぜ、んぜん違います!」
のほほんと答えるシノブにわたしは噛みついた。
本当に常識が抜けているのに、妙に知識だけあるんだから……。
「まあ、とりあえずこれ次のショートドラマの設定の叩きだから」
そう言いつつ彼女も手元のドリンクを口にする。
ちなみにシノブは外歩き用の
以前の様な独立型ではないのは、ボディに自我が宿ると面倒くさいことになるからだ。
結果、シノブがすべてを演算して動かすことになっているので、彼女の苦労は大きくなったが、かえって自然な動きが出来るようになった。(もっとも以前の思考躯体に入っていた頃は知り合う前なので詳しくは知らない)
そんな彼女が飲んでいる物はタピオカミルクティー、そんな半固形物混じりの物飲んで大丈夫なのだろうかとわたしはいぶかしんでいた。
「ともかく、台本ならいいんじゃない?トリノ光臨まわりはぼやかすなら」
わたしはそう言ってコーヒーを飲みほした。
「ところで暇ならこの後、買い物に付き合ってくれない?」
わたしはシノブにこの後の予定を提案する。
それに対し、シノブは少し考える素振り。
「今日はオフだし、いいよ」
笑顔で答える彼女。
その笑顔にわたしは少しホッとした。
この手のことに付き合ってくれる人は少ないから(友達少ないとか言うな)。
「まあ、わたしにとってはこの時代がオフみたいだけど」
小さな声でつぶやくシノブの声は、その時のわたしに届くことは無かった。
【回天堂キ譚】トリノ光臨篇5 世は事もなし サイノメ @DICE-ROLL
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