仲のいい二人
紗久間 馨
友の悩み
「あー、疲れたー。お腹すいたー」
「でも楽しかったよね。頑張ってよかった」
「たくさん動いた後は、やっぱチキン南蛮かなー。うん。決めたー」
「じゃあ、私は照り焼きチキンにしよっと」
二人が通う高校から近い『天下無双』は「安い・うまい・多い」で運動部の部員に人気の店だ。
「ダンスでステージに立つとか、最初は無理だと思ったけどさー。なんとかなるもんだねー」
「そう言う
「だって、最後の学校祭だし、やるならちゃんとやりたかったしー」
「本当、すごかったよ。私なんて本番で失敗しちゃった」
「そんなの全然わかんなかったー。
「「いただきます」」
二人そろって手を合わせる。
「おいしいトリの降臨だね」などと笑い合いながら、楽しい時間を過ごした。
「おいしかった。お腹いっぱい」
店を出ると、
その一方で、
「どうしたの?」
「ちょっとね。家に帰るのがしんどいかも」
「え、具合悪いの?」
「そうじゃなくて・・・・・・。実はさ、昨日からママの妹、つまり私の叔母さんが家に来ててね」
「遊びに?」
「いや、それがさ・・・・・・」
「その人のこと、あんまり好きじゃない?」
「好きじゃないっていうか・・・・・・不倫して家を追い出されたんだよ」
「あー、実家だからか。
「そう。他に行く所がなくて帰ってきた」
「それで家の空気が悪くなった?」
「うん。昨日の夜、リビングで話してるのが聞こえてきて、ママがすっごく怒ってた」
「もう元の家に戻れない感じ?」
「たぶん。『いや、帰れよ』って思うけど。本当っ、最低っ」
重く晴れない気持ちを吐き出すように、
二人はカラオケ店に移動して話すことにした。
「スイーツ食べて気分上げよう」という
「叔母さんの子どもが学校に入って、昼間は仕事するようになったのね。で、その仕事先ってのが個人経営のクリーニング店だったわけ。前からスーツとか布団とかの洗濯をお願いしてた店なんだって」
「そこの人と?」
「うん。ちょうど受付の人を募集してて、叔母さんが働くことになったんだよね。一階が店舗で二階が家で、まあ、そういう関係になったら都合のいい場所みたいな」
「向こうは結婚してないの?」
「してない。独身」
「何でばれたの?」
「急に叔母さんが綺麗になったから、叔父さんが変だと思って探ったんだって。それで。スーツも布団も不倫相手が洗ってるわけだから『気持ち悪い』って激怒したらしいよ。当然だよね」
「あたしのイチゴ食べていいよ。好きでしょ?」
「え、いいよ。自分で食べなよ」
「
「言いすぎだよ」と
「家の前まで一緒に来てくれてありがとね」
「ご近所さんだし、このくらい普通」
「ありがと」
「ねえ、今日、うちに泊まりに来る? 布団を並べておしゃべりするの」
「うーん。それはまた今度ね。今はママが心配だから」
「そっか」
「私の親が離婚したのって、パパが不倫したせいなんだよね。だから、私よりママの気持ちの方がつらいと思うんだ」
「あたしは
「うん。ありがと」
「よし」と
「笑顔の天才がママの助けにならないと」
「ははっ。何それ」
「
「そうだった」
二人は控えめに笑い声をあげる。
仲のいい二人 紗久間 馨 @sakuma_kaoru
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