トリ男
クロノヒョウ
第1話
天下無双のトリの降臨が始まった。
画面いっぱいに溢れてくるトリたち。
そして残った一羽の黄色いトリがステージでお尻をふりふりダンスを踊る。
このトリが青、赤、紫、そして金色にまで変化すれば確定だ。
「よしっ」
トリが黄金の光をはなった。
大当たりだ。
確変が終わると俺は店を出た。
俺の手には二十万円が残っていた。
その足で近所に住む中村さんの家へと向かった。
翌日の日曜日、俺は闘鶏場に足を運んだ。
トリが土俵入りさせられ一対一で闘う。
長い時は一試合三十分ほどかかる時もある。
俺は黒いほうのトリに賭け、のんびり座って試合を眺めていた。
「山田さん、ですよね」
俺の隣に腰をおろしながら声をかけてきたのは若い女の子だった。
「そうだけど、お前いくつだ」
ここは未成年が来るような場所じゃない。
「十、四」
俺は深いため息をつきながら「ちょっと来い」と言って少女を連れて外へ出た。
「あのな、見てわかるだろう。未成年は来ちゃいけないって」
闘鶏場の周りは何もない静かな場所だ。
俺は煙草に火をつけながら少女を見た。
「それで? 俺に何か用か?」
少女は泣きそうな顔でうつ向いていた。
「ありがとうございました」
「あん?」
突然頭を下げた少女。
「今話題になってるトリ男って山田さんのことですよね」
なるほど、よく見るとこの少女は中村さんところのお孫さんか。
「私、昨日うちにトリ男が来てくれて嬉しくて、いろいろ調べたんです。トリ男はギャンブルで稼いだお金を困っている人たちに配ってるって」
「へえ、そんな男がいるのか。たいしたもんだな」
「そしたら昨日、山田さんがうちに入っていく姿を見たってお隣さんが言ってて。山田さんですよね? お婆ちゃんの布団の横に二十万円置いていったの」
「ちっ。なんだ、見られちまったのか。しくじったな」
「どうしてもお礼が言いたくて。本当に、ありがとうございました」
「あ、おいっ」
少女はそれだけ言うと走り去ってしまった。
俺は煙草の火を消し携帯灰皿に吸い殻を押し込んだ。
「さて、どっちが勝ったかな」
戻って結果を確かめるとするか。
俺は平日はサラリーマン、休日はギャンブルでとったお金を困っている人のもとへ届ける正義の味方。
人呼んで『トリ男』だ。
トリ男 クロノヒョウ @kurono-hyo
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